SXSW2025ショーケースに日本アーティスト8組が出演、SXSW音楽部門・総責任者 ジェームズ・マイナー氏「日本の音楽シーンは成長している」

Text by Megumi Hamura
米国時間3月11日、アメリカ・テキサス州オースティンの大型フェス「SXSW 2025」にて、日本のアーティストによるオフィシャルショーケース「TOKYO CALLING × INSPIRED BY TOKYO showcase supported by MUSIC WAY PROJECT」がMohawkで開催された。
「TOKYO CALLING」と「INSPIRED BY TOKYO」はこれまでにもSXSWでそれぞれのショーケースを開催してきたが、2つのステージを有するライブハウス・Mohawkで同時開催するのは今年が初となる。本ショーケースのサポートは、日本の音楽業界の主要5団体である日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモーターズ協会により設立された「一般社団法⼈カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)」とTOYOTA GROUPによる「MUSIC WAY PROJECT」によって行われた。

北村蕗 ©森リョータ
本会場の屋内ステージで行われたのは、日本やアジアの次世代アーティストをフューチャーする「INSPIRED BY TOKYO」。トップバッターを飾ったのは北村蕗だ。海外でのパフォーマンスはこの日が初めてと話す北村は、その緊張感が少し伝わりながらも「amaranthus」をしっとりと歌い上げた。ピアノ弾き語り、アンビエント、エレクトロニックが融合された心地良い音色で会場を包み込んだ。

VivaOla ©森リョータ
R&BシンガーソングライターのVivaOlaは、オルタナティブなR&Bの魅力が詰まったナンバーを披露し、メロウなムードを会場に届ける。“I’m still jetlagged, so my talking voice is very low, but I’m ready to go crush!(まだ時差ボケで話すと声が低いんだけど、騒ぐ準備はできてるから!)”と、オーディエンスと対話をするような自然なトークで会場との距離を縮めた。

luvis ©森リョータ
ネオン輝く東京の街が目に浮かぶ大人な空間から一変、京都出身のシンガーソングライター・luvisのサウンドが、オースティンに春の訪れを知らせるかのように爽やかな風を吹かせた。未発表曲「gimme!(jugem)」では、サビの“gimme! gimme! gimme!”のパートでオーディエンスの声をその場でレコーディングした。(後日リリース予定)

XAMIYA ©森リョータ
ドリーミーでエレクトロな楽曲が特徴のユニット・XAMIYAは、遊び心のある音作りで会場を楽しませる。東京のカワイイ文化を彷彿とさせるKAMIYAのドーリー系な衣装にカメラを向けるファンも多かった。“Let’s get crazy!(クレイジーになろう!)”と会場を煽ると、キラキラでカラフルなサウンドを響かせた。

打首獄門同好会 ©森リョータ
屋外ステージでは、日本最大級のライブサーキットイベント「TOKYO CALLING」の参加アーティストがバンドサウンドを鳴らした。先陣を切ったのは、打首獄門同好会だ。昨年、惜しくも出演キャンセルとなった悔やむ想いを晴らすかのように「筋肉マイフレンド」でドスのきいた重低音を放つと、オーディエンスは拳を上げてヘッドバンギングを始めた。猫好きの気持ちを代弁した楽曲「猫の惑星」や「布団の中から出たくない」など、日常生活をコミカルに表現する打首獄門同好会のステージは、爆音のみならず爆笑を誘った。

眉村ちあき ©森リョータ
二度目のSXSW出演となる眉村ちあきは、東京を舞台に今を精一杯生きる人々の葛藤や迷い、生き様をテーマにした「東京留守番電話ップ」や、ユニークなトラックメイクと彼女のハイトーンボイスが光る「インドのりんご屋さん」、さらにSXSW2025のために作ったスペシャルメドレーなど、渾身の7曲を披露。屋外ステージのSXSWの夜空に響く力強い歌声と独自の世界観を貫くパフォーマンスが圧巻だった。フロアからは“Chiaki Daisuki!(チアキ、ダイスキ!)”の声援も飛び交った。

Enfants ©森リョータ
オルタナティブロックバンド・EnfantsがサウンドチェックでRage Against the Machineの名曲をプレイすると、会場にいたロックファンたちが吸い寄せられるようにステージ近くへ。初めてのアメリカ公演にも関わらず、物怖じしない堂々とした佇まいで、全身全霊で歌うボーカル・松本大にカリスマ性を感じたファンも多いはずだ。

東京初期衝動 ©森リョータ
トリを務めたのは、昨年に続き2度目の出演となるガールズバンド・東京初期衝動だ。ギターボーカル・しーなちゃんが“Japanese famous!”と叫ぶと「メンチカツ」を披露。2曲目にして早くもフロアへ豪快にダイブし、パンク精神を見せつけた。一方で「恋セヨ乙女」では、恋する少女の青春を歌ったラブソングをチャーミングに歌う。このギャップこそがこのバンドの魅力であり、東京女子のエネルギーを感じさせるライブだった。
本ショーケースについて、SXSWの音楽部門の総責任者を務めるジェームズ・マイナー(VP of Music Festival at SXSW)はこう話す。“日本の音楽シーンは成長していて、多様性にも富んでいますよね。アメリカのオーディエンスと日本のオーディエンスは異なります。何度もSXSWに出演するアーティストたちは年々その違いを理解して、自信を高めているのが見受けられます。”
「TOKYO CALLING」と「INSPIRED BY TOKYO」が、日本の音楽のダイバーシティを世界に届けている。“継続は力なり”ということわざがあるように、このショーケースが毎年SXSWで開催されることで、海外のオーディエンスが日本の音楽に触れる入り口となり、着実にファンが増えていることは確かだ。
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