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声優の7割以上は年収300万円以下、2割強がインボイス制度導入で廃業を検討〜VOICTION発表

ビジネス レポート

「2023年10月にインボイス制度が導入された場合、ご自身の声優としての仕事は増減すると思いますか?」への回答

3人の声優(咲野俊介、岡本麻弥、甲斐田裕子)が立ち上げた有志グループ「VOICTION」では、2023年10月施行予定の「インボイス制度」(正式名称:適格請求書等保存方式)が業界に与えるインパクトを憂慮し、本制度への反対運動を行っている。その一環として声優業界の実態を把握すべく、声優を対象にした「声優の収入実態調査」(回答数260件、2022年9月13日開始)、並びにフリーランスを対象とした「インボイスに関するアンケート」(回答数183件、2022年9月12日開始)を実施し、ここにその途中集計結果を発表した。

1万人を超える声優(※1)の収入実態、7割以上が年収(※2)300万円以下

年収(全年齢)

現在日本で「声優」と呼ばれる人は、1万人以上存在しているが、今回のアンケート結果によると72%は声優としての年収が300万円以下であると回答しており、1,000万円以上と回答した人の割合はわずか5%でだった。とりわけ20歳代、30歳代の若年層の年収は低く、約半数が100万円以下であると回答している。

このアンケート調査はTwitter及びVOICTION公式サイトでの呼びかけのもと回答者を募った事から、比較的年齢層の低い声優たちが回答したと考えられるが、それでも全体の90%以上が現在消費税の納税を免除されている免税事業者に該当すると言える。

※1 2022年9月VOICTION調べ。公開されている声優が所属する事務所の公式サイトに掲載されている人数が9591人。この他、公式サイトに掲載されていない「預かり所属」等の人数、及び無所属で活動するフリーの声優を加味し、1万人以上とした。
※2「税金及び経費」を引く前の金額。

低収入者ほど年収に占める経費の割合が高く、収入以上の経費をかけているケースも

年収に占める経費の割合

収入に占める経費の割合を見ると、低収入者ほど高い割合で経費を計上していることがわかる。年収0〜300万円の層で見ると、実に20%の人が100%以上、50%が収入の半分以上の経費を計上しており、芸事だけでは生活が成り立たないという実情が見える。この割合は収入が上がる毎に低くなっており、1,000万円を超える人の83%は収入に対する経費の割合が50%以下であると回答している。

これは、声優としての収入が低い人たちの方がレッスンなど比較的高額の経費を使う必要がある、という現状に即した結果であると言える。

インボイス制度により2割以上が「廃業を検討」と回答

「2023年10月にインボイス制度が導入された場合、ご自身の声優としての仕事は増減すると思いますか?」という問いに対し、23%が「廃業するかもしれない」と回答している。声優の5人に1人が、この制度による影響を受けて業界を去る可能性があるという。
この問いに「増えると思う」と回答したのは僅か1%のみで、76%の回答者が「収入が減るのでは」と考えていることがわかる。

2020年のCovid-19の流行以降に仕事が増減したかの問いには全体の43%、廃業を検討すると答えた人の52%が「減った」と回答しており、3年前と比較して既に経済的に大きなハンデを背負う状態である現在、これ以上の負担は自らの夢を諦めるきっかけにならざるを得ないという切実な思いがこの結果から見て取れる。

また、「廃業するかもしれない」と答えた人たちの年収を見ると58%が100万円以下である一方、6%は年収400万円以上あると回答している。さらに年代で見ると40歳代〜60歳代である回答者が16%おり、必ずしも低収入者や若年層だけが強い危機感を持っているとは限らないと言える。

回答者の97%がインボイスに反対、仕事への圧力と思われる要求も

上記「収入実態調査」と同時期に行った「インボイスに関するアンケート」では声優・俳優のみならず漫画家・イラストレーター・アニメーターや文筆業、建設業など多様な業界の個人事業主からの回答を得た。その結果、97%がこの制度に対して明確に「反対」であると回答している。所属している事務所や取引先などから制度についての何らかの説明があったかの問いに対しては78%が「まだ話はない」と回答しており、個人事業主と商取引のある企業側への周知が足りていない実情が浮き彫りとなった。

一方で「話があった」と回答した22%の中には「登録してもらえないと今後の契約は約束できないと言われた」「インボイスの発行がない場合、今後の取引をしないという通告が来た」「毎年頂いているお仕事がインボイス制度が始まるとお願いするのは難しい、と言われました」「課税業者にならないとその分値引き」等、独占禁止法に抵触するのではと思われるような言葉をかけられたとの回答も見受けられた。

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