グローバルサウス台頭、波及効果は? 世界のストリーミング・トレンド
英国の音楽専門コンサルティング・ファームであるMIDiA Reserchは11月13日、ストリーミングのトレンドに関する考察を発表した。Spotifyのユーザーミックスで、今後もグローバルサウスの割合が拡大することが予想される中、その波及効果を分析した。
・ストリーミングの1ユーザー当たりの平均売上高(ARPU)の低さから、非西欧市場からのユーザーの増加は、総収益の比率にそれほど大きな影響を与えない。ただ、収益はストリームシェアにより分配されるため、新規ユーザーが何を聴いているかが重要。ローカル・アーティストに注目が集まっている。
・ARPUが低い地域でストリーミングが成長するにつれ、世界的な「文化の中心地」と「収益の中心地」に乖離(かいり)が生まれる。世界の音楽売上高は欧米諸国が今後もけん引する一方、音楽文化と音楽チャートは、非西洋世界の消費習慣が原動力となる。
・グローバルサウス市場でストリーミングが拡大すると、ARPUの低さと、欧米の権利者のレパートリーシェアの低さから、欧米の権利者は収益面で「二重の割引」を受けることになる。
この波及効果の大きさは、欧米のレーベルがSpotifyが最もユーザーを増やしている地域で、より多くのカタログを獲得することで変わると述べている。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「音楽サブスクは日本を除く先進国で低成長に入りつつあるが、インド、タイ、インドネシア、ブラジル、南アフリカなどグローバルサウス諸国が替わって牽引していく。ただ、月額が先進国と比べてかなり低いこと、現地の音楽の聴取比率が高くなることから、今後高まるグローバルサウスの影響力を先進国のレーベルが売上に繋げるには、現地の楽曲の権利の確保など創意工夫が必要になる。グローバルメジャーによる現地レーベルの買収や共同経営は既に始まっている。日本でかつて起こったことでもある」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター/フォトジャーナリスト。日本の大学を卒業後、国外で日系メディアやPR会社に勤務。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や記事執筆、編集、撮影などを行う。