テンセント・ミュージック、AIでコンテンツ制作 差別化でユーザー拡大目指す
中国最大の音楽配信サービス運営会社テンセント・ミュージック・エンタテインメント・グループ(TME)は、AIを活用してオリジナルの楽曲やオーディオブックを含むコンテンツを制作。ライセンス料の節約とともに、競合との差別化で月間アクティブユーザー数(MAU)を伸ばす考えだ。第3四半期(7~9月)決算説明会での話を元に、Music Business Worldwide(MBW)が伝えた。
AI歌唱技術を導入し制作したシングル「Fairy Town」は、短編動画プラットフォームでバイラル(シェアなど口コミによる情報拡散)現象が発生。テキスト読み上げ技術を使って「数万冊」の書籍を音声ファイルに変換した。
有料会員数は前年同期から増えたが、MAUは縮小。MAUは2019年第3四半期をピークに減少傾向にある。
高価格帯プラン「スーパーVIP(SVIP)」の会員は1,000万人を突破し、有料会員1人当たりの月平均課金額(ARPPU)の押し上げ要因となっている。同社経営陣は、SVIP加入者が2,000万~3,000万人に達した時に ARPPUの成長が加速すると予想している。
ソーシャルエンターテインメントサービス部門は、中国当局のオンライン賭博の規制強化を背景に縮小しているが、ソーシャルカラオケゲーム「WeSing(全民K歌)」が回復の原動力になっている。
MBWは、TMEがSpotifyと同様に、音楽以外のコンテンツの拡大を進めている点に注目すべきだと指摘した。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「生成AIで全曲まるっと作るのは驚きがあるけど大きな商売にするには現実的ではない。じゃあ生成AIで音楽会社はどう稼ぐか?テンセントミュージックは中国の会社らしく着々と稼げる方向で具体化しつつある。歌唱AIでバイラルを起こす、歌抜きの生成に活用するソーシャルカラオケで稼ぐ、読み上げに活用するオーディオブックで音楽以外に進出、当たりそうな曲をAIで精選してマーケティングに活かす等々がそうだ。AIをポスト・サブスクに活かすという方向は、本や連載で私も書いてきた」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター/フォトジャーナリスト。日本の大学を卒業後、国外で日系メディアやPR会社に勤務。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や記事執筆、編集、撮影などを行う。