世界で「拡張権利」収入が拡大、音楽売上の1割に〜ファン経済
世界のレコード産業において、グッズなどマーチャンダイジングやスポンサーシップ、ライブ演奏などといった「エクスパンデッド・ライツ(拡張権利)」収入は、2023年に35億ドルに達した。音楽市場全体の1割に当たり、前年比では15.5%伸びている。英国の音楽専門コンサルティング・ファーム、MIDiAが発表した。
同社は「音楽ビジネスにおける『ファン経済』への移行の始まりだ」と分析。ファン経済が持つ大きな潜在能力を引き出すための重要な取り組みとして、(1)ソーシャルメディアにおける肖像権の収入確保と保護、(2)ストリーミングの再構築、(3)ファンダムの育成、の3点を挙げた。
また、「ストリーミングはなくならない」とした上で、ファンダムが中心となるにつれ、消費に焦点を当てた2010年代のアプローチは脇に追いやられると予想している。
同年のストリーミング収入は219億ドルと、前年から9.6%拡大。成長率は初めて市場全体(9.8%)を下回り、売上高に占めるシェアは62.5%へと縮小した。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「日本を除く先進国では音楽サブスクが普及・安定成長に入り、既にポスト・サブスクへ視線を移している。それがWeverseなどスーパーファン・アプリであり、今回の『拡張権利』ビジネスのようなファンダムの経済圏構築だが、それらは日本がファン・クラブ等で行ってきたことのDXといえる」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター/フォトジャーナリスト。日本の大学を卒業後、国外で日系メディアやPR会社に勤務。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や記事執筆、編集、撮影などを行う。