JASRAC、ジョージ・ガーシュインが作曲した著作物から共同著作物と確認できた337曲の著作権管理再開へ
日本音楽著作権協会(JASRAC)は9日、ジョージ・ガーシュイン(1937年没、以下ジョージ)が作曲した著作物のうち、米国の著作権管理団体ASCAPから提供された資料により、アイラ・ガーシュイン(1983年没、以下アイラ)との共同著作物(※)であることを確認できた337楽曲について、その著作権の管理を2022年1月1日から再開する。
ジョージは、「ラプソディ・イン・ブルー」や「サマータイム」などで知られる作曲家で、1937年に亡くなった。JASRACはその著作物について、ASCAPおよび日本地域の音楽出版社から管理委託を受けて、国内での利用に関する著作権の管理を行っていたが、ジョージの死亡から50年と「連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律」に基づく加算期間3794日(いわゆる「戦時加算」)が経過した1998年5月22日以降、パブリックドメイン(PD)として取り扱ってきた。
1988年以降、ジョージの承継者の代理としてASCAPから、ジョージが作曲した著作物のうちアイラが関与する歌詞付き楽曲について、以下の要請を受けてきた。
- これら楽曲の歌詞および曲はジョージとアイラの共同著作物であるため、アイラの死亡年(1983年)を基準として適切に保護すること。
- オペラ「ポーギーとベス」を構成する楽曲については、歌詞・曲ともにジョージ、アイラ、デュボース・ヘイワード(1940年没。以下デュボース)およびドロシー・ヘイワード(デュボースの妻。1961年没。以下ドロシー)の4人の共同著作とすること。
JASRACでは、アイラとの共同著作の事実を示す資料の提出がなかったため、これまでこの要請に応じてこなかった。今般、ASCAPから新たな資料の提出があり、これらの資料を検証したところ、共同著作の事実を確認したため、管理再開する。管理再開は、2022年1月1日からとし、それまでの間、楽曲利用者へ周知していくとのこと。
ASCAPから示された新たな資料の内容について
- 歌詞・曲のそれぞれがジョージおよびアイラの両名による共同著作物であること。ジョージとアイラの妹や知人、アイラの音楽秘書などの関係者5者の宣誓供述書から、ジョージとアイラが常に協力しながら楽曲を創作しており、アイラが曲の表現に創作的に関与していたこと、およびジョージが歌詞の表現に創作的に関与していたことを確認した。
- オペラ「ポーギーとベス」を構成する楽曲の歌詞については、ジョージ、アイラ、デュボース、ドロシーの4人による共同著作物であること。当事者5者(上記4人とThe Theater Guild, Inc.)がサインした契約書から、デュボース、ドロシー両名は、著作物使用料の分配を受ける著作者であることを確認した。一方、日本の著作権法に照らすと、曲については、この両名の創作的な関与を認められないことから、ASCAPからの要請にかかわらず、ジョージおよびアイラ両名のみの共同著作物とした。
なお、「ラプソディ・イン・ブルー」や「パリのアメリカ人」など、アイラが創作に関与していない著作物は取り扱い変更の対象とならない。
※共同著作物とは、「2人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」(著作権法2条1項12号)であり、その著作権保護期間は、最終に死亡した著作者の死後70年を経過するまでの間となる(同法51条2項)。