YouTubeの広告料でアーティストが暮らすには1億9000万回の再生数が要るらしい「未来は音楽が連れてくる」連載第53回
レコード産業を覆うYouTubeのジレンマ
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▲テイラー・スウィフトの『Blank Space』。先日、Spoitifyから全楽曲を引き上げ、議論を巻き起こした。CDアルバム『1989』は2002年以来最多のセールスとなる初週128万枚を記録。YouTubeでの無料視聴も3倍弱に激増している
少し歴史から離れて、今の話をしよう。今年9月、バルセロナ。フューチャー・ミュージック・フォーラムでのことだ。
「YouTubeはプロモーションになってません」
英国最大のインディーズ・レーベル、ベガーズ・グループのデジタル部門を率いるサイモン・ウィーラーは講演でそう述べた(※1)。ベガーズにはアデル、ベック、レディオヘッドなどが所属している。
「なぜならリスナーはYouTubeで音楽を消費する。そこで終わりです」
保守的なCD派だからそう言っているのではない。英国音楽業界で、ストリーミング時代への転換を進めてきたオピニオン・リーダーのひとり。それがウィーラーだ。
実際、ベガーズ・グループではデジタル売上の40%を、Spotifyなどストリーミング売上が占めている。同業者の水準より高い数字だ。結果、レーベルのデジタル売上は「ロケットのように急騰した」と春先に語っている(※2)。そのウィーラーが「YouTubeは販売促進になっていない」というのだ。
IT業界(それなりに古い業界になった)の常識に反しているかもしれない。だが若年層の音楽リスナーにとっては、むしろこちらが常識だろう。彼らに訊けばわかる。YouTubeで気に入った曲を、購入する必要性はあるかと。広告が邪魔ならどうすればいいか、裏ワザも教えてくれるはずだ。
すでに日本でも統計が出ている(※3)。2012年、13〜29歳の層で、新曲を知ったきっかけはYouTubeなど動画共有が1位だ。新曲を買ったきっかけも動画共有が1位(21.6%)。プロモーションになっている、かに見える。
だが同時に、新曲をタダですませた理由も、動画共有(32%)が1位になっている。
特に「知らないアーティストの新曲を気に入った場合」が強烈だ。翌2013年の調査(※4)では、気に入った結果「CDを買う」(日本は85%超が物理売上)層が9.3%(前年9.7%)に対し、気に入っても「無料動画」ですませる層が29.7%(前年22.9%)と圧倒的になる。
YouTubeで好きなときに繰り返し聞く。買わなくても、これですむ。かつてのラジオと異なる点だ。ファイル共有が登場した時、新時代のラジオと呼ぶアーティストもいた。無料のmp3はCDとライブのプロモーションになっていると(二巻二章)。さすがに今、その話を聞くことはない。
音楽産業はファイル共有と戦ってきた。甲斐あって、日本での利用率は、最も利用意向が高い10代でも6.3%にまで下がった(※5)。だがその間も音楽を無料ですませる層は、我が国で拡大の一途を辿っている。2009年に29.4%だった無料聴取層、2013年には38.1%だ。
理由の1位は「今持っている音楽で満足」が39%(前年27% 「フリーズ層」と呼ばれる。次々回取り扱う)、2位は「買わなくてもYouTube等で好きなときに聴けるから」で34.2%(前年32%)。
気づいてみればファイル共有よりも、レーベルみずから音源を供給している動画共有サイトの方が「音楽を買わない理由」になっている。「無料ダウンロードで入手したから買わなかった」(10.6%)の3倍だ。「お金がないから」(27.6%)よりも多いくらいである。
YouTubeに音楽を出さないと、認知されず、消費が起こらない。だがYouTubeに載せるとそこで消費が終わってしまい、音楽を買わない理由にもなる。
これがレコード産業が嵌った「YouTubeのジレンマ」だ。
2012年には日米の若年層で、YouTubeは、No.1の音楽メディアとなっている。両国は世界のレコード産業売上を半ば占めている。英国など他の先進諸国でも、民衆の支持を得たYouTubeは、あまねく無敵だ。
「YouTubeのユーザー数は、有料ストリーミングの10倍。逆に収益はその10分の1です。楽曲使用料の安さだとワースト1はサウンドクラウドだが、YouTubeはその次に安いですね」
先のウィーザーはそう語っている(※6)。英国はデジタル売上が主流の国だ。彼は、英国でレーベル連合、AIMのデジタル部門責任者でもある。英国で第四のメジャーレーベルと呼ばれるAIMが体感している数字がこれと見てよいだろう。
