欧州議会がYouTubeなどに著作権者へ適正報酬の支払いを義務付ける指令の改正案を承認、CISACが会見を開催
世界的な著作者団体のネットワークであるCISACおよび日本音楽著作権協会(JASRAC)は、4月2日、欧州議会が著作権に関する新たな指令(EU指令)の最終案を3月26日に承認したことを受け、「著作権に関する新たなEU指令」について記者会見を開催した。
会見には、ネット上での著作権保護に対し長年ロビー活動を行ってきたCISAC(著作権協会国際連合)の事務局長であるガディ・オロン氏、JASRAC 理事長 浅石道夫氏(CISAC理事会副議長)、CISAC アジア太平洋地域代表 ベンジャミン・グー氏、CISAC アジア太平洋委員会委員長 渡辺聡氏が登壇し、今回のEU指令の内容と経緯、世界の音楽業界が受ける影響等を説明した。
新たな指令には、YouTubeなどの動画投稿サイトの運営者がコンテンツ利用の主体であること、また同サイト運営者が違法コンテンツ利用を防止する義務、著作権者への適正な報酬を支払う義務を負うことなどが示されている。
ガディ・オロン氏は、中でも、動画投稿サイト事業者らが得る多大な利益に比べ、価値を生み出しているクリエイターに公正な対価が還元されていない「価値の移転」問題について触れ、「世界で約100億ドルの使用料が徴収されているが、デジタル使用料は13%程度と非常に小さい」と現状を伝えた上で、「今後、YouTubeなどのデジタルプラットフォーム運営事業者は、クリエイターと許諾を交わし利益を正しく分配しなければならない。全てのデジタルサービスが同じルールになることで、クリエイターへの支払いについて劇的な変化が起こる」と述べた。
続けて「新たな指令はバランスのとれた内容」だとし、クリエイターから許諾を得る最大限の努力を行い、無許諾のコンテンツ使用を防止する措置をとった場合は免責となる緩和策も盛り込まれていることを説明。また、指令がマーケットでの競争の妨げにならないよう、年間収益が1,000万ユーロ以下、開始から3年以内で月間平均500万ユーザー以下のスタートアップ事業者も免除されるそうだ。
さらに、レコード会社や音楽出版社は、最低でも年に1度は作品の利用についてクリエイターへ報告する義務がある。また、元の契約で定められた報酬が、作品がのちに生んだ価値に対して見合わなければ契約を見直すこともできるそうだ。
ガディ・オロン氏は、「この分野でヨーロッパがリーダーになることを強調したい。我々が率先してスタンダードを設定していくことになったが、諸外国もEUに追随してくれることを願っています。」と指令が国を越えて広く支持されることへの期待感を述べていた。
新たなEU指令は、欧州議会が採用した文言を加盟国の過半数が承認すれば、2020年にも施行される見込みだ。加盟国は2年以内に法制化することになる。
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