第9回JASRAC音楽文化賞、小林克也氏ら3組が受賞
日本音楽著作権協会(JASRAC)は11月18日、第9回JASRAC音楽文化賞を発表。今回は、小林 克也氏、外山 喜雄氏/恵子氏、ドリアーノ・スリス氏の3組が受賞した。
JASRAC音楽文化賞は、売り上げや利用実績などの数字には表れない地道な活動を行っている個人・団体・作品等に光を当て、音楽文化の発展に寄与した功績を称え顕彰するもので、2014年11月に創設された。受賞者には表彰盾と副賞(30万円)が贈られる。
JASRACは「今後も、音楽風土を支え育む活動等に注目し、顕彰することを通じて、音楽文化の発展に寄与する取り組みを進めてまいります」と伝えている。
第9回JASRAC音楽文化賞 受賞者
小林 克也氏(こばやし かつや) DJ、タレント
- 受賞コメント
80年代、MTVが始まる前から、洋楽情報をいち早く知らせるという、時代が求めていた役目を当然のようにやってきました。番組は今も続いていますが、時代によってその役割も変わっていきました。今はYouTubeなどでも簡単に情報が得られます。だからこそ、例えばジョン・レノンが一体どういう人物だったのかということが伝わるようにしています。これからも洋楽・邦楽の境無く、素晴らしい音楽を皆さんに伝えていきたいと思います。今でも、生き生きしている音楽を発見して、とても楽しい毎日を過ごしています。
- 顕彰理由
ラジオ・テレビで音楽番組を長年にわたって牽引し、誰もが引き込まれる独特の声質、流暢な英語により洋楽作品を楽しく華麗に紹介、特にミュージックビデオ専門の音楽チャンネル(MTV)の登場と連動して音楽ファンの裾野を広げた。海外アーティストへの直接のインタビューが珍しかった時代から、アーティストとのフランクな交流等により国内のリスナー、アーティストへの情報の橋渡し役にも努め、信頼を集めた。移り変わりの激しいポピュラー・ミュージックの世界で、希代のDJとして今も第一線で案内役を果たしている。
- 略歴・実績
1941年、広島県福山市生まれ。慶應義塾大学1年次に通訳案内士の国家試験に合格。在学中にコンサートの司会業も始める。1970年、ラジオ関東(現アール・エフ・ラジオ日本)でDJとしてデビュー。1976年、ラジオ大阪で始めた音楽番組「スネークマンショー」が話題になり、番組で演じたキャラクターを生かしたレコードアルバム(スネークマンショーシリーズ)を計16枚、また1982年に結成した「小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド」のアルバムを計12枚発表する。1981年に開始したテレビ朝日「ベストヒットUSA」は、BS朝日、エフエムナックファイブ(NACK5)で復活し、現在も続く。1993年開始のNACK5「ファンキーフライデー」は毎週9時間の生放送で同様に長寿番組に。現在、全日空機内放送番組を含め計7局でDJを務める。アーティストへのアルバムにゲスト参加するほか、俳優としても多数の映画、テレビドラマに出演している。
外山 喜雄氏、恵子氏(とやま よしお、けいこ) 音楽家
- 受賞コメント
外山喜雄氏
私たち夫婦でルイ・アームストロングを追いかけて56年になります。二人でニューオーリンズで5年間生活したこともあります。今でも二人で楽しくJAZZしています。JAZZは20世紀のアメリカが生んだ、世界への素晴らしいプレゼントです。その恩返しとして、日本ルイ・アームストロング協会、日本ジャズ音楽協会の方をはじめ、皆さまに支えられながら、28年間で850本もの楽器をプレゼントすることができました。JAZZを愛する皆さまの気持ちを私たちの思いに重ねてくださったおかげでこうした活動を続けることができ、このような賞をいただくことができました。本当にありがとうございます。
外山恵子氏
60年近くルイ・アームストロング、ニューオーリンズのジャズを追い続け、気づけばこの年になっていました。ジャズの楽しいリズム感、スイング感をできる限りの演奏でお伝えし、お世話になったニューオーリンズの方たちに楽器を送るという草の根の活動を続けてきました。私たちの60年は皆さまの善意が生んだ奇跡です。サッチモは貧しい環境に生まれ、育ちながら、世界を変えるような音楽、みんなの心を打つ音楽を残しました。あらためてそのスピリットは素晴らしいと感じています。