2013年、世界の音楽産業でストリーミング売上が急伸した一方、ダウンロード売上が減少した。「SpotifyがiTunesを喰ったからだ」と語られている。北欧では先行してそれは起こっていたと、2年前に書いた。
トム・ヨークやテイラー・スウィフトなど、Spotifyから楽曲を引き上げるアーティストも出てきている。
だが規模から考えれば、YouTubeの影響はSpotifyの10倍以上あるだろう。そしてYouTubeは無料だ。
YouTubeで「Thom York full album」「Taylor Swift full album」と検索すればあっさりヒットする現実がある。投稿に削除が間に合わない。YouTubeの創業以来、Content IDの導入以降も続いている現象だ。
SpotifyとYouTube。無料から有料へのゲートウェイとして、どちらがより有効に機能しているか。それが本当の焦点だ。
「音楽はアートなのですから、『無料サービスに音楽を出したくない』とアーティストが言うなら、勿論それは尊重すべきです」
定額制ストリーミングのRdioを経営するアンソニー・ベイCEOは語る(※7)。
「だがその当人が『やった!YouTubeで100万再生』と言っているわけです。そして、定額制ストリーミングで100万回再生されたら『アーティストにはもっと支払うべき』と」
いずれにせよ、A&Rの現場がYouTubeから音楽を引き上げることはまずないだろう。それはほとんど、ウェブ世界から存在を消す行為に近いからだ。
現場ではそれが正解だ。
だが気をつけなければ、個々の正解が集まり、産業全体では合成の誤謬に陥る。Twitterやfacebookで必死にYouTubeへ誘導すれば、CDが売れる。このソーシャルメディア・マーケティングは、ハールメンの笛吹に化けかねない(※8)。
全ては「YouTubeでいつでも聴けるので、音楽を買わなくていい」層の推移にかかっている。プロモーションの甲斐あって、現状、その層は拡大傾向にある。それが世界のレコード産業の陥った「YouTubeのジレンマ」だ。
※1 http://musicindustryblog.wordpress.com/2014/09/22/the-three-things-streaming-needs-to-fix-next/
※2 http://musically.com/2014/04/07/beggars-group-recalibrates-50-streaming-payment-to-artists-and-attacks-youtube/
※3 http://www.riaj.or.jp/report/mediauser/pdf/softuser2012.pdf 13〜29歳でパーセントをくくる際、pp.3の数字から再構成した。
※4 http://www.riaj.or.jp/report/mediauser/pdf/softuser2013.pdf pp.25
※5 http://www.oricon.co.jp/news/2034770/full/
※6 https://twitter.com/Mark_Mulligan/status/512882810575945728
※7 http://www.theguardian.com/technology/2014/nov/10/rdio-spotify-taylor-swift-streaming
※8 ライブなどの動画でイベントに集客し、そこからCDへつなげる場合は全く問題ない
ミュージシャンが「YouTubeで稼ぐ」という幻想
OK Goが圧巻の新作ビデオ『I won’t let you down』を公開してひと月が経った。YouTubeバンドの先駆者、その称号にふさわしい傑作だった。YouTubeを通じて驚きと感動が世界に広がり、再生数は既に1400万回を超えた。
YouTubeでミュージシャンは稼げるのか。
その問いに答えるには、OK Goのマネージャーであるジェイミー・キッドマンほどふさわしい人物は他に少ないだろう。
「YouTubeは再生数に応じて広告売上が発生しますが、あまりにも安くて、道端で小銭を探すようなものです。ビジネスモデルにならないですね」
ITメディアを駆使するバンド・マネージャーの代表として、音楽テクノロジー会議(SF Music Tech)で、キッドマンはそう答えた(※1)。
※[590万円(500万ドル)を590万円(5万ドル)に訂正 2014.12.8]
確かにYouTubeは安い。「安い安い」と批判を受けているSpotifyでも、再生あたりでYouTubeの4〜5倍はミュージシャン側に支払っている(※2)。Spotifyが0.6〜0.84セント/再生(0.7〜1円 118円/ドル換算)に対し、YouTubeは0.175セント/再生(0.2円)だ。
