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「J-POPクリエイター頂上決戦! 楽曲コンペ・バトルロイヤル2017」開催、Akira Sunset、Carlos K、丸谷マナブ、Soulifeのクリエイター4組が渾身の楽曲を公開

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10月7日、東京・南青山のFuture SEVENでソニーミュージック主催の「J-POPクリエイター頂上決戦! 楽曲コンペ・バトルロイヤル2017 新進気鋭の若手作家4人が集結し、勝負曲でガチ対決!」が行われ、Akira Sunset、Carlos K、丸谷マナブ、SoulifeのJ-POPクリエイター4組が渾身の楽曲を持ち寄り公開コンペを行った。

このコンペは、音楽イベント「SONIC ACADEMY FES EX 2017」の講座のひとつで、ソニーミュージックが開設している、作曲・クリエイターのための会員制コミュニティサロン「ソニックアカデミーサロン」との初の共同企画講座。会場は約100人の参加者で満員だ。また、参加者にも登壇者と同じコンペシートをもとに楽曲を制作し、事前提出することができる。

コンペのお題は、今年1月に日本武道館でワンマンライブを成功させた人気女性ボーカル音楽グループ「Little Glee Monster(リトル・グリー・モンスター=通称、リトグリ)」のアルバムリード楽曲を制作提案してもらうというもの。

灰野一平氏(ソニー・ミュージックレコーズ)の進行でコンペはスタート。ジャンケンで順番を決めるというラフな流れで最初に発表したのは、Akira Sunset氏。波乗り作詞作曲家として活動し、乃木坂46のヒット曲「気づいたら片想い」「今、話したい誰かがいる」などの楽曲提供や、NTT DocomoやJA全中など企業系の楽曲も手掛ける。

「J-POPクリエイター頂上決戦! 楽曲コンペ・バトルロイヤル2017」
左から Akira Sunsetさん、Carlos Kさん、丸谷マナブさん、Soulife(佐々木望さん、河田総一郎さん)

「登壇者の中で、リトグリの制作に唯一関わったことがない」というAkira氏は、過去の音源を研究。歌ウマといわれるリトグリだが、歌に対する思いに重きを置き過ぎない曲も必要かもしれないという観点で制作した曲と、大きな会場でのライブで盛り上がることができる、かつゴスペル要素を含んだ楽曲の2曲を発表。特に後者は、来年2月の横浜アリーナを皮切りに始まるリトグリのアリーナツアーを意識した作りで、これには灰野氏も「曲調だけでなく、グループの次の予定まで想定して曲作りしてくるのは、コンペで勝てる要素のひとつになるかもしれない」と肯定的にコメントした。

次は、河田総一郎氏と佐々木望氏の音楽ユニット「Soulife」。リトグリのライブサポートも担当している2人は「テーマを探す作業で、これまでは『スクール』というワードが多かったが、グループが大人の女性になっていく過程でそこを歌うといいのでは、とテーマに決めた」(河田氏)、「ライブではアカペラで洋楽カバーをやっているので、それをオリジナルで対応可能な曲を想定しつつ、提案型として和メロも入れた」(佐々木氏)という卒業シーズンにはピッタリの恋愛ソング「さくら川(仮題)」を披露。「成長とともに楽曲(のキャラ)を変えていくのは、続いているグループのうれしい悩み。あまり恋愛については歌っていなかったが、リトグリは上は高校を卒業した年なので、こういう提案もうれしい」と灰野氏は講評する。

「コンペシートに書いてある内容を全部盛り込んだ」というのは、多くのメジャーアーティストや、CM、アニメ、映画などの音楽を手掛けるCarlos K氏。2015年の「オリコン年間ランキング 作曲家部門」第1位、16年には作曲・編曲を手掛けた西野カナ「あなたの好きなところ」が「レコード大賞」を受賞している。Carlos氏は、ドラマや映画、アニメのオープニング曲になりそうなフレーズを盛り込んだアップテンポの曲とバラード曲の2曲を提案。「音数の要素は多いが、コーラスのジャマをしないオケ制作が絶妙のバランス。シングル曲の派手さも欲しいというニーズにも合致している」という灰野氏の審査には「構成的に面白いことをやったほうが!」と、日ごろの制作手法の裏ワザを披露する場面も。

