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「DeepSeek台頭は音楽業界への警鐘」 音楽ソフトウエア企業の幹部が主張

ビジネス 海外

AI搭載の音楽ソフトウエアを手がけるマッチチューンのヴィルジニー・ベルジェ氏(チーフ・ビジネス・ディベロップメント&ライツ・オフィサー)はMusic Allyへの寄稿で、中国のAI新興企業DeepSeek(ディープシーク、深度求索)の「低コスト」生成AIサービスは「単なるAIモデルではなく、警鐘を鳴らすものだ」と主張。AIの本当の力は「モデルの燃料となるデータとメタデータ」にあり、音楽業界がその無制限の利用を許している状況を憂い、「業界は真のAI規制と強固な執行メカニズムを、明確かつ集団的かつグローバルに推進する必要に迫られている」と訴えた。 

オープンソースの「DeepSeek R1」は、ローカル環境でも動作が可能。「低価格で遍在、大衆化」したAIにより、機械による機械の訓練、仕事の自動化が進むことは避けられず、また「非倫理的に入手されたデータに依存した」生成AIツールの氾濫が起こるとみている。 

DeepSeek自体も、海賊版検索エンジン「Anna’s Archive」のデータなど、大量の著作権侵害物で訓練されたことが分かっている。 

また、AI量子コンピューティングとAIエージェントが、業界をさらに混乱させると予想。前者は著作物のスタイルの正確な再現や著作権検出を回避した訓練も可能で、音楽の盗作が加速。後者は素早く大量の音楽を作り出すほか、レコード会社の重役として機能し、プロモーションするアーティストの選出や契約締結、音楽トレンドの決定にも携わる可能性がある。この規模になると、著作権の行使は意味をなさなくなり、デジタル配信業者のような仲介者の役割が一掃されてしまうことも予想されるという。 

さらに、オープンソースのAIは誰でも著作権検出を回避するために音楽モデルを修正でき、説明責任も排除。また、OpenAIがDeepSeekによる知的財産権の侵害を訴えることは「OpenAIがAI生成コンテンツの所有権を事実上主張している」と指摘した。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「DeepSeekショックの音楽での最悪のシナリオ予想がMusic Allyのカンファレンスで語られていた。AI量子コンピューティングは著作物のスタイルの正確な再現や著作権検出を回避した訓練も可能で、AIエージェントはプロモーションするアーティストの選出や契約締結も可能。そうなるとレーベルだけでなく音楽配信事業者や著作権管理団体も機能を喪失し、著作権ビジネス自体が崩壊するとマッチチューンのヴィルジニー・ベルジェ氏は警告する。かつてファイル共有がオープンソース化とサーバーの遍在化で、発明したNapsterを潰しても取り締まりようがなくなったのと同じ現象が、AIでも起きるかもしれない」 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。