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ソニー・ミュージック、7.5万件のディープフェイク削除要請 英政府のAI規制緩和案に異議

ビジネス 海外

ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は、英国で提案されているAIの規制緩和に異議を唱え、既に7万5,000件以上の自社アーティストのコンテンツのディープフェイクを削除要請したことを明らかにした。 

英政府は昨年12月、新たな著作権適用除外の下、クリエイティブな専門家や企業が反対しない限り、テック企業がAIモデルを訓練するために著作権で保護された素材を自由に使用できるようにすることを提案。音楽業界を含め抗議の声が上がっている。  

フィナンシャル・タイムズ紙と英サンデー・タイムズ紙は、AIと著作権法に関する政府のコンサルテーション(意見募集制度)に対するSMEの提出書類を入手。その中でSMEは、提案されている著作権法の改正案は「急ぎすぎで、バランスが悪く、不可逆的」であり、英国のクリエイティブエコノミーに大損害を与える可能性があると警鐘を鳴らした。 

「不動産所有者は、資産を収用されないため、全ての資産について積極的に権利を主張する必要はないはずだ。別の言い方をすれば、政府は空き巣から守るために、家主に全ての所有物にタグ付けを要求するだろうか?」 

同社はまた、提案されているオプトアウト(データをAIの訓練用データとして提供しないことを選択できる機能)の仕組みは「実行不可能で幻想的」で、適切なタグ付けがされていない「インターネット上のどこかにある作品の複製1つ」でも悪用される可能性があると説明している。 

ソニー・ミュージックグループ(SMG)のロブ・ストリンガー会長は2月、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)のルシアン・グレンジ会長兼CEO、ワーナー・ミュージック・グループ(WMG)のロバート・キンセルCEOと共に、英政府の提案に反対する英デイリー・メール紙のキャンペーンに参加した。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「ユニバーサルミュージックに続きソニーミュージックも英政府のAI規制緩和に反対意見を提出。政府は著作権のある楽曲を許可無くAIが学習できるようにしようとしていて、不満があるアーティストは申請して学習対象から外してもらうオプトアウト型にしたがっているが、生成AIの場合、一度学習してしまえば混ざり合ってしまうのでオプトアウトは技術的にほとんど意味がないとAI企業内部にいたリード・エンジニアも指摘している。ただ、米トランプ政権も英政府と同様の規制緩和を進めようとしており、震源地というか決定の地は既にイギリスから離れた印象だ。残念ながら個別に筋が通っているかではなく対中国、国力のこととして議題が出ているので音楽産業は苦戦するだろう」 

 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。