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【trialog vol.3】ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのダニエル・ロパティン氏が登場、時間と空間を越境して紡がれる音楽と映像とは

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『WIRED』日本版の元編集長でありコンテンツメーカー「黒鳥社」を立ち上げた若林恵がソニーと仕掛ける新プロジェクト、「trialog」(トライアログ)が、第三回となるイベント、trialog vol.3「SOUND, SPACE & UNIVERSE(S) 音と視覚のさまよえる宇宙」を、9月13日、渋谷区神宮前のコミュニケーションスペース「CASE W」にて開催した。

「trialog」は、「What is the future you really want?(本当に欲しい未来はなんだ?)」を合言葉に、毎回設定するテーマに対して、様々な領域で活躍するクリエイター、エンジニアやアーティストなどの三者が、対話を通じ異なる立場から意見を交わすトークイベント。

第三回の開催となった今回の trialog vol.3では、「SOUND, SPACE & UNIVERSE(S) 音と視覚のさまよえる宇宙」をテーマに、スペシャルゲストとして、名だたるアーティストとコラボし革新的な音楽作品とパフォーマンスで世界中を魅了する音楽家、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)のダニエル・ロパティン氏を迎え、トークを行った。

さらに、彼のパフォーマンスをビジュアル面から支えてきたアーティスト、ネイト・ボイス氏、SF作家の樋口恭介氏、「trialog」の共同企画者でEnhance代表の水口哲也、ソニー・ミュージックコミュニケーションズの浅川哲朗など、アーティスト、クリエイターたちによる計3つのセッションを通して、〈表現者〉たちが描き出す「音と視覚の宇宙(=ユニバース)」に迫った。

SESSION1【視覚と聴覚をグルーヴさせるためには|In the Groove of Sound and Vision】
 

trialog vol.3「SOUND, SPACE & UNIVERSE(S) 音と視覚のさまよえる宇宙」

SESSION1では、彫刻や変形スクリーンや映像を取り入れた演出でワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのパフォーマンスを支えるビジュアルアーティスト、ネイト・ボイス氏と、Enhance 代表の水口哲也、ソニー・ミュージックコミュニケーションズ プランナーの浅川哲朗の3名が登壇し、音楽の中での〈映像〉について議論を深めた。

水口は、「古くは100年以上前のアーティストが頭の中で描いていたことを表現する方法は、当時は限られていた。けど今僕らは映像や音を融合させて、それを立体で、VRで、ARで、MR(Mixed Reality、複合現実)で、つくれるかもしれない。今我々は、将来的な〈音楽を観る体験〉の手前にいる」と持論を語った上で、「テクノロジーが発達する中で、この先はどういう表現をしていきたいか?」とネイト氏へ質問。

その質問に対してネイト氏は、「次のステップとしては、処理したものを再度開発していくこと。どこにスポットをあてるのか、物と物にどういった関係性があるのかを改めて考えていきたい」と回答。

さらに水口から「未来のライブ空間、テクノロジーを考えたとき、本当に欲しいと思っている技術や表現は?」と問われると、ネイト氏は「長い間やりたかったことを、今回の『MYRIAD』で実現することができた」と自らで評しながら、「彫刻などを用いた劇場のようなプロダクション、劇場のような表現にも興味がある。」と話し、「映像や絵画のような 2 次元的なものから、彫刻のような 3次元的な、物理的なものまで、幅を広げながらそれらを統合していきたい」という自身の表現の未来も示唆してい
た。

SESSION2【「MYRIAD」という幽玄な世界の秘密|Special Presentation from “MYRIAD”】
 

trialog vol.3「SOUND, SPACE & UNIVERSE(S) 音と視覚のさまよえる宇宙」

SESSION2では、ニューヨークとロンドンで大成功を収め、9月12日に日本でも開催されたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの最新コンサート「MYRIAD」の全容について、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのダニエル・ロパティン氏と、ネイト・ボイス氏が特別プレゼンテーションを行った。

ダニエル氏は、「MYRIAD」のコンセプトが生まれるきっかけについて、「劇場やオペラのようにエレクトリックミュージックを表現することに関心があった」と話した。「これまでの多くの場合私たち二人がスクリーンの前に立って、後ろに大型の長方形のスクリーンがあってというような設定で、そこでネイトが、私が恐怖を感じないように空間を埋めるものだったが、プロジェクションの裏にあるスペースに関心を持つようになってから、シアターのようなレイアウトの中で体験を提供できるようにした」と語った。

続けてネイト氏は、「MYRIADは、スクリーンの後ろに照明があることが興味深い」と話し、「通常は空間には終わりがあるが、それがわかると圧迫感があって、不快になる。」と空間に対する考え方を話した。

重ねてダニエル氏は、「音楽の力は雰囲気として〈錯覚〉を演出すること」だとし、「直観的な錯覚を生むこと。錯覚をできるだけ面白くすることが僕たちの役割。よりインスタレーションなものをつくりたい」その後、MYRIADで実際にネイト氏が使った映像や、その解説が丁寧になされ、会場に集まった参加者は前のめりで見入り、聞き入っている様子であった。

さらに若林から発せられた「ダニエルの音楽とネイトのビジュアルがフィットしないことが起こったりするのか?」との質問に対してダニエル氏は、「逆にフィットしてほしくない。あまりにもシンクロしたものを作ることに恐怖がある。必ずしもハーモニーである必要はなく、創造的な破壊や合致したりしなかったりが面白い。そういった意図を持って、オーディオとビジュアルを作っている」と、音楽とビジュアルとの関係性を語った。

SESSION3【多層的/複数的な宇宙を巡って|All Over the Universe of OPN】
 

trialog vol.3「SOUND, SPACE & UNIVERSE(S) 音と視覚のさまよえる宇宙」

SESSION3では、SF作家で、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー『Age Of』歌詞監訳も行っている樋口恭介氏、ダニエル・ロパティン氏、若林恵が、SFの視点を交えながらワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとその音楽について対話を行った。

まず樋口氏から、自身のアルバム『Garden of Delete』の構造について質問されたダニエル氏は、「フランケンシュタインの怪物はぐちゃぐちゃなものが合わさってクラシックな存在になっている点が興味深い」とSF的観点を説明。続けて、「それと同じように自分の音楽も色々なものをミックスして作っている。だがそれは何かと何かをブレンドしていることとは異なる。異物がくっついたもの、すなわちモンスターのような存在をつくりたいと思った」と意図を表現した。

またダニエル氏は、「最近はライブパフォーマンスに興味や問題意識がある」と話し、「きちんとした注意を払って聞くような本のようなアルバムにももちろん興味があるが、なぜライブかというと、遊園地のアトラクションのようにクラクラする体験を提供するから」だという。「何が起こるかわかりきっているものよりも、何が起こるかまだわからない点に面白さを感じている」とも述べていた。

続いて樋口氏から「ダニエルにとってワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとは何か」と抽象的な質問が飛ぶと、「意訳すると、コンピューターの持つトリック性を永遠のものにすること」だと答えた。さらに、「音楽を体験すること」は「ものすごく大きなイリュージョンである」とワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの音楽の核心を語った。

さらに、先に述べた「コンピューター」あるいはテクノロジーについて、「コンピューターでの作曲のいいところは、シンフォニーの全てを一人で構築できること。私が SF を好きな理由は、タイムトラベルで歴史を飛び越えながら、世界の全体像を知ることができるからだ」と話し、「自分が魅了されているのは、一言でいえば世界なんだろうね」と、マクロな視点を交え、語っていた。

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