Carlos氏とは対照的に「コンペシートはアルバムのリード曲にというところ以外は、逆に見なかった」という丸谷マナブ氏。14年の「オリコン作曲家年間トータルセールス」第1位で、楽曲提供したAKB48「ラブラドール・レトリバー」はレコード大賞優秀賞・ゴールドディスク大賞シングルオブザイヤーを獲得している人気クリエイターだ。丸谷氏は「20年の東京五輪で歌うことを目標にしているリトグリにとって、18年はそこに到達するための希望の年。アルバムをひっさげツアーをまわる状況で、1曲目にくるのはどういう曲かを考えた」と期待感をテーマに掲げる。これには、直接関わっている灰野氏も「ぼくらもまだ、アルバムのコンセプトを考えていないのに!」と笑わせる。「15秒CMでは驚くほどキャッチーでも、『曲のアタマはこんなんだったんだ!』というような驚きも盛り込んだ」(丸谷氏)という曲は、ブラックミュージックの要素も取り入れて「本格派」感を出した内容だった。

「J-POPクリエイター頂上決戦! 楽曲コンペ・バトルロイヤル2017」
灰野一平さん(ソニー・ミュージックレコーズ)

クオリティの高い全曲が披露されると、灰野氏は「どの曲もすごいトラックですけれども、普通のコンペは、さすがに今回ほどのクオリティではないですよ」と講座参加者を笑わせる。また、「どの曲も仮歌がスゴイ」と灰野氏が言えば、クリエイター間で歌い手の争奪戦が繰り広げられたウラ話も披露されるなど、曲作りのテクニック以外にも、クリエイター同士の横のつながりの深さも垣間見れた。灰野氏も「宅録が一般的になった音楽制作は正解のない孤独な作業。講座がそのサポートになれば」と語る。実際、講座参加者が提出した楽曲も披露され、登壇者それぞれが制作法についてアドバイスしたのだが、それを聞いていたほかの登壇者も「そんなやり方があったのか!」というような納得顔を見せるシーンもあった。

灰野氏が「仕事をされていて週末作家のようなクリエイターも増えてきている」という現状で、会員制コミュニティサロン「ソニックアカデミ―サロン」が、なかなか世に出ていかなかった制作のノウハウを共有し、音楽クリエイター間の「ハブ」として作家を発掘などの役割を果たしていくようになるだろう。

 


 

丸谷マナブ × 灰野一平 スペシャル対談
「ソニアカの講師が自分の学びにも繋がる」

 

「J-POPクリエイター頂上決戦! 楽曲コンペ・バトルロイヤル2017」

ーー 「SONIC ACADEMY」はどのようにスタートしたのでしょうか?

灰野:元々は、社内で新規事業の企画を募集していて、プロフェッショナルを目指す人に向けた講座をやってみたいという提案をしたら、各所から同じような意見があって、それが一つの部署になってスタートしました。フェスという形では2013年から開催しています。

ーー 丸谷さんも講師を務めた「J-POPクリエーター頂上決戦!楽曲コンペ・バトルロイヤル2017」は、今回が初の開催となりました。

灰野:丸谷くんにはこれまでも「コンペ戦国時代を勝ち抜く方法」という講座をやってもらいましたが、我々も過去4回フェスを開催しながらどんな講座にニーズがあるのかを探ってきました。ここ10年の間に、Jポップが宅録を中心とした録音スタイルに急激に変わってきている中で、丸谷くんにはアーティストとしての活動歴がありますけど、そうじゃない人たちがいきなり宅録から作家活動をスタートしているパターンが多くなってきているんですね。昔は徒弟制度に近いようなものがあって、大きなスタジオで、作曲家やアレンジャーのノウハウがJポップの中で伝承されていく学びの場があったんですけど、それが断絶してきているなと。

それぞれ独自な方法論でやっているので個性は豊かなんですけど、せっかく才能はあるのに、学ぶべきところを学べていない様子が見受けられるようになってきたわけですね。なので、こういう場を作ってノウハウをオープンにしていくと同時に、丸谷くんみたいに主に自宅で制作を行うスタイルの人って孤独と戦っている部分もあるので、コミュニケーションを取ったり、情報を共有できるような場ができたらいいな、というのがきっかけなんですね。

ーー 丸谷さんは、コンペ・バトルロイヤルに出演されていかがでしたか?

