YouTube、新興市場のエンタメ消費でリード ソーシャル性と柔軟なフォーマットが鍵

YouTubeが新興市場をリードしている。インドや南米ではモバイルファーストの文化がYouTubeの大きな成長をけん引し、従来のストリーミングサービスにはない方法でソーシャルメディアとエンターテインメントを融合させている。英国の音楽専門コンサルティング・ファームであるMIDiA Reserchは3月5日、このような実態を明らかにした。
インドで「エンタメ消費の王様」であるYouTubeと同程度利用されている他のプラットフォームはソーシャルメディアだけで、InstagramとWhatsAppが最も普及している。その原動力はデバイスで、欧米でテレビ、パソコン、スマートフォンの順で普及したのと異なり、インドで真に普及した最初のデバイスはスマホだった。
QRコードや決済アプリを介した少額取引も銀行振込などより一般的で、低コスト、または大部分が広告で賄われるオンライン体験がエンタメ消費を形作ってきたことから、モバイルファーストとサブスクリプションに消極的な国民性ができた。このため、従来の音楽ストリーミングが低迷する中、YouTubeや無料プレイのモバイルゲームやソーシャルアプリが繁栄しているという。
MIDiAは英語主導の欧米市場と他言語主導の新興市場とは全く異なる動きをすると指摘。また、インドとパキスタン間のように政治的・歴史的背景がビジネスを困難にする場合は、ドバイのような公平なビジネスの中心地が大きな役割を果たすと述べた。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「先進国でのサブスク/フェス・ブームが一段落し、音楽産業の次の成長領域としてグローバルサウス諸国がテーマになっている。その中心国であるインドはYouTube大国として音楽業界でも知られているが、記事にあるとおりテレビやパソコンの時代を通り越してスマホが最初に国民に普及したデバイスとなったので、先進国よりも一層、デジタルネイティブな音楽環境になっており、YouTubeが独自のデジタル文化を作っている。インドは「音楽はYouTubeで無料で聴くもの」というカルチャーになっているが先進国でも若年層を中心にそういう時代はあったし、今や彼らもサブスクを利用しているので、有料に消極的な時代がインドでもずっと続くことはないのではないかと私は見立てている。音楽でも世界はかように時代が入り組んでいるのが面白い」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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