Musical Awards TOKYO、専門選考員および観客選考員からのミュージカル界への提言を発表
今年にミュージカル業界内の有志による初のミュージカルアワードとして発足したMusical Awards TOKYOは、先日まで公募していた専門選考員及び観客選考員からの業界への提言をまとめた。
Musical Awards TOKYOは、ミュージカルの「創る、観る、広める」を活性化するために企業の垣根を越え、舞台芸術関係者有志が作る、初のミュージカルアワード。TOKYOを日本のミュージカル発信地の中核として周知していくために、アワードの名称を「Musical Awards TOKYO:ミュージカル・アワーズ東京」としている。
近年の日本ミュージカル界は多くの課題に直面している。特に、チケット代の高騰や観客層の狭小化、作品のオリジナリティ不足が顕著となる。これらの課題を解消するため、観客から様々な提案が寄せられている。
具体的には、価格設定の見直しやリセールシステムの導入、さらに日本独自のオリジナル作品の制作を強化すること等が挙げられた。また、業界全体としても、ミュージカルの魅力を広める新たな取り組みを行い、一体となって成長を目指す姿勢が重要となる。
Musical Awards TOKYOは、「現段階で我々ができることから着手し、日本ミュージカル業界発展の一助となれるよう努めていきたい』としている。
<3大課題>
1.チケット代の高騰
チケットの価格が年々上昇している。高額なチケット価格は、特に若年層や観劇初心者にとって大きな経済的負担となっている。また、同じ席種でも舞台の見え方が大きく違う場合があり、観客の間に不平等感をもたらしている。高騰した料金設定が観劇の新規顧客獲得を妨げており、観劇を趣味とするハードルを上げてしまっている。
2.観客層の狭小化
現在、観客の中心となる年代は中高年層であり、特に10代の観客がかなりの割合で減少している。観劇が「大人の娯楽」としての色合いを強め、若者が価値を見出しにくい状況である。学生やU25向けの割引は存在するが、利用の機会が限られ、実際の効果は低くなってしまっている。
3.オリジナル作品の不足
現在のミュージカル制作の多くが、海外の作品を日本語に翻訳したものに依存している。これにより、日本発のオリジナル作品を充実させるよう求める声が多く上がっている。
<10の提言>
1.チケット料金の細分化
チケット価格を見直し、座席の位置や公演日によって価格設定に幅を持たせ、観客が自身の予算に応じた選択をできるようにするべきである。
2.リセールシステムの導入
チケットを公正に譲渡できる公式なリセールシステムの導入が提案されている。ファンクラブや各公演の公式サイトを通じて、全てのチケットにリセールオプションを設けることで、非公式な転売を防ぎ、安心・安全に正しい価格でチケットが流通することを目指す。このシステムによって、体調不良や急な予定が入るなど、やむを得ない理由で観劇ができない場合もチケットを手放すことが可能になり、観客の利便性を高められる。
3.若年層向けの取り組み強化
若年層への魅力的なプログラムを提供することが急務。特にU18〜U25層に焦点をあてたプロモーション活動が重要である。また、SNSを活用して、若者にとっての観劇の魅力を高めることも求められている。
4.俳優の起用
作品がもつ魅力を引き出すキャスティングを望む声が多く上がった。また、さらに視野を広げ、グランドミュージカル、2.5次元ミュージカル等の垣根を超えてさまざまな作品や俳優の長所を融合させることが重要であるという意見も寄せられた。
5.創作者の育成
次世代のクリエイターを支援するためのプログラムを設け、業界全体が新たな才能の発掘に積極的に取り組むことが重要である。日本独自のオリジナル作品の製作を強化していくことが、長い目で見たときに業界全体の底上げに繋がる。
6.批評メディアの設立
専門の批評メディアを設け、観客が参考にできるような批評を行うことが必要である。多様な視点でのフィードバックを受けることで、観客層が広がり、より多くの人々がミュージカルの魅力を感じることができる。
7.労働環境の改善
出演者やスタッフの労働条件を見直し、健全な職場環境を整えることが業界の持続可能性を高める。クリエイターが尊重されてこそ観客は安⼼して観劇を楽しむことができるという声が上がった。
8.観る機会の提供
ミュージカルの公演映像を映像配信やテレビなどの放送で視聴可能にすることや、学校や地域コミュニティでの文化活動を通じて、観る機会を増やす施策が求められる。また、広告やSNSを効果的に用いることでミュージカルに出会うきっかけを増やし、観劇に対する関心を引き出すことが期待される。
9.観劇におけるアクセシビリティ
加齢や身体的制限によって聞きにくさのある人は、観劇のハードルが高まっている。聴覚、視覚、移動のサポート、託児サービスの実施など、観劇に伴う困難を改善することが求められている。
10.観客への理解と敬意の促進
制作者と観客のコミュニケーションを重視することが不可欠である。観客を単なる受け手として扱うのではなく、クリエイターと観客が互いにリスペクトをもってポジティブな関係を築くことが求められている。
総括
このように、ミュージカル界の未来の発展には、観客目線の具体的な提言が必要不可欠であり、業界全体が一丸となって取り組むことが求められる。ミュージカルの魅力を再発見し、新しいファンを増やすために、様々な施策が講じられることが必要である。
広告・取材掲載