JASRAC、ブロックチェーン技術を活用した存在証明機能を備える楽曲情報管理システム「KENDRIX」のクローズドβ版をリリース
日本音楽著作権協会(JASRAC)は6月28日、ブロックチェーン技術を活用した存在証明機能を備える楽曲情報管理システム「KENDRIX」のクローズドβ版をリリースした。
KENDRIXとは、「すべての音楽クリエイターが Creation Ecosystem に参画できる世界へ」というコンセプトのもと、音楽クリエイターが安心して楽曲を発表でき、適正な対価還元を受けるための各種手続きのハードルを下げることを目的としたクリエイターDXプラットフォーム。名称は「KENRI(権利)」と「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」のアナグラムだ。
音楽業界ではストリーミングサービスの定着に伴い、楽曲制作からマーケティング、ディストリビューションまでを自ら行う個人の音楽クリエイター(DIYクリエイター)が増加している。これらDIYクリエイターにおいては「音楽配信等から得られる収益とは別に、著作権管理団体等を通じて著作物使用料の分配を受けられる」ことが認識されていない、という実情がある。
さらに、実証実験を通じてDIYクリエイターには自身の楽曲の無断利用や、なりすまし公開に対する対抗手段がないこと、著作物使用料分配の仕組みやJASRACとの管理委託契約・楽曲登録が複雑・煩雑で、既存の著作権管理システムの利用はハードルが高いという課題が明らかになった。
JASRACは、これらの課題解決に向けて、ブロックチェーン技術を用いた存在証明機能を備え、JASRACを含む音楽関係のさまざまなビジネスパートナーとのデータ連携、各種申請・登録や契約を定型化・簡素化して電子化する楽曲情報管理ツールの開発に着手し、音楽クリエイターの協力を得ながら、リリースに向けて実証実験を重ねてきた。
音源ファイル等をKENDRIXに登録すると、以下の情報がブロックチェーンに登録される(制作途中の音源でも登録可能)。
- 音源ファイルのハッシュ値
- タイムスタンプ
- ユーザー情報、タイトルとバージョンの情報(1つの楽曲情報に対し、複数の音源ファイルを登録して、バージョン管理することができる)
これにより、ある音源ファイルを誰がいつの時点で所有していたのか、という事実を客観的に証明することができる。そして、ブロックチェーンに登録された情報を表示する「存在証明ページ」を公開できる。
動画配信プラットフォームやSNSで楽曲を公開する際に、存在証明ページの公開用URLを添えることで、存在証明を取得している音楽クリエイターであることが第三者に伝わり、不正利用の抑止力となることが期待される。
今後、合計10組程度の音楽クリエイターがテストユーザーとしてクローズドβ版を使用する予定。テストユーザーによるレビューとフィードバックを得て、一般公開に向けて機能の改善・改良を図っていくとのこと。
KENDRIXはこうしたブロックチェーン技術を活用した存在証明のほかに、eKYCを用いたオンライン完結型の契約機能等を実装し、2022年10月に誰でも無料で使える正式サービスを開始する予定だ。
JASRACは、今後もテクノロジーの活用を通じて音楽クリエイターの創作活動をサポートしていくとのこと。