「YouTube Music AI インキュベーター」日本でも開始、音楽パートナーと生成AIの活用について議論

YouTubeは3月21日、昨夏に始動した、「YouTube Music AI インキュベーター」を、日本でも開始したことを発表した。YouTube Music AI インキュベーターとは、アーティストや作詞・作曲家、プロデューサー等が、音楽における生成AIへのYouTubeの取り組みに対して、情報提供を行うプログラムだ。

YouTubeは「表現する場所をあらゆる人に提供し、その声を世界中に届けること」を使命とし、AIは人間の置き換えではなく、創造性を増強すべきものと考えている。また、新しい技術を取り入れる際は、責任を持って進めるべきだと踏まえ、音楽業界とのパートナーシップと責任によって定義される、AIへのアプローチを作成したいとの考えを示した。

そこで、2023年8月に、音楽業界と連携し、どのように創造的な表現を強化し、一方でYouTubeでの芸術性を保護するかについてまとめた「音楽AIの基本的な考え方」を制定し、アーティストや作詞・作曲家、プロデューサーから直接、生成AIの活用について意見を伺うプログラム「YouTube Music AI インキュベーター」を発足させた。さらに、昨年の発足発表の際には、ユニバーサル ミュージック グループのルシアン グレンジ会長兼CEOが、YouTubeとのパートナーシップについて語り、アニッタ、ビョルン・ウルヴァース、デヴィッド、ドン・ウォズ、フアネス、ルイス・ベル、マックス・リヒター、ロドニー・ジャーキンス、ロザンヌ・キャッシュ、ライアン・テダー、ヨー・ガッティ、Estate of フランク・シナトラなど、ユニバーサル ミュージック グループのアーティスト、作詞・作曲家、プロデューサーの参加が発表された。

そして本日、YouTube Music AIインキュベーターが日本でも開始することとなった。日本では第1弾として、バーチャルシンガー・ソフトウエア「初音ミク」などの開発で知られる、クリプトン・フューチャー・メディアが協力する。また、同プログラムの最初のグローバルパートナーであるユニバーサル ミュージック グループの日本法人とも緊密な連携によりパートナーシップを継続していく。

同プログラムの参加者には、GoogleのAIの研究部門であるGoogle DeepMindが開発した音楽生成モデル「Lyria」の早期アクセスを提供する。Lyriaの活用で、楽器とボーカルを備えた質の高い調和のとれた音楽の生成、アレンジ作業、そして出力される楽曲のスタイルや奏法に関する細かな設定を行うことができる。例えば、プロンプトにアイデアを入力するだけで、ジャンルを融合させたり、ビートをメロディーに変えたり、ボーカルにサウンドトラックを添えることができる。

これらの実験を組み合わせることで、YouTubeでは、アーティストやクリエイターの想像力を広げ、創造的なプロセスを強化するのに役立つAI機能の可能性を探っていく。

YouTubeは、AIが世界中の創造性を飛躍的に高める可能性に期待すると同時に、YouTubeとAIの可能性は、音楽パートナーの成功があってこそ実現するとの考えから、アーティスト、作詞・作曲家、プロデューサー、そして業界全体をサポートしながら、ファンに価値をもたらし、クリエイティブな可能性を広げられるような形で、この新しい技術を活用していけるよう努めていくとのこと。