第16回東京国際ミュージック・マーケット終了、「海外展開に役立つ最新トレンド」をコンセプトとしたビジネス・セミナーも大盛況
日本音楽の海外進出・交流を目的とした「第16回東京国際ミュージック・マーケット(16th TIMM)」が、10月28日から30日まで渋谷にて開催された。
10月28日・29日には東京・渋谷エクセルホテル東急にて商談会およびビジネス・セミナーが行われ、28日から30日には、Veats Shibuya及び渋谷TSUTAYA O-EASTにて計4本のオムニバス形式のライブが行われ、会場は大いに盛り上がった。また、29日には、先進技術との連携事業の一環として、音楽とテクノロジーの融合をテーマとしたSpecial Event「TECHS 2019 in TIMM」も開催された。3日間の来場者数は5,122名(マーケット参加:2,982名、ライブ・パーティ参加:2,140名)を記録した。
商談会には47の企業や団体等が出展。世界26か国以上から集まった200名以上の海外バイヤーや日本の音楽関係者らと商談が行われた。また、ビジネス・セミナーは今年も「今すぐ海外展開に役立つ音楽業界の最新トレンド」をコンセプトに、多種多様なテーマで開催された。
コンサートプロモーターズ協会(ACPC)共催、ブリティッシュ・カウンシル後援のビジネス・セミナー「Music Without Barriers ライブ・エンタテインメントへのアクセシビリティ向上」では、障害者主導型の活動を行っているイギリスのチャリティ団体であり、2000年からはライブ音楽業界も支援している「Attitude is Everything」を招き、英国における事例を紹介しつつ、障害のある人たちのライブ会場やイベントにおけるアクセシビリティ向上について話し合われた。
会場のバリアフリー化など予算の問題などからなかなか改善できない部分であるが、できることから一歩ずつと取り組むことが大切であり、まずは会場やイベントの主催者が障害者に対して、事前に各ウェブサイトなどでバリアフリー・アクセス情報を発信・提供することを呼びかけた。
「Attitude is Everything」ではバンドやプロモーター向けに自分たちで改善できるチェック項目やヒントを記載した「バリアフリー・ガイドブック」発行や、バリアフリー情報の発信を促すキャンペーンや、各調査の報告書をオフィシャルサイトで開示しているので、そちらを参考にしてほしい。
「無許諾音楽アプリの現状と音楽業界の対策」では、日本の若年層ユーザーの間で、広く浸透しているMusicFM等の無許諾音楽アプリに対する対策の現状について報告された。
2013年4月に違法対策の専任部署を設けた日本レコード協会は、アプリストアを毎週調査し、無許諾音楽アプリに関して削除依頼を行っているが、特にiTunes App Storeに関しては、アプリ開発者と削除依頼者間で問題解決をするよう指示される仕組みのため、削除までに要する時間がきわめて長いことが課題としてあげられた。現在、iTunes App Storeの判断による削除を行うよう申し入れをしているとのこと。また、同一アプリや模倣アプリが繰り返し出品される問題に関しても、審査の厳格化を要望しているそうだ。
続いて「LINE アンケート」を用いた無許諾音楽アプリも含めたユーザーの音楽聴取傾向の調査結果も報告され、11%の人々が無許諾音楽アプリで利用し、10代全体では31%と若年層であり、しかも音楽やアーティストへの関心が薄い層に浸透している結果となった。無許諾音楽アプリと出会うきっかけは友達や家族経由の認知と、音楽アプリでの検索結果で9割以上を占め、やはりアプリストアからの締め出しが有効との見方を示した。
また、無許諾音楽アプリからアーティストへの還元がないことへの認知が薄いが、そこだけ訴えてもサービスの利用は止まらないと警告。ストリーミングサービスへの理解と無許諾音楽アプリの違法性の両方の浸透が大事と結んだ。質問者からは、正規のストリーミングサービスも新曲や楽曲数において、無許諾音楽アプリに負けないようにすべきであり、その対策も同時に必要ではないかと提案される場面も。
「日本音楽の海外展開を推進する企業とそのプロフェッショナル達」では、欧米、中国・台湾を中心としたアジアなど、実際に日本音楽の海外展開や企業進出を推進している登壇者たちが、それぞれの業種、得意地域での最新の海外進出の事例を報告しつつ、マーケットの状況、特性、今後の展望などをなど語り合った。
各エリアのプロモーションの特徴について、欧米ではSNSとともプレイリストが鍵になっており、いかにプレイリストに曲をのせていくかがなによりも重要だそうだ。また、アジアに関しては、ローカライズを越えて、現地のネットワークに深く入り込み、どれだけコネクションを作ることができるか、また一過性のライブだけではなく、それ以後もどれだけ継続してプロモーションしていけるかが重要とのこと。
中国では独自のSNS「微博(Weibo)」の活用が大切であり、単に登録し情報発信するだけではなく、そこからどうやって多くのフォロワーに繋げていくか、運営会社である「新浪」へのプロモーションも含めて関係性を築く必要があるそうだ。また、再び門戸が開かれた日本人のテレビへの出演は、強い影響力を及ぼす可能性があるとのこと。そして、ライブに関して、中国で一番重要なエリアは日本人や外国人がが多く住む上海であり、そこでダメなら次はないという状況だそう。そこに続くのが深セン、広州とのことだ。
毎年恒例のキーノートトークは、中井 猛氏(ヒップランドミュージックコーポレーション取締役会長、スペースシャワーネットワーク相談役、アーティストコモンズ会長)と栗花落 光氏(FM802代表取締役社長)、三浦文夫氏(関西大学社会学部教授、アーティストコモンズ理事長)を招き、「変遷を続けるメディアと音楽の関係、そして今後の展望」と題して、過去の事例も検証しながら、メディアと音楽のこれからについて語られた。