しかもこれは、レーベルが受け取る金額である。レーベルからアーティストへは、契約時の印税率によって可変するが、作詞作曲、歌唱などを合わせてだいたい15%くらいが分配されると見ておこう。
そうするとアーティストは1再生あたり…
Spoitfyなら0.09〜0.126セント(0.11〜0.15円)、YouTubeなら0.026セント(0.03円)を得る。
これで暮らすにはどれくらいの再生数が要るだろうか。5万ドル(590万円)の収入を得るには、Spotifyなら平均4800万再生(0.7¢換算)。YouTubeなら1億9000万再生が必要となる。
なお2013年、邦楽ビデオで再生数No.1だったきゃりーぱみゅぱみゅの『にんじゃりばんばん』はYouTubeで現在、3600万再生だ。
OK Goの公式チャンネルにある音楽ビデオすべてを合わせても、1億9000万再生には届かない。OK Goは4人組バンドなので、メンバーひとりあたり5万ドル(590万円)稼ぐには、YouTubeなら7億6000万再生は必要になる。
音楽ビデオは、YouTubeで一本あたりの再生数が最も稼げるキラーコンテンツだ。YouTube歴代Top100ビデオのうち、実に97本が音楽ビデオである(※3)。だが、7億6000万再生を超えたビデオは、2014年11月時点で、世界でたった6本しか無い。
ただ、再生数だけで評するのはいささか不公平になる。
たとえばSpotifyのユーザーだったら、お気に入りのプレイリストは何十回だって聴く。お気に入りアルバムなら13曲のうち、10曲を20回ずつぐらいは聴くだろう。Spotifyでアルバムをリリースすれば、ファンひとりあたり200再生はしてくれることになる(Spotify側の想定より辛めに見積もった。なおBillboardチャートでは1500再生でCDアルバム1枚分としている)。
YouTubeなら、アルバムから2〜3曲が音楽ビデオになって掲載される。それをひとりあたり3回から20回、再生してくれるとしよう(3回からはじめるのは、YouTubeを音楽プレイヤーのように使わない層も多いことを勘案したからだ)。
すると1年に1枚アルバムを出すアーティストなら、YouTubeでリスナーあたり9〜60回の再生を見立てることができる。
以上を考慮したのが下の図だ。
※[590万円(500万ドル)を590万円(5万ドル)に訂正 2014.12.8]
アーティストがアルバムを出したときに、590万円(5万ドル)の収入を得るには、CDならだいたい4万人、iTunesなら8万人、Spotifyなら24万人、YouTubeなら320〜2100万人が必要になる。
Spotifyは4人に1人が有料会員だ。つまりSpotifyでは、上記24万人を4で割った6万人が実質、アーティストを支えていることになる。 ちょうどCDの1.5倍だ。「低い」と揶揄されるSpotifyだが、有料会員のアーティストへの支払いはiTunesより実質高いことになる[24万÷4が8万になっていたのを訂正。2014.12.5]。Spotifyにも広告収入があるので(2012年度で総売上の15%)、これを勘案すると、iTunesより若干良いといえるかもしれない。
YouTubeがここまで人数が要るのは、無料モデルしかないからだ。『YouTube バンド』の世界的先駆者、OK Go自身が「YouTubeの売上は、ビジネスモデルに使えない」と考えていた理由が納得いただけたろうか。
※1 http://www.nme.com/news/ok-go/62159
※2 YouTubeの広告売上/再生は2014年のSXSWで使われた下記資料から。本来は、動画についたCMのスポンサーが支払った広告料によってばらつきがある。Googleの取り分45%を差し引いた後、再生数で分割・分配される http://thetrichordist.com/2014/03/11/streaming-price-index-now-with-youtube-pay-rates-sxsw-sxsw/
Spotifyの楽曲使用料/再生は下記から。0.6〜0.84セントだが、0.7で試算した。Spotifyでは、再生数が多い曲だとボーナス加算があり、再生あたりの使用料も高くなる http://consequenceofsound.net/2013/12/spotify-pays-0-006-0-0084-per-song-stream-according-to-new-data/
