デジタル時代に対応した「モノ」としての音楽メディア、ダウンロードカードの可能性探る「DOWNLOAD CARD SUMMIT 2019」
「DOWNLOAD CARD SUMMIT 2019」が1月19日、東京・タワーレコード渋谷店で開催された。これは、音楽を楽しむ新しいメディア「ダウンロードカード」に注目したイベント。
hy4_4yh、Heartbeat、SHO、TRIERENA、未来茶レコードなど同メディアで作品リリースをしているアーティストのパフォーマンスに加え、関係者によるトークショーも行われた。
ダウンロードカードとはその名の通り、音楽をはじめとする様々なデジタルコンテンツをダウンロードするためのカード。店頭で購入して、CDプレイヤーやCDドライブがなくてもすぐにスマホやPCに直接ダウンロードできることが大きな特徴だ。
この日はダウンロードカードのインサイダーたちによるトークショーが、5階のイベントスペースにて開催された。参加したのは、ダウンロードカード事業を進めているダイキサウンド株式会社・栗原幸祐氏、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社・笹原崇寛氏、さらにレーベル側から株式会社MAGES.の宮原信哉氏。司会はサウンド&レコーディング・マガジンの篠崎賢太郎編集長が担当した。
ダイキサウンドの栗原氏は、ダウンロードカードの販売において立ち上げ当初はさまざまな経験をしたという。「僕が失敗したな、と思ったのはカードに認証機能をつけなかったこと。つまり1枚カードを買って、そこに書かれているURLを叩けば誰でも、何度でもコンテンツをダウンロードできてしまう。僕はたまたま物販の手伝いで現場に行っていたんですが、そこで1枚のカードを色々な人が使い回しているのを目の当たりにしたっていう(笑)」と失敗談を話してくれた。
また、コンテンツ制作者にとって大きいのは、カードを作成し、後日コンテンツをアップロードできるためCDのプレスなどにかかるスケジュールをコンテンツ制作作業に充てられること。さらに、イベントの物販などでモノとして販売することができるというのも利点だ。
クリプトン・フューチャー・メディアの笹原氏は、自身がプロデュースするイベントで販売するダウンロードカードを制作していた際、直前まで作業に追われてしまったが、ダウンロードカードの仕組みに救われたと苦笑いした。
レーベル側の人間として興味深い話を聞かせてくれたのは、株式会社MAGES.の宮原氏だ。彼が担当するシンガー・亜咲花は、CDでも販売されたミニアルバム『19BOX』のダウンロードカード版「19BOX SONOCA LIMITED EDITION」を制作した。
「やはりスマホですぐ視聴できるのがすごく好評ですね。最近はCDプレイヤーを持ってないという人も多いので。でも、我々はCDも売らなくてはならないという宿命も。両方買ってもらえるような差別化を意識しました。今回もCDのダウンロードカード版というより、別コンテンツを作るような感覚でしたね。ダウンロードカード版には、ミニアルバムの中でミュージシャンとコラボした曲のレコーディング風景が動画で入っています。この映像も、本当にギリギリまで編集していたんですよ」とのこと。
さらに栗原氏も、「CDとサイズの異なるダウンロードカードを販売するのは什器の問題で難しい場合もあるため、パッケージ制作を工夫しました」というエピソードを教えてくれた。笹原氏に関しては、過去にカセットテープとダウンロードカードを同梱した初音ミク作品の制作をしており、今後も少し変わった作品リリースを検討したいという。このトークショーでは、フィジカルとデジタルの中間地点にあるダウンロードカードの大いなる可能性を感じられた。
その後は地下1階にある「CUTUP STUDIO」で、ダウンロードカードで作品を発表したアーティストたちのライヴ。前半のトップバッターのhy4_4yhは、ダイキサウンドからリリースしたダウンロードカード「hy4_4yh M-Card Edition」から、ファンにはおなじみの名曲「せいいっぱいの恋」のヒップホップバージョンなどを披露した。
2番手はこの日が1stアルバム「Here I am」をリリースしたばかりのHearbeat。彼女は発売したダウンロードカード「I will」には音源に加え、映像、チェキ、ステッカーが同封されている。ライヴでは、ゲーム実況チーム「兄者弟者(2bro.)」の動画エンディングテーマになった「Fire」など、ソウルのこもったヴォーカルを会場に響かせた。
