広告・取材掲載

広告・取材掲載

「オプトアウトは幻想」UMGや著作権団体の幹部がAIライセンスを議論

ビジネス 海外

ロンドンで開催された国際音楽ビジネスのカンファレンス「Music Ally Connect」で、AIと音楽ライセンスに関するセッションが行われた。 

CISAC(著作権協会国際連合、シサック)のガディ・オロン事務局長は基調講演で、「AI音楽会社はインプット(モデルの訓練に使用される音楽)をどうライセンスされるべきか」「そのアウトプット(AI生成音楽)に対してどう対処すべきか」「ストリーミング詐欺での音楽AI使用にどう取り組むべきか」が重要な課題だと説明。市場の透明性の必要性を訴え、複数の政府がAI企業が著作権で保護された素材を使用して訓練できるよう、著作権の適用除外を検討していることを批判した。 

パネルでは「AI企業に音楽のライセンス契約を結ぶ意欲はあるのか?」という問いに、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)のクリス・ホートン氏(ストラテジック・テクノロジー担当シニア・バイスプレジデント)は「間違いなくある」と主張。これに対し、AI搭載の音楽ソフトウエアを手がけるマッチチューンのヴィルジニー・ベルジェ氏(チーフ・ビジネス・ディベロップメント&ライツ・オフィサー)は、大手テック企業は既に全ての音楽を調べ尽くした上、アウトプットからインプットを見つけることができないため 、「実際、ライセンス供与はできないと思う」と述べた。 

フランス著作権団体のSACEM(サセム)のジュリアン・デュモン氏(開発・フォノ・デジタル担当ディレクター)は、「ライセンスを取得しようとしている企業は多いが、SunoやUdio、OpenAIといった大手は異なる」との考えを示した。 

オプトアウト(データをAIの訓練用データとして提供しないことを選択できる機能)を巡っては、ベルジェ氏は「オプトアウトは幻想だ。実際には機能しない」と強調。ダウンストリームのコピーを全て削除することは絶対に不可能だと指摘した。ホートン氏もこれに同意している。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「大手AI企業がストリーミングから既に全ての音楽を学習させていることがMusic Allyのカンファレンスで改めて指摘された。歌詞を生成した場合、元となった歌詞を特定することは不可能ではないのはテキストだからだ。実際、ユニバーサルミュージックが大手AIを告訴してほぼ勝訴している。が、トラックをAIで生成した場合、元の曲を特定するのは技術的に困難となる。現在、オプトアウト(データをAIの訓練用データとして提供しないことを選択できる機能)やAIへの楽曲ライセンスの交渉が進んでいるも、音楽AIに携わるエンジニアが「オプトアウトは機能しない」と指摘した。著作権のある素材にデジタル透かしを入れる法案も検討されているが、先進国の大手AIが従ってもたとえば中国Deepseekがそれに従わない可能性も高い。歴史的にはファイル共有の解決は法改正だけでは対応できず、スマホとSpotifyのふたつのイノヴェーションを待たなければならなかった

 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。