※3 https://www.youtube.com/playlist?list=PL8A83124F1D79BD4F
YouTuberと音楽ビデオの決定的な違い。それは毎日更新
音楽から離れるならば、YouTubeの広告売上でしっかり稼いでいる人たちもいる。
世界No.1のYouTuber、ピューディーパイ(PewDiePie)はゲーム実況とおもちゃの開封レビューで総再生数69億ビュー。これに先の広告料/再生をかけると14億円超。運営期間55ヶ月で平均すると年収3億円になる。
国内No.1のYouTuber、ヒカキン(HIKAKIN)は日本語圏の縛りで、桁が一つ落ちる。しかし4つのチャンネルを運営し、総再生数は13億ビューを超える。先の広告料/再生をかけると2億7000万円[2014.12.26 PewDiePieの14億円がHIKAKINで繰り返されていたのを修正]。運営期間40ヶ月で平均すると年収8000万円超えとなる。国内No.7の大学生、はじめしゃちょーで2億5500万ビュー、運営期間40ヶ月を年収にすると平均2300万円だ(※1)。
▲0.44円/再生は、比較基準の統一のため、0.175セントを55%で割って、118円/ドル換算して逆算した
大人気のYouTuberだが、一本あたりの再生数で見ると、音楽ビデオと比べると1〜2桁落ちる。一本あたり数十万から数百万回だ。人気の音楽ビデオなら再生数は一千万単位、場合によっては一本あたり1億回以上となる。
だが、音楽ビデオは年に2〜3本出せればいい方だ。素材となる音楽はシングル曲なので、アルバム1枚あたり2〜3曲、ビデオ制作費も一本あたり数百万円から数千万円かかる。
一方、YouTuberたちは毎日更新で、年に数百本のビデオをアップできる。制作費も一、ゲーム実況や商品レビューは格安ですむ。
毎日更新と年3本。これがYouTuberと音楽ビデオの決定的な違いである。
さらにアーティストは売上を、Googleとだけでなくレーベルともレベニューシェアしなければならない。デビュー時にレーベルから初期投資を受けているからだ。
世間の印象と異なり、レコード産業はアーティストにかなり投資している。2013年、世界のレコード産業売上は161億ドル(約1兆9000億円)だったが、うち43億ドル(約5100億円)をA&Rとマーケティングに回している(※2)。
他の産業におけるR&D費に相当するA&R費は、レコード産業売上の15.6%を占める。たとえばIT産業のR&D費は、売上の9.9%程度にとどまっている。
このようにレーベルとアーティストの関係は、ヴェンチャーファンドと起業家の関係に近い。YouTubeの広告売上をレーベルとアーティストでシェアするのは、こういった背景がある。
結果、YouTubeの広告売上で2000万円を稼ぐには…
YouTuberなら、27万再生/本と現時的だが、メジャーアーティストなら、2億1500万再生/本も必要となる。
YouTubeで2億1500万の再生数に到達している音楽ビデオは、約150本ほどしかない(※2)。
いま、Youtuberがミュージシャンを超えようとしている。YouTubeの世界No.1チャンネルには、ユニバーサル、ソニー、EMIの音楽ビデオを一手に引き受けるVEVOが長らく君臨してきた。今年8月、そのVEVOが二位に転落した(※4)。
かわりに王座についたのが、世界中の人気YouTuberたちと契約したMCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)、メイカー・スタジオだった。最近、コンテンツ産業のキング、ディズニー社が、50億ドル(約590億円)で買収した。
YouTuber人気に目をつけて急成長している新しいビジネス・モデルがこのMCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)だ。
世界中の人気YouTuberが運営するチャンネルと契約し、年百億超の再生数を確保する[数百億を百億超に訂正。2014.12.5]。このテレビ級の数字を利用して、スポンサーと直接契約し、YouTuberにはネイティブ広告の仕事を紹介する。毎日更新に苦労する彼らの制作をサポートもする。
MCNのビジネスモデルは、動画共有時代の芸能プロダクションといえそうだ。
「テレビは10年でYouTubeに敗れる」
動画共有が誕生した9年前、そんな予言もあった。そろそろ10年が経つが、YouTubeの広告売上は、テレビのたった2.7%に留まっている。大方の予想に反して、世界ではテレビの広告売上は今も成長中だ(※5)。だが、YouTubeにも着実に新種のタレントが育ち、独自の芸能界が生まれつつある。
