EMI買収で業界はどう変化するか、ローリング・ストーン誌が分析
【ユニバーサルとソニーがEMIの各部門を買収した事で業界が変わるか】
11月11日、ユニバーサルミュージックはEMIミュージックのレコード部門を、ソニーは音楽出版部門のEMI音楽出版を買収した。これにより音楽業界はどう変わるのだろうか。アメリカの音楽専門誌ローリング・ストーンが分析し解説している。
90年代末まで世界のレコード業界は6大メジャーと言われていた。
ユニバーサルミュージック(MCAレコードから改名)
ソニーミュージック
BMGミュージック
ワーナーミュージック
ポリグラム
EMIミュージック
それがユニバーサルミュージックはポリグラムとEMIミュージックを買収、ソニーミュージックはBMGミュージックを買収し、結果2011年時点で3大メジャーになった。ウィスキーの名門シーグラムの御曹司エドガー・ブロンフマンは格闘しもがき続けたが、ワーナーミュージックは1社たりとも買収や合併が出来ずに今日に至る。2011年11月現在のメジャーは以下だ。
ユニバーサルミュージック
ソニーミュージック
ワーナーミュージック
ローリング・ストーン誌は音楽業界人への取材で、「崩壊が始まる。買収や合併が起きるたびに繰り返される。メジャーに所属するアーティストはリストラされる。アーティストとそのマネージャーは、自分たちがそのレコード会社で、どのくらい優先順位が高いのかに悩み恐怖になる」と書く。
ユニバーサルミュージックがEMIミュージックを買収後、まず始まるのはスタッフの解雇だ。両社に共通するバックヤード・スタッフ(総務や経理や最も人員が多い営業)が対象になる。だがそれよりはアーティストの解雇が優先課題だ。多額の印税前渡し金と宣伝費のカットだ。利益が出る、又は会社にとってのブランドを維持出来るアーティストは残すが、それ以外は契約を終了する。
EMIミュージックを買収した事によって全世界の市場占有率が36%にも達するユニバーサルミュージックは、「アーティストの解雇」が最重要課題だ。EMIミュージックのロジャー・ファクソン最高経営責任者は買収後、「最終的には避けられないが、当面従業員の解雇はしない」とEMIミュージック社員あてのメモを書いた。
メジャーのレコード会社に嫌気して去る大物バンドもいる。レディオヘッドやパール・ジャムだ。巨大な組織の中で、自分たちの言いたい事が言えない状態になる事は避けたい。
今回のユニバーサルミュージックのEMIミュージック買収騒ぎの裏で、ソニーミュージックの最高経営責任者ダグ・モリスの動きが凄い。73歳のダグ・モリスはソニーミュージックでビジネス人生を終えるつもりだ。ソニーに来る前はユニバーサルミュージックの最高経営責任者だったが親会社のヴィヴェンディ(フランス)に、「いらない」と言われた。
ダグ・モリスは10%も離された市場占有率を「ひっくり返す」つもりだ。まずはケイティ・ペリーをスーパースターにした敏腕プロデューサー、ドクター・ルークと契約、新レーベル「キモサベ・レコード」を立ち上げる。目標はユニバーサルミュージックのジミーアイオヴィンが率いる「インタースコープ・レコード」だ。レディー・ガガやエミネムがいる。
またアメリカで最もレコードを売るカントリー・シンガー、テイラー・スウィフトが所属する「ビッグ・マシーン・レコード」を買収する噂がある。それに加え今年のアメリカでのレコード売り上げナンバー2のリル・ウェインとナンバー3のドレイクが所属するレコード会社「ヤング・マネー/キャッシュ・マネー」の買収計画もある。「ヤング・マネー /キャッシュ・マネー」はダグ・モリスがユニバーサルミュージック時代に契約した。まもなくその契約期間が終了する。これらが実行出来たら、少なくともアメリカではユニバーサルミュージックと肩を並べる事が可能になる。
ワーナーミュージックだけが先が見えない。
ローリング・ストーン誌は業界人のコメントとして、「EMI音楽出版を買収したソニーが最もかしこい」と書いた。レコードも音楽出版も買収作業が完了するのにこの先10カ月はかかるとも書いている。
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