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チケット価格の高騰、ストリーミング時代が重大要因 専門家が指摘

ビジネス 海外

バークリー音楽大学で学生主導で発行されている「ミュージック・ビジネス・ジャーナル(MBJ)」に、コンサートチケットの価格高騰を洞察する記事が掲載された。専門家は主な原因として、インフレ、需給、なによりストリーミング時代の到来があると指摘している。 

ニューヨーク大学音楽ビジネス学部非常勤教授のクレイトン・デュラント氏は、結局のところ、ストリーミング時代によりライブ音楽が手の届かないものになってしまったと主張。ストリーミングの楽曲使用料がアーティストにもたらす収入は、フィジカルセールスよりもかなり少なく、独立系の音楽配信プラットフォームのDitto Musicによると、かつてiTunesで楽曲を購入する場合は1曲当たり約0.99ドルだったが、現在ではストリーミングが生み出す利益は平均約0.004ドルにとどまる。このため、多くのアーティストが利益面の損失をツアーで補おうとしていると分析した。 

ライブネーション・エンターテインメントでブッキング・コーディネーターを務めるチェルシー・デ・ジーザス氏は、ファンがツアー開催にかかる膨大な費用を過小評価しがちだとした上で、これにインフレが組み合わさり、コストが大幅に上昇したと説明。新型コロナ流行後にツアー需要が非常に高くなり、これに伴い労働者の請求額が多くなったことで、最終的に消費者に価格転嫁されていると述べた。 

需要の急増には「インターネット時代とSNSでの体験共有の投稿」も背景にあるとみている。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「世界的にチケット価格が高騰しているがインフレ以外にストリーミングの普及が原因とニューヨーク大学の教授が分析。自分としてはちょっと異論があるので時系列を整理すると、まずCD時代はライブのチケットはむしろ安く、特に新人のツアーはCDの宣伝という立ち位置だった。そこにネットが登場し、ファイル共有の普及でCDビジネスが崩壊。ネットの普及がモノ消費よりコト消費を重視する潮流を作ったこともあり、音楽ファンの可処分所得はライブへ向かった。さらに動画共有でシングルが事実上、合法的に無料化していくなか、サブスクの普及が始まる前からライブ売上への依存は始まり、チケット価格の上昇は起こっていた。そこへ米中デカップリングやウクライナ戦争でインフレが進みチケットはさらに高騰化。そうした経緯があるので、教授のいうようにチケット高騰はサブスクの再生単価が原因と言い切れない感じがする。ただ、サブスクは全体として音楽ソフト売上の復活をもたらしたものの、CDかそれ以上の売上を得たのはビッグアーティストやメガヒットを出したアーティストが中心で、大多数のミュージシャンはライブ売上への依存をさらに高めていったという点ではデュラント教授の指摘は当たっているのではないだろうか」

 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。