チケット収入の9割がアーティストに? WSJ報道にHypebotが警鐘
ライブネーション・エンターテインメントに対する反トラスト法違反訴訟に関連して、複数のメディアが「チケット販売収入の9割をアーティストが得ている」と主張している。これについて音楽業界ニュースサイトのHypebotは、会場やプロモーターが通常、コンサートの経費を賄うためにチケット収入の5〜6割を差し引いていることなどが説明されていないと指摘した。
Hypebotはさらに、アーティストは通常、ブッキングエージェント(10%)やマネージャー(10~15%)、ビジネスマネージャー(5%)に手数料を支払うほか、交通費やホテル代、スタッフの給料、機材、保険なども負担すると説明。チケット代から利益を得ているのは一部の一流アーティストにとどまり、99%が手数料の高さなどに懸念を示していると述べた。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)はInstagramの投稿で「チケットの利益は、演奏家、コンサートプロモーター、チケット購入者、会場など、多くの関係者によって共有される」としながら、チケット収入の98%がアーティストに入ることを示す図表を掲載。他メディアも同割合が90%に上ると伝えている。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「『チケット代の9割がアーティストに』という大手報道にHypebotが反論。プロモーター10%の他、会場が40%、ブッキングエージェントが10%、マネージャーが10%、ビジネスマネージャーが5%取り、アメリカのアーティストは残り25%で人件費交通費ホテル代保険代機材費などを負担している(※割合はケースバイケース)。日本だとマネジメント事務所がブッキングエージェントやビジネスマネージャー等を兼ねるので(図の緑の破線)、アーティストが事務所の社長になれば取り分は大きいがコロナ禍のようなリスクも背負うことになる」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター/フォトジャーナリスト。日本の大学を卒業後、国外で日系メディアやPR会社に勤務。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や記事執筆、編集、撮影などを行う。