そしてラストは、オリジナルなヒップホップを追求するSHOが登場。おなじみの「薬物はやめろ」をはじめ、「LOUIS VUITTON」「職質顔パス」など、底抜けにポジティヴなメッセージをダークなトラップビートでラップした。ちなみみにSHOも、ダウンロードカードバージョンのアルバム『365 -Special Edition-』をリリースしている。
夕方からは注目のレーベル・未来茶レコードのコンピ盤「未来茶屋 vol.0」の参加アーティストが中心に出演するライヴ第二部がスタート。
最初にステージに立ったのはTORIENA。ゲーム音をベースにガバやハードハウス、トランスなど、90年代のハードコアなエレクトロニックミュージックを自由にミックス。そこにアニメカルチャーの「Kawaii」文脈を織り交ぜて、一気に場内の湿度を高めた。
続くNeko Hackerは、この日が記念すべき初ライヴ。ましろや、くいしんぼあかちゃんが客演で登場してキュートなグッドメロディを連発。Sho(Melody Maker/Lyricist)がカルピスの原液を一気飲みするなど、謎の煽りも入って初ライヴとは思えないほど完成度の高いパフォーマンスを繰り広げた。
YUC’eはR&Bのグルーヴを根底に持つマルチなシンガーソングライター/トラックメイカー。「アルケの悲しみ」や、普段はなかなか顔見せしないAireが登場した「コットンキャンディ・シープ・ナイト」では観客から大きな声援が上がった。
そしてラストはYunomi。インフルエンザのためライヴに来られなかったKOTONOHOUSEの「プリズム feat. やのあんな」はもちろん、フィーチャリングアーティストを迎えて「ゲームオーバー feat.TORIENA」「白猫海賊船 feat. 日南結里」など、スタイリッシュかつKawaii世界を作り上げていた。
なおイベントの最後には購入者を対象にしたサイン会も開催された。
写真:tatsuki nakata
2019年1月19日(土)
渋谷タワーレコード B1F CUTUP STUDIO「DOWNLOAD CARD SUMMIT 2019 SPECIAL LIVE」セットリスト
・第1部
出演:hy4_4yh/ Heartbeat/ SHO
hy4_4yh
01. 蓮等-hustler-
02. せいいっぱいの恋
03. 人間交差点 午前10時40分
Heartbeat
01. Fire
02. WHAT ABOUT YOU
03. Is The Spotlight
04. Here I am
SHO
01. LOUIS VUITTON
02. たまにFENDI
03. サツタバ
04. 薬物はやめろ
05. 職質顔パス
・第2部
出演:TORIENA / 未来茶レコード(Neko Hacker feat. ましろ&くいしんぼあかちゃん / YUC’e / Yunomi feat. やのあんな、TORIENA、日南結里)
Neko Hacker
01. Meditation (Introduction)
02. From Zero w/ましろ
03. Death by Glamour (Neko Hacker remix)
04. Dirty Party x We Will Rock You (Mashup)
05. くいしんぼハッカー w/きあと
06. Sweet Dreams w/きあと
07. Undertale (Neko Hacker remix)
08. Night Sky w/ましろ
YUC’e
01.macaron moon
02.Night Club Junkie
03.戦国HOP
04.Tick Tock -Yunomi Remix-
05.Winter Berry (YuNi)
06.the Love Bug -YUC’e Remix-
07.Tulala Story (Nor + YUC’e)
08.わたあめパレード
09.MUDPIE
10.コットンキャンディ・シープ・ナイト (YUC’e & Aire)
11.アルケの悲しみ -Bitter Ver.-
12.UN1TE -YUC’e Remix-
13.Future Cαke
14.Future Cαndy
Yunomi
01.KOTONOHOUSE x やのあんな – プリズム
02.さよならインベーダー (feat. TORIENA)
03.大江戸コントローラー (feat. TORIENA)
04.ゲームオーバー (feat. TORIENA)
05.Yunomi – 白猫海賊船 (feat. 日南結里)
等
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