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Spotify、アーティストへの大金支払い主張も実際の成功者はほんの一部 英ガーディアン紙

ビジネス 海外

Spotifyは3月12日、ロイヤリティー支払いに関する年次レポート「Loud & Clear」の最新版を公表。音楽業界に支払った金額が2024年に過去最高の100億ドル(約1兆5,000万円)となり、創業から累計で約600億ドルに達したと明らかにしたが、英ガーディアン紙はこの100億ドルのうち、アーティストや作家に渡るのが一部であることなど、数字を精査する必要があると指摘した。 

同プラットフォームはまた、この100億ドルは「単一の小売業者が1年間に支払った金額を上回る」もので、「CD全盛期の最大手レコード店の10倍の貢献」だと主張。同紙はストリーミングの市場シェアが、世界の4強(Spotify、Apple Music、YouTube Music、Amazon Music)にほぼ集約されたことを物語っていると分析している。 

Spotifyから年間500万ドル以上の収入を得たアーティストは200組(10年前は1組だった)。上位70組はそれぞれ少なくとも1,000万ドルを売り上げている。1万位のアーティストの収入は13万1,000ドルと、10年前の3万4,000ドルから上昇。1,500組がそれぞれ100万ドル以上の印税を得た。 

同サービスに登録している「新進またはプロのレコーディング・アーティスト」は全世界で22万5,000組。つまり、年間で最低13万1,000ドルを稼ぐチャンスは全体の4.4%に、100万ドル以上を稼ぐチャンスは0.6%のみにあるということとなる。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「Spotifyは昨年、音楽業界へ支払った金額が過去最高の100億ドル(約1兆5,000万円)を突破。「CD全盛期の最大手レコード店の10倍の貢献」という。Spotifyで再生数1万位のアーティストの収入は10年前の3万4,000ドルから13万1,000ドルに上昇。ただ英ガーディアン誌は「この金額のすべてがアーティスト側へ行くわけではない」と釘を刺す。とはいえレーベルや音楽出版との印税契約で支払われるのはCD時代もそうだし、かつてと違いTuneCoreで印税率100%にしてTikTokやSNSで宣伝する道もある時代ではある。世界の音楽ソフト売上もCD全盛期と比べて35%増えている(219億→296億ドル IFPI)。ただその間、インフレが60%ほど進んでいるのでそれも合わせると足りない。すでに先進国でのサブスクの伸びは鈍化していることを考えると、音楽ソフト売上が真の意味でCD時代を超えるには、月額11ドルや月額1100円のビジネスモデルだけでは足りない。ここ数年、サブスクの高価格帯プランやスーパーファン・プラットフォームが音楽業界で取り沙汰されてきたのはそうした背景がある。ライブの成長もチケット単価の上昇に依存する年が世界的にずっと続いている。4年前に拙著で書いた予測と対策双方が現実化した印象だが、真の意味での解決案は2年前に出した方の本(THE NEXT BIG THING)に書いたつもりだ 

 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。