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ユニバーサル ミュージック、新興市場のシェア拡大に数千億円の投資を計画

ビジネス 海外

ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)は3月6日の決算説明会で、これまで「大規模な海賊行為」が投資の妨げとなっていた新興市場をターゲットに、グローバルな買収に数十億ユーロ(数千億円)を投じる方針を明らかにした。 

同社は昨年、カタログやその他の買収に10億ユーロ(約1,600億円)を投資。「今後数年間も同様の投資レベル」を維持する計画だ。 

M&Aの優先順位は「消費パターンが有料サブスクリプションにシフトしていると思われる、発展しつつある地域への投資」。ルシアン・グレンジ会長兼CEOは、これらの地域には「数十年前に作られたレーベルの膨大なライブラリーとカタログがあることが多い」と話した。 

また、このM&A戦略の意思決定には、ライセンス・ストリーミングの世界的な拡大と市場レベルのデータの入手可能性が影響を与えたと説明。「われわれはDSPパートナーと手を携えて、地理的拡大と地元への才能の投資を進める」と述べた。 

音楽業界メディア「Complete Music Update(CMU)」は、UMGの積極的な買収戦略は、昨年12月に発表した米ダウンタウン・ミュージック・ホールディングス(DMH)の買収など、従来のレーベルモデルを超えて支配権を拡大するという明確なパターンを明らかにしていると指摘。この取引について、グレンジCEOは「弊社のインディーズ音楽コミュニティへのサービス提供能力を高めるとともに、音楽システム全体の保護強化と成長の手助けができる」と述べているが、インディーズ業界は猛反発。また、UMGが進めているアーティスト中心の原則などを含む「ストリーミング2.0」も、インディーズアーティストの収入減につながっていると非難を浴びている。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「ユニバーサルミュージックのグレンジCEOは高校中退で芸能スカウトになり、若い頃はパンク、ニューウェーブ、ヒップホップと次々とメガトレンドを捉えてビッグアーティストを育て、経営者に回ってからは弱小だったSpotifyを支援してサブスク時代を牽引。近年は生成AIにいち早く目を付け、投資・提携を進めた世界的ビジョナリーのひとりだ。そんな彼が成長目覚ましいグローバルサウスとインディーズ市場への投資を加速させている。新興諸国はこれまで海賊天国でグローバルメジャーの活動領域ではなかったが、先進国も一度は違法DLと動画共有で音楽=無料になったのをスマホとサブスクの普及で音楽にお金を払う時代になった。この流れがグローバルサウスでも起きつつあるという判断がひとつ。さらには、インディーズやDIYの売上成長率はメジャーのそれを超えているが、これまでビジネス的に網羅しにくかったのがディストリビューターの登場で話がかわってきたという判断だろう。ユニバが得意としてきたアメリカ市場はGDPと同じく世界の音楽売上のシェアを下げつつあり、さらに同国でSpotifyの成長が止まるなどサブスクブームで伸びていた先進国の音楽売上は限界を見せつつあるので、新たな成長領域への投資は経営的にも正しい。ただインディーズ業界からは反発を受けており、これはグレンジCEOが人気アーティスト・人気楽曲に有利な契約をSpotifyなどDSPと進めてきたことも起因している。大が小を飲み込んでいくのは資本主義の法則といえばそれまでだが、この流れが新興諸国・インディーズと先進国・メジャーシーンへの架け橋として機能するようになっていくことを願うほかない。とはいえ一業者だったディストリビューターがグローバルメジャーに匹敵する勢いを見せるなど、小が大に駆け上がる流れもまた自由主義経済の法則であり、今後もそうした新興勢力が出てくる事象は起き続けるだろう」

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。