「THE VR PARADE」開催、エンタテインメントxVRキーパーソンが登壇
“エンタテインメントxVR”をテーマにしたカンファレンス「THE VR PARADE」が、7月28日に東京・Red Bull Studios Tokyo Hallにて開催され、放送局、アーティストマネジメント、テクノロジー企業など、エンタテインメント領域のキーパーソンが登壇し、VR市場の現状や最新の取り組みを紹介した。
エンタテインメント x VRの現状、クリエイティブ
まずはエンタテインメントとVRの現状について、渡邊課の渡邊徹氏と、カンファレンスの主催であるParadeAll 鈴木貴歩氏が登壇。
世界のVR/AR市場は、2025年までにおよそ800億ドル(約9兆円)に達し、「ライブ、イベント」「ビデオエンタテイメント」だけでも7,300億円規模になるとゴールドマンサックスによる試算が発表されている。更なる拡大が期待される一方、渡邊氏は「VRの撮影方法はまだ固まっていないものの、やみくもに“VR”と付けてコンテンツを作るだけではもう古くなってきている」と、発展途上でありながら急激なスピードで進化を遂げている現状を語った。また、今後の課題として、「デジタル空間と現実空間をVRでブリッジすることが重要になる」とし、事前の設定やストーリーなどの演出をすることでよりリッチなコンテンツにすることができると語った。
ゲームビジネス × VR
2人目には、急遽登壇が決定したバンダイナムコエンターテインメント原田勝弘氏が、プレイステーションVRソフト「サマーレッスン」を例に、ゲームビジネスにおけるVRの取り組みを紹介。また、「日本のゲーム業界はVRコンテンツの先駆者になりえるのか」という問いに対しキャズム理論に当てはめた持論を展開。「かつて日本のゲーム業界はイノベーターだったが、それはすでに失われている」と語り、その理由として、プロジェクトの起点が技術ではなく収益先行の発想になっていること、また、技術とビジネスモデル両方に敏感で、それらを結びつけられる人が日本には少ないこと、そして、投資額に5〜6倍の差があることをあげ、「ウェーブを起すためには、投資だけではなく、企業側のスタンスも変わるべき」と、技術とビジネスを繋げる人材の必要性を語った。
放送局とVRの未来
放送の視点からVRの活用事例を語ったのは、毎日放送の末永久人氏と、テレビ朝日メディアプレックスの阿部聡也氏。毎日放送では、中田ヤスタカ主催の「TAKENOKO!!!」などの収録を行ったが、「TVとVRの撮影・編集は全く違うもの」と感じたそうだ。ズームやアップといった概念がないため、カメラをどこにおいて何を撮影をするのか、事前に綿密な打ち合わせが必要になる。また、TVは素材があれば編集で映像を作ることができるが、VRは編集ではカバーできないといった違いがあると語った。また、テレビ朝日では、2014年の「夏祭り」から一般向けのアトラクションとして、早い段階からVRがビジネスユースされてきた経緯があり、今年も人気番組「しくじり先生」の生徒役の体験や、プロスポーツ選手のパフォーマンスを体験できるアトラクションを実施している。しかし、画角やカット割りがなく一発撮りとなるため、演者の動きとレイアウトには相当気を使ったそうだ。次の段階として、VRコンテンツのマネタイズを視野に入れビジネスアイデアを検討していきたいと締めくくった。
VRと体験型エンタテインメント
続いてNHKエンタープライズ田邊浩介氏が登壇し、「Aoi -碧- サカナクション」を「8K:VR」で制作した映像について紹介。8Kの3D映像を250インチのスクリーンに投影し、22.2chスピーカーシステムを使用した立体音響でライブの臨場感を演出した。メンバーが等身大で出てくるこの映像は「SXSW 2016」でも上映された。ヒップランドミュージックコーポレーション棟廣敏男氏は、DMM VR THEATERで行われた「VRDG+H」を紹介。「VRDG+H」は同社のクリエイティブ部門「INT」が手がける映像と音楽による新しい表現を追求したイベントで、ハーフミラースクリーンを利用して目の前に立体映像が浮かび上がる、これまでにない映像体験を可能にした。
同セッションの採録レポートはこちら:【THE VR PARADE】NHKエンタープライズ田邊浩介氏 ×ヒップランドミュージックコーポレーション棟廣敏男氏 トークセッション
VRによるエンタテインメントビジネスの未来
最後のセッションでは、SHOWROOMの前田裕二氏がVRコンテンツ導入後の成果と最新の取り組みについて紹介。「カジュアルVRとマネタイズ戦略にこだわった」と語る通り、スマートフォン一つで気軽にVRを楽しめる専用コンテンツに対応したことで、有料ギフトの数が10倍以上になるなど、確実な成果が出ているそうだ。今後は次バージョンから導入されるヒートマップのデータを活用したコンテンツや、3Dサウンドにも注力。ユーザーの視点を忘れず、半歩先を行くことを意識してコンテンツを作っていきたいと語った。
同セッションの採録レポートはこちら:【THE VR PARADE】SHOWROOM株式会社 代表取締役社長 前田裕二氏 トークセッション
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