広告・取材掲載

米ソニー、エンタメ事業を再編し一本化

コラム 高橋裕二の洋楽天国

先週末、新聞ニューヨーク・ポストやロサンゼルス・タイムズ、経済新聞ウォール・ストリート・ジャーナルや業界誌ビルボードやヒッツ等が一斉に、米国ソニー(Sony Corporation of America)のトップにソニーピクチャーズ共同会長兼最高経営責任者のマイケル・リントン(52歳)が就任すると報じた。

それによると、今週4月1日にソニーの社長兼最高経営責任者に就任する平井一夫と、会長兼最高経営責任者だったハワード・ストリンガーの取締役会議長就任に連動する人事だ。米国ソニーはエンタテインメント部門の「映画制作」、「TV番組制作」、「レコード音楽制作」、「音楽著作権の管理」等を一本化し、ソニーピクチャーズのマイケル・リントン共同会長兼最高経営責任者がこのエンタテインメント部門を統括する。今週日本でも発表されるそうだ。

アメリカにあるハードウェアの「エレクトロニクス部門」と家庭用ゲーム機「プレイステーション部門」は東京のソニー本社へリポートする事になるそうだ(この部門にマイケル・リントンは関与しないという事だ)。これにより実質上米国ソニーではハードとソフトが分離した。というよりも独立性の高いソフトウェア(エンタテインメント/娯楽事業)の会社になると言うことだ。米各紙とも、平井一夫社長兼最高経営責任者は東京に陣取って、TVを含むソニーの赤字部門である「エレクトロニクス」の再建に集中するだろうと報じている。

Musicman オススメBlog【高橋裕二の洋楽天国】

1960年生まれのマイケル・リントンはハーバード・ビジネス・スクールを卒業後、世界的な金融機関クレディ・スイス・ファースト・ボストンからキャリアーをスタート。その後AOL(アメリカン・オンライン)欧州の最高経営責任者や出版最大手ピアソン傘下のペンギン・グループ(ペンギンブックスを発行している)最高経営責任者を経てディズニー映画の傘下「ハリウッド・ピクチャーズ」の社長に就任。2004年ソニーのハワード・ストリンガーの誘いを受けてソニーピクチャーズの共同会長兼最高経営者に就任した。平井一夫より一つ上の52歳だ。4カ国語(英語、フランス語、オランダ語、ドイツ語)を話すそうだ。ニューヨーク・ポスト紙によるとソニーピクチャーズの2010年の市場占有率は映画業界でほぼビリの5位から、2011年はパラマウント・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザースに次いで3位になった。

今回の組織の再編とリポート(報告)の変更により、マイケル・リントンは平井一夫に報告する。この事はエンタテインメント部門全てをマイケル・リントンに任せ、平井は報告を受ければいいという事だ。ソニーミュージックのレコード部門の最高経営責任者ダグ・モリス(73歳)はハワード・ストリンガーへの報告をマイケル・リントンに変更すればいい。EMIミュージックの音楽著作権部門を担当する音楽出版社ソニー/ATVのマーティン・バンディアー(70歳)は先週、ソニーと4年間という長期の会長兼最高経営責任者の契約を結んだばかり。マーティン・バンディアーもマイケル・リントンに報告する事になる。

ダグもマーティンも以前とあまり変わりはないだろうと米国業界関係者。ダグ・モリスは昨年(2011年)7月、ユニバーサルミュージックから移ってきた。結果、本人の経営手腕ではないが、アデルの空前のヒットや今年に入ってのブルース・スプリングスティーンやワン・ダイレクションのヒットで、1月から12週間、他社にビルボード・アルバム・チャートの1位を明け渡した事がない。1月から直近までの市場占有率は31.2%になる。昨年までトップだったユニバーサルミュージックは28.7%で後塵を拝している。今回の人事で、音楽ビジネスには詳しくないが映画を含むソフトウェアに詳しいマイケル・リントンは、レコードはダグ・モリスに、音楽出版はマーティン・バンディアーに全幅の信頼を寄せるだろうと業界関係者は見ている。

因みに2011年度通期(2011年1月3日〜2012年1月1日)のアメリのレコード市場占有率(ニールセン・サウンドスキャン調べ)。カッコ内は前年(2010年)。

1位) ユニバーサルミュージック 29.85%(30.84%)
2位) ソニーミュージック 29.28%(27.95%)
3位) ワーナーミュージック 19.13%(20.01%)
4位) EMIミュージック 9.62%(10.18%)
5位) その他(インディーズ) 12.11%(11.02%)

特にレコード部門はダグ・モリスのもと、主レーベルのコロンビア・レコードはハワード・ストリンガーの弟、ロブ・ストリンガーがアデルやブルース・スプリングスティーン他で絶好調だし、この先「Xファクター」の審査員もやっているL.A.リードのエピック・レコードからはクリス・ルネやメラニー・アマーロといった大型新人のアルバムが予定されている。また主要部門の一つ、RCAからはクリス・ブラウン、アッシャー、アリシア・キーズ、ピンク、ケシャ、R・ケリー、モニカやキャリー・アンダーウッド等の超強力盤の発売が目白押しだ。加えてカントリー系の大型独立レコード会社の買収の噂もある。

ところでEMIミュージックのレコード部門を買収したユニバーサルミュージックだが、買収を認めるかどうかを審査している欧州委員会は3月23日にある種の結果を発表する事になっていたが、結局審査が「フェーズ2」に入る(フェーズ2に入ると買収を認める可能性が増すそうだが)と発表した。この先また90日間ほど精査しなければならないという話もある。独禁法に抵触しない買収はなかなか難しいようだ。

記事提供元:Musicman オススメBlog【高橋裕二の洋楽天国】

関連タグ

関連タグはありません