AIは既に全ての音楽を学習済み? 元OpenAI共同設立者「イエス」
AIモデルの訓練に使用される素材が議論を呼ぶ中、OpenAI共同設立者でチーフサイエンティストを務めたイリヤ・サツキーバー氏は「インターネットから得たデータでAIを事前訓練する時代はまもなく終わる」と語った。業界が訓練のための新しいデータを使い果たしているからという。同氏の講演内容を元に、Digital Music Newsが12月16日伝えた。
サツキーバー氏は「われわれは手元にあるデータに対処しなければならないが、インターネットは1つしかない」とコメント。その「1つ」のインターネットには、海賊版サイトで簡単にダウンロードできるレコード音楽が含まれ、多くのAI企業が映画、書籍、音楽などのコンテンツを自由にかき集めた。
同氏は、AIの未来は、データを復唱する大規模言語モデル(LLM)を超えて、タスクの実行や意思決定、ソフトウエアとの対話を単独で行える「エージェント型」に移行すると考えている。
米AI新興企業Anthropicは、著作権で保護されたコンテンツでAIモデルを訓練することは「出力に100%著作権で保護された複製が含まれない限り『フェアユース』だ」と主張。音楽業界の大手企業はこれに同意しておらず、その意見の相違は法廷で争われることになるだろう。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「生成AIに著作権のある音楽や映画、小説を学習させる許可を与えるべきか、メディアやクリエーターは議論を重ねているが既に大手AI企業は海賊版サイトなどからそうしたものを得て学習させていることを示唆する発言がChatGPTを作ったOpenAIの共同設立者からあった。実際、OpenAIやその競合のAnthropic(Claude)は音楽業界の大手企業から訴訟を受けている。Anthropic社は「出力に100%著作権で保護された複製が含まれない限り『フェアユース』だ」と反論。引用のフェアユース適用を狙っているが、「出力100%」はさすがに拡大解釈が過ぎて裁判で通らないだろう。だがAIモデルの学習素材にフェアユースをどこまで適用できるかという法廷での議論は、その進展次第ではかなりの影響が出る。音楽の歴史でいうとファイル共有のナップスターがフェアユースを主張して失敗。音楽産業は著作権法が変わるのに先回りして聴き放題のサブスクを合意で生んだ経緯がある」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター/フォトジャーナリスト。日本の大学を卒業後、国外で日系メディアやPR会社に勤務。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や記事執筆、編集、撮影などを行う。
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