デジタルガレージ、「坂本龍一ネットワークスタジオ構想」発表 愛用の楽器・機材を横須賀市秋谷DG CAMP内に移設し来春開設
デジタルガレージは、神奈川県横須賀市「DG CAMP AKIYA Yokosuka City」内に、坂本龍一の遺志を継いだ「アーティスト・イン・レジデンススタジオ」を開設する計画を発表した。本スタジオは、音楽や映像の制作を行うための最先端の設備を備え、アーティストが創造活動に専念できる場所を提供する。
デジタルガレージと坂本龍一との交流は、デジタルガレージの前身であるフロムガレージの創業当初、坂本が出演、音楽制作を担当した映画『戦場のメリークリスマス』(1983年公開)までさかのぼる。
その後、ティモシー・リアリーを介した伊藤穰一との出会いや、慶應大学教授 村井 純とのWIDE PJを通じたインターネット黎明期の共同作業、東北ユースオーケストラのサポートなど多岐に渡る。
また、グローバルに活躍する日本人を表彰する「デジタルガレージ ファーストペンギンアワード 2017」受賞や、坂本によるデジタルガレージ25周年のオリジナル楽曲「DG25」提供など、芸術・音楽活動のみならず、氏の環境保護や社会活動とも共振し、長年の交流を公私ともに深めてきた。今回のプロジェクトは、音楽とテクノロジーのファーストペンギンとしてグローバルに活躍した坂本龍一の東京・NYでのプライベートデジタルスタジオを次世代のクリエイターに継承し、永く坂本龍一の哲学・美学を伝えるものとなる。
アーティストたちは、坂本龍一が生前に愛用していた楽器や音楽機材を活用できるとともに、滞在しながら作品制作を行い、その過程を通じて技術や感性を磨くことができる。さらに、アーティストやエンジニアを育成するプログラムも同時に実施予定。次世代を担う才能ある若者が坂本龍一の精神を継承し、音楽制作の経験を積むことで、未来へと続くクリエイティブなコミュニティを築いていく。また、音楽と環境保護の融合を追求し、創造と共感の輪を広げていく新たな拠点となることを目指す。
2025年2月に「坂本龍一ネットワークスタジオ構想」の詳細は、東京の拠点都市となる渋谷区で発表予定。最新の通信ネットワークやDAOを活用した「国内外のスタジオとの連携」や「環境保護の坂本龍一財団」「トリビュートコンサートやソフトの配信」等を視野に入れている。
今回の横須賀秋谷DG CAMP内「アーティスト・イン・レジデンススタジオ」は、これらの取り組みのα版と位置付け、かつてアルファレコードがYMOや荒井由美などの世界的アーティストを輩出した伝説のスタジオの次世代版を目指す。
坂本 龍一のご遺族より
坂本龍一が亡くなり、彼の音楽制作を支えた楽器や機材が数多く残されました。ヴィンテージ・シンセサイザーや、坂本が「僕の手のExtension」と呼んだピアノ、それらの音を集音した真空管のマイクロフォン、そして新旧の機材たち。これらを散逸させることなく、想像の源として新たな生命を与えたい。坂本が親しくさせていただいたデジタルガレージ 林郁さんが「スタジオを作りましょう」と言ってくださいました。坂本の楽器や機材のCASAが秋谷に、東京にできることになります。そこから世界へとつながり、たくさんの新たな才能が生まれることを期待しています。
村井 純(慶應義塾大学教授)
坂本龍一さんの知的好奇心と挑戦心の企画や作品にご一緒させていただいたとき、本題とは別に、「あいつ(坂本さんがその時々に出会った若者です)の夢を実現させたいんだよ」というセリフをよく聞きました。その対象は音楽や芸術を飛び越えて地球環境など、彼自身の夢だったことを思い出します。「アーティスト・イン・レジデンススタジオ」が、坂本龍一という巨人がいつも抱いていた「次の世代への期待と愛情」を育む場として、そこから新しい人が坂本さんの夢の一部として世界に羽ばたいていくのを楽しみにしています。
林 郁(デジタルガレージ 代表取締役 兼 社長執行役員グループCEO )
ご遺族からのご相談を受け、坂本さんの楽器を次世代に伝える橋渡しの役を仰せつかり大変光栄です。坂本さんは、実に多面的な顔をお持ちでした。時に最先端のデジタルテクノロジーを駆使し、時に環境問題を訴えるミュージシャンとして、時に不朽の映画音楽作家として、時に原発事故の後の福島の子供たちと楽しそうにクラシックを奏で、そのどれもが坂本龍一さんでした。このスタジオ構想を通して、坂本さんの「音」と「心」をグローバルな次なる世代につなげ、このプロジェクトで坂本さんと共振する新たな才能が生まれることを楽しみにしています。
伊藤 穰一(デジタルガレージ 取締役 兼 専務執行役員Chief Architect 共同創業者)
坂本龍一さんが、「若い人たちに本物のいい音楽を伝えたい」と話していたことを思い出します。また、数多くの人が、音楽活動を越えて社会を良くするために働きかけてきた坂本龍一さんから、様々なインスピレーションを受けてきたと思います。こうした坂本さんの思いやスピリットが、このスタジオを活用するアーティストやエンジニアにもインスピレーションを与え続けることを願ってやみません。
※敬称略