- 顕彰理由
学生時代から50年以上にわたり、夫婦でクラシック・ジャズ、特にディキシーランド・ジャズの魅力を紹介する活動を継続している。とりわけジャズの草創期の巨星 ルイ・アームストロングの作品・生涯・演奏を研究し、関連するイベントの開催や演奏、書籍の上梓により、その成果を音楽ファンと共有した。また、ジャズの聖地、米国ニューオーリンズ市民との交流にも努め、貧困・銃犯罪・災害に苦しむ子どもたちへの楽器の寄贈などを通じて慈善活動に尽力した。
- 略歴・実績
喜雄氏は1944年、東京都港区生まれ。恵子氏は1942年、韓国ソウル生まれ。早稲田大学の「ニューオルリンズジャズクラブ」で出会う。ルイ・アームストロングのジャズに憧れ、結婚後1967年、移民船で米国ニューオーリンズに夫婦で渡り、現地のミュージシャンと演奏、交流の場を広げる。1975年帰国後、外山喜雄とデキシー・セインツを結成、喜雄氏はトランペットと歌を、恵子氏はバンジョーとピアノを担当、1983年の東京ディズニーランドの開園から2006年まで人気バンドとして演奏する。1994年にルイ・アームストロングファウンデーション日本支部を設立(1998年から「日本ルイ・アームストロング協会」に改名)。「銃に代えて楽器を」をスローガンに、ニューオーリンズ市の子どもたちに楽器をプレゼントする運動に取り組み、2005年に外務大臣表彰を受ける。こうした、半世紀を超えるディキシーランド・ジャズの演奏・普及活動により、2018年「文部科学大臣表彰」、同年米国で「スピリット・オブ・サッチモ賞生涯功労賞」を受け、夫婦連名で2012年「国家戦略大臣感謝状」、2019年「ミュージック・ペンクラブ音楽賞」を受賞した。
ドリアーノ・スリス(Doriano Sulis)氏 琵琶職人
- 受賞コメント
イタリア出身で、クラシックギターや人形劇を続けていましたが、27歳の時、僕にとって生まれて初めて聞いた「琵琶」の音色にショックを受けました。琵琶は、ほかの弦楽器と違い、同じものが2つとありません。だから修復をするのにも、毎回違う手法が必要となります。来日当初、琵琶は日本人にとってもそれほど親しみのない民族楽器となっていて、周りから「暗いね、どこがいいの?」などと言われていました。しかし、今では僕の学校で、9人の若い生徒が琵琶製作を学んでいます。琵琶の将来はこれから、と感じています。
- 顕彰理由
勇壮な音色を放つ「薩摩琵琶」、また柔らかな音色で明治期に女性の間で広まった「筑前琵琶」など、さまざまな琵琶の制作・修復を担い、後進を育てている。国内唯一の筑前琵琶職人としても知られる。独特無比の響きで、今も平家物語の語り、詩吟、舞踊、現代音楽に用いられる琵琶の演奏を陰で支えるため、本体から細かな部品の素材一つひとつにまでこだわり、制作当時の姿を忠実に再現、異境・幽玄の世界に聴き手を誘う伝統の音楽文化継承に貢献している。
- 略歴・実績
1947年、イタリアのサルデーニャ生まれ。イタリアの国立音楽アカデミーでクラシックギターの演奏を学ぶ。その後人形劇団で脚本や人形作りを担当した。1974年、来日。1975年、筑前琵琶の音色と形に魅せられ、唯一の筑前琵琶職人の福岡県無形文化財・吉塚元三郎氏に師事する。琵琶の制作、研究に取り組み、筑前琵琶だけでなく、薩摩琵琶、平家琵琶、盲僧琵琶、笹琵琶などの修復にあたり、琵琶の修復師となる。2020年「よみがえる琵琶 ドリアーノ・スリス修復琵琶展」を福岡で開催。2021年、琵琶職人を育てる学校「琵琶館」を創設し、後進の育成にも尽力する。2022年、福岡市民文化活動功労賞受賞、及び福岡県指定無形文化財の保持者に認定される。現在、イタリア会館・福岡館長、「琵琶館」工房・教室運営。
JASRAC音楽文化賞選考委員(報道社名50音順)
- 河村 能宏 氏(朝日新聞東京本社 文化部 次長)
- 田澤 穂高 氏(共同通信社 編集局文化部 部長)
- 高橋 俊雄 氏(日本放送協会 解説委員室 解説委員)
- 吉田 俊宏 氏(日本経済新聞社 総合解説センター 編集委員)
- 西田 浩 氏(読売新聞東京本社 編集局文化部 編集委員)
推薦協力
- 日本新聞協会
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