広告・取材掲載

広告・取材掲載

「今のレーベルはクリエイティブ・コントロール放棄」 ローリングストーン誌が指摘

ビジネス 海外

ローリングストーン誌は3月7日、アーティストとレーベルの力関係の変遷に関する記事を掲載。今日のメジャー・レーベルは、有望なアーティストと配給契約を結ぶ一方で、5〜10年かけてアーティストを育てることをしなくなったことで、クリエイティブ・コントロールの多くを放棄していると指摘した。 

ストリーミングが音楽収入を激減させたことで、最近の主な収入源はツアーとシンクからもたらされる。CDの売り上げが大きく落ち込み、デジタル配信の収益が芳しくないため、大手レーベルはアプローチを変え、少なくともアーティストと原盤権を共有する必要に迫られている。 

このシフトは、アーティストにより独立性を与える半面、レーベル契約するためにはまず、Spotifyで一定数のリスナーを確保するなど、大衆に自分の実力を証明しなければならなくなった。 

従来の構造が崩れつつある今、パートナーシップ・モデルが、クリエイティビティーを所有するレーベルと、自らの発展を推進するアーティストとのギャップを埋めつつある。 

かつてレーベルには、デヴィッド・ゲフェン氏やクライヴ・デイヴィス氏のような、音楽と才能を見抜く優れた耳を持つ「キングメーカー」が在籍していたが、現在はそのような影響力はなくなり、残っているのは「レーベルを経営する金融マンだけだ」と同紙は主張している。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「以前、「今のレーベルはディストリビューターをやっているだけで才能を育成しておらず、マネージャーにしわ寄せが行っている」という名門アイランドレコード元CEOの記事を紹介して反響があったが今回はローリングストーン誌が「今のレーベルはクリエイティブ・コントロール放棄」と指摘。サブスクは音楽産業全体の売上回復をもたらしたものの、新人や中堅にとってはレーベルとの印税契約だけではCD時代よりも稼ぎにくく、結果として原盤権をレーベルとシェアすることで稼ぎを増やす方に向かっている。レーベルの責任が減った分、干渉が減るしアーティストの独立性が上がるといえば聞こえはいいが、宣伝や制作などレーベルが担ってきた仕事をアーティストやマネージャーが代わりにやらざるをえない結果、音楽活動へ専念する時間が減るのなら音楽にとってあまりいいことではない。さらに新人発掘もデータ主義になっており、アーティストはSpotifyやYouTube、TikTokなどで自分で実績を出して初めてレーベルは契約する時代に。発掘・育成ともにアーティスト側に依存していくなら「レーベルに残っているのは経営をやる金融マンだけ」になるという辛辣な批判が出るのも仕方がない。いわば歴史上、何度もあった技術の進歩がもたらす構造的な問題であり、こうした歪みが解決を求め、また新しい流れを作り、ポストサブスクの時代を進めていくことになるのだろう」 

 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。