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ACPC、2022年上半期のライブ市場調査データを発表 公演数・動員数・市場規模はコロナ禍前の2019年同期比でいずれも90%を超える数値に

ビジネス 音楽業界

コンサートプロモーターズ協会(ACPC)は11月15日、2022年上半期のライブ市場調査データを発表した。同協会では全国の正会員社を対象に、ライブ・エンタテインメント市場の調査を実施している。この調査報告は1989年より始まり、コンサートプロモーターの事業活動およびライブ市場の動向をデータ化した国内唯一の資料として、調査を重ねているものだ。

2021年上半期 集計結果

調査対象期間:2022年1月1日〜6月30日
会員社数:75社(前年同期比+3社)
総公演数:14,283本(前年からの増減 +4,719本 /前年同期比149.3%)※2019年同期比95.6%
総動員数:20,254,506人(前年からの増減 +13,130,972人 /前年同期比284.3%)※2019年同期比90.0%
総売上高:1561億9,796万円(前年からの増減+1099億6,560万円 /前年同期比337.9%)※2019年同期比99.2%

※ACPC正会員社が調査対象のため、日本全体のライブ市場データとは異なる
※新型コロナウイルス感染拡大に伴う損失を測るために、コロナ禍前の2019年上半期との比較が可能なPDFをダウンロードすることができる

2022年上半期の市場概況

  1. 公演数・動員数・市場規模はコロナ禍前の2019年上半期と比較して、いずれも90%を超える数値
  2. 催物の開催制限の緩和により、スタジアム・アリーナ・野外公演が本格的に再開
  3. 関東エリアの公演数・動員数・市場規模はコロナ禍前を超えた。関西・東海エリアもコロナ禍前とほぼ同水準の公演数
  4. 関東・東海・関西以外のエリアではコロナ禍前と大きな差が残る
  5. もともと公演の多い中核都市へ公演が集中し、それ以外のローカルな公演が増えづらい傾向が見られるなど、全国的な市場の回復には至っていない

会場規模別の動向

2021年11月19日付の基本的対処方針で、公演主催者が感染防止安全計画を策定し、都道府県による確認を受けた場合、人数上限を収容定員まで、収容率の上限を100%とすることが可能となり、大規模会場の公演が本格的に再開された。

  • スタジアム:公演数102 動員数316.5万人(2019年上半期:公演数120 動員数369.0万人)
  • アリーナ:公演数823 動員数543.0万人(2019年上半期:公演数728 動員数571.5万人)
  • 野外:公演数123 動員数84.2万人(2019年上半期:公演数113 動員数97.7万人)

アリーナは関東圏の新設2会場(約130公演)の稼働もあり公演数が大きく増加したものの、アリーナ1公演あたりの平均動員数6,597人はコロナ禍前の7,850人と差がある。

ホールの公演数は5,968で、コロナ禍前の2019年上半期比で99.7%まで数字が戻っているが、動員の712.4万人は、コロナ禍前の86.5%に留まる。

ライブハウスの公演数は5,818で、コロナ禍前の2019年上半期比で79.6%の水準にあるが、動員数の163.0万人はコロナ禍前の58.2%と、困難な状況が続いている。

2021年より枠を設けた「オンライン」は、公演数204、動員数21.4万人となり、いずれも前年上半期からほぼ半減した。オンラインはACPC会員社が開催した公演を調査対象として、動員数は「有料公演のチケット販売数」を計上している。

招聘公演の動向

2022年3月1日の外国人の新規入国再開に伴い、スタジアム・アリーナも含めた公演が徐々に再開している。2022年の通年では、さらに市場の拡大が見込まれる。

エリア別の動向

関東エリアの公演数・動員数・市場規模は、コロナ禍前の2019年の数値を超えている。新設アリーナ2会場の本格的な稼働(約130公演)が要因のひとつと見られる。

関西・東海エリアもコロナ禍前とほぼ同水準の公演数だが、一方で北海道・東北・北陸・中国・四国・九州・沖縄といったコロナ禍前と大きな差が残るエリアが少なくない。

あらゆるエリアで、もともと公演の多い中核都市へ公演が集中し、それ以外のローカルな公演が増えづらい傾向が見られる。来場者の感染への不安や行動控えなど、コロナ禍の影響が根強いことが考えられ、全国的な市場の回復には至っていない。

業界の課題・展望

ライブ・エンタテインメント産業の発展に向けて、これまでの感染対策の知見を元に、感染状況に合わせたガイドラインの改定、会場での感染予防策の継続など、引き続き安心・安全な公演開催に向けた取り組みを推し進めることで、多くの人に公演へ参加してもらえる環境作りに取り組んでいく。

ただし、コロナ禍によるライブ・エンタテインメント関連企業やフリーランスの技術者の経済的損失はいまなお解消されていないと見られ、全国規模でのライブ産業の持続と発展のためにも、支援制度の拡充が求められる。

データから推測される、公演数の急増に伴うスタッフ・アルバイトの人材不足や、世界的な物価高と円安による機材・経費などの価格高騰も、業界で団結した取り組みが必要となりそうだ。