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「TDME」レポート後編、ナイトタイムエコノミーの最前線と今後の展望&ナイトライフに価値を与える「夜の市長」の活動

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「TDME」ナイトライフに価値を与える「夜の市長」の活動

11月30日から12月2日にわたり、東京・渋谷ヒカリエを中心とした複数の会場にて開催されたダンス・ミュージックの国際カンファレンス&イベント「TOKYO DANCE MUSIC EVENT(TDME)」。

前篇レポート(日本・インド・中国におけるダンスミュージックシーンの現状)
中編レポート(最先端のメディア技術・テクノロジーが音楽業界にもたらす可能性)
と、「TDME」のカンファレンスにフォーカスしてきたが、後編では風営法改正後のナイトタイムエコノミーの展望、ナイトライフに価値を与える「夜の市長」の活動についてピックアップし、レポートを行う。
 

「TDME」レポート後編、ナイトタイムエコノミーの最前線と今後の展望

風営法改正後のナイトタイムエコノミーの最前線と今後の展望
平成28年6月23日、風営法の改正が施行された。「TDME」では、“ナイトタイムエコノミー”というキーワードから国土交通副大臣 衆議院議員・秋元司氏、風営法改正の立役者ともいえるニューポート法律事務所の弁護士・齋藤貴弘氏、アーティマージュ代表取締役社長/日本ダンスミュージック連盟理事長・浅川真次氏の3名が、風営法改正後の最前線と今後の展望を語った。

風営法改正のポイントを簡単に説明すると、改正前は夜12時以降のナイトクラブ、飲食店の遊興・エンターテイメントの提供が出来なったが、改正後では「特定遊興飲食店」の許可を取得すると朝5時まで営業することが可能になったというもの。

“奇跡”ともいえる風営法改正だったが、多くの課題も抱えている。「特定遊興飲食店」は大規模繁華街、人が全くいないエリアを想定した場所でしか許可が取れない状況になっており、湾岸地域や大規模繁華街から少し離れている場合や、各都道府県の条例によっても許可を出す範囲がちゃんと定まっていない状況にある。

また、朝5時までに営業を全部終わらせないといけないルールから、大きな箱だと4時から4時半までに客出しを一斉に行うことになり、電車がまだ走っていない時間にたくさんの人が外に溢れてしまうといった問題がある。

そういった課題の解決に向けて、夜の経済活動の活性化を目的に「時間市場創出推進(ナイトタイムエコノミー)議員連盟」が、今年4月に立ち上がった。

現在日本は観光立国として推進しており、年間2400万人の観光客が訪日している。その観光客に日本に足りないものをアンケートすると「日本の夜は寂しい」「日本の夜はつまらない」といった意見が多く挙がっている状況だ。

そういった観光という側面からも、クラブ以外にも美術館、劇やショーなど色々なメンターテイメントのメニュー用意できるような環境を“ナイトタイムエコノミー”として、新しい枠組みとして押し出していくことが議連の目的となる。
 

「TDME」レポート後編、ナイトタイムエコノミーの最前線と今後の展望

観光庁は、2020年に4000万人の観光客数から平均消費金額・16万6千円から20万円に引き伸ばすことを目標としているが、その消費割合を見ると日本の娯楽に使うお金は1%程度であり、アメリカでは8%、諸外国でも4〜5%は当たり前という状況となっている。そういったエンターテイメント部分を底上げに、“ナイトタイムエコノミー”は大きな可能性をもたらす。

これらには夜間の交通、多言語対応や外に向けて情報を発信すること、治安の問題など多くの課題がある。秋元氏は特に夜間の交通について、「ロンドン、パリ、ニューヨークと競争して世界一の都市を目指す東京ならば、24時間地下鉄が走るのは当然必要になってくる」とコメントした。

齋藤氏は、スペイン・イビザ島では空港に着くと当日のイベント情報がそこら中に案内されており、レストランでも多くのフライヤー・チラシが置いてあったり、分からない人に向けてのガイドなど、夜を一番消費のある観光資源として街ぐるみでプロモーションを積極的に行っていると海外の事例を紹介。

また、浅川氏は「ULTRA」を生んだマイアミの「Winter Music Conference」に参加した際に、道路が閉鎖されているような状況で、道路の間がクラブになっていたり、デニーズがクラブ会場になったりと、街ぐるみでイベントが行われるのを目の当たりにし、こういった大規模なイベントを開催するためには騒音・交通の面を含めて行政との連携を深める必要性を感じたという。

次のレポートで登場する「夜の市長」こと“ナイトメイヤー”の存在も、行政との連携、ナイトタイムエコノミーの発展に大きく関わってくる。

ナイトメイヤーは夜を文化的に捉え、街を24時間稼働することで色んなライフスタイルをもっている人たちを受け入れ、多様な人たちによって住みやすい街にしていく役割を担う。日本ではまだまだ馴染みがない存在だが、日本の働き改革の流れの中で重要な存在となっていくだろう。

