ユニバーサルのダウンタウン・ミュージック買収計画、EUが調査に着手も

ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)による米ダウンタウン・ミュージック・ホールディングス(DMH)の買収計画について、EU(欧州連合)当局が調査に乗り出す可能性が出てきた。EU加盟国からの審査要請を受けたもので、調査を進めるかの判断は、4月後半に下される見通し。
世界各国の規制リスクを専門とする独立系報道機関MLexによると、欧州委員会に審査を要請したのはUMGが本社を置くオランダ。オーストリアも検討していたとされる。
この買収計画を巡っては、かねて世界各地の独立系音楽業界団体が猛反発しており、複数の国の競争当局に調査と阻止を求めてきた。欧州の「IMPALA」は、今回のオランダの動きを歓迎。英国の「AIM(Association of Independent Music)」も自国の競争当局への働きかけを強める方針を示している。
UMGのインディーズ音楽部門であるヴァージン・ミュージック・グループ(VMG)は昨年12月、7億7,500万ドル(約1,213億5,900万円)でDMHを買収することで合意したと発表。同社はB2Bディトリビューターの「FUGA」や、DIYアーティスト向けの「CD Baby」、音楽出版向け権利管理プラットフォーム「Songtrust」などの資産を保有している。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「TuneCoreなどレーベルを通さず音楽配信を可能にするディストリビューターの勢いは年々増しており、国によってはメジャーレーベルに匹敵する売上シェアを既に確立しているが、この時代に対応すべくユニバーサルミュージックは子会社のヴァージンが大手ディストリビューターFUGAを傘下に持つ米ダウンタウン・ミュージックを今年第二四半期に買収すると発表。しかし世界最大のメジャーレーベルによる買収にインディーズ業界から反発の声があがり、EU当局が調査の検討を始めた。調査決定は今月後半。かつて四大レーベルのEMIがソニーミュージックとユニバーサルミュージックに分割売却された際も、独禁法の観点から調査が入り、最終的にEU当局とアメリカ当局が承認した経緯がある。2012年にユニバがEMIのレーベル部門を、ソニーがEMIの音楽出版を買収で決まったが、ソニーは同年、ディストリビューターThe Orhchardも買収。ソニーの読み通りディストリビューター全盛の時代が近年到来し、ワーナーミュージックは昨年、ディストリビューター最大手のBelieve買収を試みるも失敗。ユニバーサルミュージックは前記のFUGA/ダウンタウン買収を発表したものの時代が変わり、調査の対象となっている。SNSとストリーミングへの対応で音楽出版は高価値なビジネスに変貌し、ディストリビューターも音楽サブスクの普及で脚光を浴びているが、13年前に時代を読み切ったソニーの決断は音楽業界で再評価されている。FUGAは日本でスペースシャワーネットワークと合同事業を進めている。」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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