野崎良太(Jazztronik)ら主催の「著作権の勉強会」にマーリン CEO チャールズ・カルダス氏が登壇
プロの音楽家と著作権のプロフェッショナルが語る、音楽著作権についてのトークショー「著作権の勉強会」が11月1日に東京・Hub Tokyoで開催された。
「著作権の勉強会」は、Jazztronikの野崎良太さんが抱く著作権に関しての疑問に、著作権のプロフェッショナルである、東京谷口総研の谷口元さん、城西国際大学の林達也さんが解説していくトークショー。
7回目となる今回は、初のゲストとして、世界中の独立系レーベルのデジタル権利を支援する非営利団体 マーリンのCEO チャールズ・カルダスさんを招いての特別編となった。
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マーリンは、世界中のインディーズレーベルにより立ち上げられた非営利団体で、インディーズレーベルの代理人として、各音楽配信サービスと交渉し、より有利な条件で契約できるよう支援する活動を2006年から続けている。
ここ数年、日本のコンテンツを世界に向けて発信していこうという気運が高まっているが、世界ではデジタル権利において小さなレーベルは足下を見られ、配信サービスと劣後な条件で契約させらるという現実がある。谷口さんはこのような現状をふまえ、「日本の音楽産業は圧倒的に世界に対するリアリティが欠如している」として、日本のインディーズレーベルが世界でビジネスをするためには、現状を知り準備をする必要があるとした。
マーリンはこのような現状を是正することを目的とした団体であり、現在までに世界51ヶ国790社以上が参加、2016年10月には日本拠点としてマーリンジャパンを設立している。
マーリンは各配信サービスから音源使用料を徴収し、レーベルへの分配も行っているが、手数料は徴収額の増加に伴い減少しており、直近では3%、さらに世界各国にあるインディーズレーベル団体に所属していると1.5%となる。
マーリンの徴収額は順調に増加しており、ビデオを除いたオーディオストリーミングだけで、2014年6月は10億円を切るラインだったが、2017年6月には35億円を超え、約3年で約350%の大幅な成長となった(1ドル100円で換算した場合)。
分配額も、2012年〜2013年が45億円だったのに対し、2016年〜2017年は353億円となり、4年間で約8倍、さらに今年度は500億円になる見込みだ。また、先日マーリンが始まってからの会員への分配額が、累計で1,000億円を超えたことも発表されている。
チャールズ・カルダスさんは日本のトレンドについて、2016年9月は100万円の収益だったのが、2017年8月には600万円になっており、「日本の状況を加味するとさらに爆発的な成長が見込める」と語った。
そして、レーベルのビジネス形態の変化についてもふれ、CDとデジタルの売上を比較した事例を紹介。
マーリンの参加レーベルへのアンケートによると、「自国の収入と、海外からの収入のどちらが多いか」という質問に対し、CDの売上について、海外からの収入の方が多かったと答えのは約17%にとどまったのに対し、デジタルの売上は、約42%が海外からの収入が多かったと回答。「フィジカルだと自国以外の新しい音楽を知る機会は限られているが、デジタルだと出会う機会が増えるということの現れではないか」と推測した。
また、マーリンに参加しているレーベルの中でも、徴収額が大きいレーベルに共通している点について、「自国以外からのお金をどれだけ集められているかが重要。インディーズレーベルは自国でどのように成功するかを考えがちだが、国内で完結するのではなく、SNSを通じて世界レベルでマーケティングをしたり、アーティストがファンと直接コミュニケーションを取れるような方法を上手く活用している」と語った。
現在世界では音楽の楽しみ方が、CDパッケージからデジタルダウンロードに移り、現在ではストリーミングが主流になっている。これに伴い、メジャーマーケットの風向きも大きく変わり、アメリカ、イギリス、ドイツなど主要な音楽大国の売上は成長トレンドに転じている。
メジャーの売上とインディーズの売上を比べたときに、メジャーの方がインパクトは大きいが、そのバランスがCDやダウンロード時代に比べて、ストリーミングではインディーズの方が大きい。また、音楽大国ではなかった地域からの徴収も順調に成長していることから、チャールズさんは「デジタル領域ではインディーズレーベルに明るい将来がある」とマーケットへの期待感が持続していることを強調した。
「著作権の勉強会」は今後も毎月開催される。
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