丸谷:今、孤独というワードが出ましたけど、今回講座で何を伝えられるかなと真剣に考えたんですけど、結局は精神論で、自分の生い立ちから孤独といかに向き合うかみたいな話になりました。こういったリアルな話はあまり音楽の学校ではやってないんじゃないかなと思って。

楽曲に関しても、普段はこれくらいで出しても、例えば灰野さんだったらわかってくれるだろうというのがあるんですけど、今日はお客さんに理解してもらう必要があったので、失礼な話、灰野さんに出す時よりも水準は高いですね(笑)。

灰野:今回はわりかし概要的な話でしたけど、前回はそれこそDAWの中まで見せて、曲の作り方も公開してましたよね。

丸谷:みんなパソコンで音楽を作る方法を習ってきたわけじゃないから、それぞれ決まったやり方を持ってるんですよ。コンプレッサーの話も、どこににかけるのか、みたいな話になると止まんないんですよ。みんなセオリーがあってないようなところでずっとやってるから、そういう面白さはありますね。

ーー 皆さん試行錯誤されてきた経験を話してらっしゃいましたね。

丸谷:来てくれる方に理解してもらうことが目標ではあったんですけど、僕自身、トライ&エラーで時間をかけて積み重ねていって、結果的にこういう道を歩いてきて、それを順序立てて1本に繋がったストーリーとして話すと、あたかも最初から見えてる人みたいに思われちゃうんですよね。でもそこにマジックみたいなものは意外と全然ないんですよ。

こういう場で話すときに事前にやるのが、自分を見つめ直す作業で、なんで自分はこれを作ったんだろう、何を考えてきたんだろうとか、普段は作り終わったら振り返りもしないけど、感覚でやってきたところを言葉にする作業は、意外と自分にとってプラスが多くて。そういう意味ではソニアカの講師をやることで自分の学びにも繋がってますよね。

灰野:最初ソニアカを始めるときに、大御所と呼ばれるような方々にたくさん講義をしていただいたのですが、最初は皆さん貴重なノウハウは秘密にしたがるのかなという懸念していました。ところが真逆で、長年第一線で活躍されている方はびっくりするぐらいオープンに自分のノウハウを出されます。きっとそれ以上に日々新しい事を吸収しているんだなという印象がありますね。丸谷くんも前回講座で作った曲が世に出てヒットしたり、先ほど自らの学びに繋がったという話も本当にうれしいですね。講座を通じてお客さんだけでなくて、話していただいた御本人にも何か還元できる形じゃないと、ソニックアカデミーという試みは絶対に持続的には実現できないんですよ。やはりレコード会社がやる講座だからできることだと思っているので、我々はそれを大事にしながらやっていきたいなと思っています。

ーー 今後はどのような講座が予定されているのでしょうか?

灰野:最近「ソニックアカデミーサロン」というものを新たにスタートしてるのですが、今後音楽制作に関するセミナー形式の講座は、こちらに集約していこうかと考えています。これは月額制で、会員登録してもらうとメンターとして参加してくれているクリエイターやレーベルプロデューサーなどとFacebook上で友達になれたり、飲み会に参加できたり、直接質問できるようなコミュニケーションと、月2〜3回くらい会員限定のセミナーやイベントに無料で参加できるものです。コミュニティーとして成立するような形にして、もっとノウハウを共有できるようにしたいですね。運営側としてはビジネスとして成立させるのは大変なのですが、そこからいい曲が生まれたり、クリエイターが出てきたり、コミュニティーとして広がっていけば、みんなが刺激をし合えて面白いことができるんじゃないかなと思っています。