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UMGのグレンジCEO、英政府のAI規制緩和案に警鐘 「合理的なパブリックセーフガード」の必要性訴え

ビジネス 海外

英国で提案されているAIの規制緩和を巡り、米ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)のルシアン・グレンジ会長兼CEOは、著作権で保護された作品に対する「合理的なパブリックセーフガード(公的保護措置)」を求める声を大きくした。 

英政府は昨年12月、新たな著作権適用除外の下で、AI企業が著作権で保護された作品を使ってAIモデルを訓練できるようにすることを提案。クリエイティブな専門家や企業が反対しない限り、テック企業がAIモデルを訓練するために著作権で保護された素材を自由に使用できるようにするというもので、音楽業界を含めて抗議の声が上がっている。 

グレンジ氏は2月27日に公開されたタイムズ紙への寄稿の中で、AIの訓練やオプトアウト(データをAIの訓練用データとして提供しないことを選択できる機能)の要件について全く言及せず、代わりに、音楽における人間の創造性の中心的役割、変化に直面したときの業界の適応能力、英国の「世界をリードするクリエイティブ産業」を強調。その上で、「進歩」は決して必然的なものではなく、技術というものは大抵の場合、予期せぬ結果や道義的責任の放棄、あるいは指導者が合理的なパブリックセーフガードを確立できなかったことが原因で上手くいかなくなるものだとの見方を示した。 

「AIは社会を変革するだろうが、どのように社会を変革するかは私たち次第だ。だからこそ、政府、産業界、クリエーターは調和を図り、公正さと妥協を追い求め、責任あるAIへの道筋を描かなければならない」と述べている。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「AIの成長はデータが生命。AI企業側からすると著作権を気にしていたらいつまで経ってもAIが進歩せず、国策で著作権を気にせず進める某国のAIに差を付けられる一方だとなる。英政府はそこでAIが著作権で保護された作品を学習する場合、著作権者の了承なく進められる規制緩和を提案しているが、コンテンツ産業は猛反発。今回、音楽産業ではソニーに続き、ユニバーサルミュージックのグレンジCEOも反対の意見表明を出した。AI企業側は、やりたくないアーティストが後で抜けられるオプトアウト方式を導入すればいいじゃないかと言っているが、テキストと違い音楽は混ざりあったら分別不能でオプトアウトは空論とAI企業のエンジニア自身がカンファレンスで指摘している。とはいえアメリカの著名AIであっても、学習材料がインターネットそのものとなっているので事実上、著作権のあるコンテンツも学習材料になっている」

 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。