歴史は繰り返すのだろう。かつてラジオが放送の時代を切り開いた時、音楽がそれを先導した。やがてテレビの時代となり、芸能界が放送の中心になっていった。
1950年代、芸能界に沸くテレビ人気に対抗すべく、ラジオはイノヴェーションを起こし、ラジオDJが誕生した。そしてDJのレコメンデーションがロックの時代をつくりあげる(第一巻二章)。その結果、かつて「無料で音楽が聴き放題」のラジオ登場で壊滅状態に陥った米レコード産業に(第一巻一章)、20年越しで黄金時代が再来した。
芸能界と音楽業界は近くて遠い。芸能人の稼ぎ方を、ミュージシャンが真似しようとしても詮無いように、工夫も無しに、YouTuberをそのまま真似ることはできない。
※1 すべて2014年11月28日時点での数字。商品レビューなどでの広告主との直接取引等を除く
※2 http://www.ifpi.org/news/record-labels-invest-us-4-3-billion-in-AR-and-marketing
※3 https://www.youtube.com/playlist?list=PLirAqAtl_h2r5g8xGajEwdXd3x1sZh8hC
※4 http://www.comscore.com/jpn/Insights/Market-Rankings/comScore-Releases-August-2014-US-Online-Video-Rankings
※5 youtube; http://www.forbes.com/sites/timworstall/2013/12/12/googles-youtube-ad-revenues-may-hit-5-6-billion-in-2013/
TV; http://www.plunkettresearch.com/advertising-branding-market-research/industry-statistics
Recording industry ; http://www.ifpi.org/facts-and-stats.php
それでもミュージシャンがYouTubeから稼ぐ方法
ミュージシャンがYouTubeで稼ぐには相応の創意工夫が要る。先駆者、OK Goのマネージャーがとってきた方法を次回、見ていこう。
合わせて新たに始まった定額制ストリーミング、You Tube Music Keyについても触れる予定だ。
結論から述べれば、「YouTubeが音楽を救う」未来はありうるが、新しいMusic Keyよりもっと先へ、イノヴェーションを押し進めていかねばならない。
音楽産業は他のコンテンツ産業に先立って、所有モデルからアクセスモデルへの大転換に入った。歴史的転換の始まりからすでに6年が経つが、人類はまだ答えを出す途上にある。
そう筆者は考えている。
なおYouTubeの課題と克服なのだが、実は第二巻の三章にて「ビット経済がもたらす『無料』を克服する道」というテーマですでに挑んでいる。そちらもご一読いただければ幸いだ。
>>次の記事 【連載第54回 ミュージシャンがYouTubeで稼ぐには、YouTubeを変革するのが一番だ】
著者プロフィール
榎本 幹朗(えのもと・みきろう)
1974年、東京都生まれ。音楽配信の専門家。作家。京都精華大学講師。上智大学英文科中退。在学中からウェブ、映像の制作活動を続ける。2000年に音楽TV局スペースシャワーネットワークの子会社に入社し制作ディレクターに。ライブやフェスの同時送信を毎週手がけ、草創期から音楽ストリーミングの専門家となった。2003年ライブ時代を予見しチケット会社ぴあに移籍後、2005年YouTubeの登場とPandoraの人工知能に衝撃を受け独立。
2012年より『未来は音楽を連れてくる』を連載・刊行している。Spotify、Pandoraをドキュメンタリーとインフォグラフィックの技法を使って詳細に描き、 日本の音楽業界に新しいビジネスモデル、アクセスモデルを提示することになった。 音楽の産業史に詳しく、ラジオの登場でアメリカのレコード産業売上が25分の1になった歴史とインターネット登場時の類似点 や、ソニーやアップルが世界の音楽産業に与えた歴史的影響 を紹介し、経済界にも反響を得た。
寄稿先はYahoo!ニュース、Wired、文藝春秋、プレジデント、NewsPicksなど。取材協力は朝日新聞、Bloomberg、週刊ダイヤモンドなど。ゲスト出演はNHK、テレビ朝日、日本テレビなど。音楽配信、音楽レーベル、オーディオメーカー、広告代理店を顧客に持つコンサルタントとしても活動している 。
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