最後に秋元氏から、クラブ関係者・DJに関わらず、色んな業態でのナイトメイヤーを輩出していくことが夜の文化の発展に繋がっていくのではないかと提言も行われ、ナイトタイムエコノミーの最前線と今後の展望についてのディスカッションは終了した。
 

「TDME」ナイトライフに価値を与える「夜の市長」の活動

ヨーロッパのナイトライフに価値を与えてきた「夜の市長」の活動とは〜ナイトメイヤーサミット@東京に向けて〜
「TDME」最後のセッションでは、アムステルダムのナイトメイヤー・Mirik Milan氏、ベルリンクラブ・コミッションのLutz Leichsenring氏、ラッパーでありながら「クラブとクラブカルチャーを守る会」会長も務める・Zeebra氏の3名が、世界中で次々とナイトメイヤーが誕生していくなか、東京ではどんな動きを見せていくのかディスカッションを行った。モデレーターは、同じく「クラブとクラブカルチャーを守る会」広報を務めるダースレイダー氏が担当した。

Mirik氏はナイトメイヤーの役割について説明する前に、ナイトカルチャーはクリエイティブの才能を開花させるものだと語った。ナイトクラブはダンスミュージックの聖地であり、クリエイティブのスペースであり、才能のある若者同士の交流の場となる。こういったクリエイティブの場所・業界が都市で発展していくと、若い才能の発掘へと繋がっていき経済成長をもたらすことになるという。

現在、ロンドン・パリといった世界中の都市に10名以上のナイトメイヤーがいる。アムステルダムのナイトメイヤーはNPOで活動しており、“安全なナイトライフ”を作ることを目標としている。

17年にわたりベルリンのクラブ・コミッションを率いてきたLutz氏は、都市のナイトライフに大きな影響を与えてきた。ベルリンでは120店舗以上の音楽系のクラブ・バーなど、多様なナイトライフの場所が24時間365日用意されている。

また、都市経済学者・リチャード・フロリダ氏の「都市のクリエイティブ経済の発展には『技術』『才能』『寛容性』が必要である」という言葉から、東京には技術・才能を持つ人々がたくさんいるが、特にクリエイターに対してどのくらい容認できるかを議論する必要性をあげた。
 

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2人の活動の紹介が終わると、ここからはナイトメイヤーのコンセプト、あるいは都市に価値を与えていくというコンセプトを元に、東京から何ができるのかフリーセッションが行われた。

Zeebra氏は「例えばヨーロッパでは廃校や元工場をクラブにしたりとエリアを有効活用しているが、日本は地震大国っていうのもあって、耐震の問題でビルをすぐ立て替えてしまうのがすごく勿体ない」「昔の古いビルをリノベートして、そこに新しいクリエイティブなイメージを作ることによって歴史が繋がっていく。我々だけ世代だけでないナイトカルチャーの伝統が作られていくのではないか」とコメント。

2人はそういったリノベーションを含めて、都市を活かし続けていく発想を日本で根付かせる方法として、「各都市にとって、何が一番いいやり方があるか常に考える必要がある」「新しいビルでもたくさんの人々が留まる場所を作るため、各部門のスペシャリスト達と知恵を合わすことが大事だ」と話した。

また、誰かがそのナイトライフを管理しなければならない。その管理の方法を現状に合わせて変えていく柔軟性も重要な要素であると話した。そして、夜に価値を与える、カルチャーに投資することが都市にグローバルな意味でも競争力が持つということを行政に説得していくことも必要になってくるだろう。

どういった人がナイトメイヤーに向いているのかを2人に質問すると、Mirik氏は「議会のトップダウンと、クラブのオーナー、DJ、夜間のギャラリーの管理者のボトムアップが必要で、その2つの方向から現在の状況がどうなっているのかを全てを明らかにする必要がある」と答えた。

Lutz氏は「ナイトライフのゴールはひとつではない、タスクもひとつではない。隣人の苦情、交通の問題、健康の問題、ドラッグ等に多様に対応する必要がある。それにはそれぞれの分野の責任者、支援が必要になる。トップダウンとボトムアップのバランスを取ることも必要になるだろう。」

「夜の生き生きとしたナイフライフがなぜ必要なのかを認識していない人も多いので、いまやっている活動を公の場でわかる言葉で伝える能力、また政府側にも関係を構築できる人脈も必要となってくる。」

「そして、ナイトライフに関わっている人たちの教育の問題。経験者からどういうやり方をしたのか、すぐに情報にアクセスできる状況を作る必要だ。」と3つの要素にわけて回答した。

最後には「時間市場創出推進(ナイトタイムエコノミー)議員連盟」にてナイトメイヤー設立準備委員会を発足したZeebra氏に対し、ナイトメイヤーにふさわしい人物について、ニュートラル立ち位置であること、ナイトライフを全く知らない人にも説明できる能力、クラブがどのような形で機能していてなぜ重要なのか裏方に回って紹介できる立場であること、新しい世代を育てる教育インフラを作るなど、2人からアドバイスが贈られ本年の「TDME」におけるカンファレンスは閉幕した。
 

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