Spotify、最初のウィンドウ戦略型リリースを発表
かつてダニエル・イーク(Daniel Ek)はSportifyのユーザーは人為的にアクセス制限をされることはないと断言した。
しかしその発言は、長年に渡って繰り返された多くの再交渉があった前の話である。今では、数年の複数ライセンシング合意が提携され、Sportifyは最初の「ウィンドウ戦略」型(有料会員のみしか聴けない作品の配信)リリースを提供し始めた。
デジタル・ミュージック・ニュースでは、大手レーベルがウィンドウ型のリリースをすすめていると2015年8月に最初に伝えた。しかしSportifyからの強力な抵抗があり、妥協せざるを得なかった。そこでライセンス料の緩和と引き換えに、Sportifyはウィンドウ型を承認した。
これをライセンスの「ディスカウント」と呼んでもいいかもしれないが、Sportifyにとって劇的にボトムラインの底上げをもたらした。そして、現実はウォール・ストリートにとってもはるかに良い話になる。長期戦の抜け目のない取引は、265億ドルの株式上場への軌跡となった。
取引は取引。 その結果、Sportify初のウィンドウ型リリースが始まった。
事前にたち消えになったテストがいくつかあったことが伝えられている。しかしこれはトップクラスのビッグアーティストのウィンドウだった。4月13日にリリースされたジェイソン・アルディーンの『Reaview Town』は、Sportifyのプレミアム・ユーザーのみが対象になっている。
しかしこれは独占配信(エクスクルーシブ)とは程遠い。課金会員制オンリーのアップルやTidalでも『Reaview Town』は配信している。さらにウィンドウ型に近いアマゾン・ミュージック・アンリミテッドやパンドラでも配信している。以前パンドラは全無料配信だったが、現在の新マネージメント下で課金オンリーの層を設けて、これがかろうじて成功しているようだ。
YouTubeもRedサービス以外に本格的なプレミアム会員サービスをまだスタートさせていない。YouTubeミュージックのトップとなったライアー・コーエン(Lyor Cohen)がいかに真剣に有料プラットフォームをローンチさせようとしているのかは想像に容易だ。今までのところ、『Reaview Town』はYoutubeから外されている。コーエン氏らがこれから運営をどう決断するのか注目だ。
(アップデート:4月13日 一般的なYoutubeとは別に、YouTube Redがウィンドウ型でリリースを提供するとのこと)
2週間のウィンドウ型リリースが終了した後は、アルディーンのアルバムは無料プラットフォームで楽しむことができるようになる。
これはユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)のリリースではないが、それは問題ではない。
それどころかアルディーンはBroken Bow/BMGからのリリースだ。しかし我々は、これが現実化したことをUMGの会長であるルシアン・グレンジ(Lucian Grainge)のような熱心な人々に感謝せねばならない。
もしくはジェイソン・アルディーン本人に。
テイラー・スウィフトがSportifyの支払いは、アーティストにとって搾取的だと強く批判していたことは間違いない。しかしアルディーンも声をあげていた。カントリー界のスターであるアルディーンは、2014年にSportifyから彼の全楽曲を取り下げた。
Sportifyや他のライバル社が他の全てに取って代わることが始まるのは非常に恐ろしいことである。事実アップル社ではiTunesストアを閉鎖しようと予定しているが、利用しにくいフォーマットの需要が急激に落ちているためである。これは一種の発展であろう。
「音楽業界の誰もが、クリエイティブサイドが適切に報酬を受けられるために、ストリーミング・サービスをいかに財政的に成功させることができるか解決しようとしているんです」と、嫌々ながらSportifyに自分の楽曲を再配信した後に、アルディーンは発言している。「僕はこの意見交換の一員になれたことを幸せに思うし、全ての問題解決にこれからも取り組んで行きたい」
おそらくこの発言は、最もビッグでパワーのあるアーティストからのSportifyに対する動揺を込めた悲しいコメントだろう。しかし彼のウィンドウ型ストリーミング・リリースは、おそらく彼らが思うより、影響力のあるものになるかもしれない。
この記事は「DIGITAL MUSIC NEWS」の記事を翻訳したものです