欧州委員会 ソニーのEMI音楽出版買収を承認
先週19日、欧州委員会はソニーから提出されていたEMI音楽出版の買収について条件付きで承認した。新聞ニューヨーク・タイムズ他が報じた。
昨年(2011年)11月、米国ソニーの主導のもと、複数の企業や個人の投資家がコンソーシアムを組み落札した価格は約1694億円(当時1$77円換算)、ユニバーサルミュージックがEMIミュージックのレコード部門を落札した金額(1463億円)よりも高かった。レコードに比べ音楽著作権の価値は年々高くなっている。
買収後は米国ソニーの音楽出版部門であるSony/ATVが運営にあたる事になっている。Sony/ATVはソニーが75%、マイケル・ジャクソンの遺産管理団体が25%の株を保有する。Sony/ATVはビートルズの主要楽曲をほぼ所有する音楽出版社「ノーザン・ソングス」を含む超優良な音楽出版社。EMI音楽出版はモータウン・レコードのヒット曲も持っている。モータウン・レコードの創設者ベリー・ゴーディーが作った音楽出版社ジョベット(Jobete)音楽出版で、この出版社には勿論ジャクソン5のヒット曲「ABC」や「帰ってほしいの」他多数のモータウン・レコードのヒット曲がある。
今回の買収承認と今後のアメリカでの買収承認で、ソニーは音楽著作権を管理する音楽出版社として業界のトップになる。
ヨーロッパでは日本の独占禁止法にあたる「欧州連合競争法」に抵触する恐れがあるので、Sony/ATVは保有する音楽出版のヴァージンUK、ヴァージン・ヨーロッパやフェイマス・ミュージックUKの売却を決めた。これらの音楽出版社にはオジー・オズボーン、ベン・ハーパー、ロビー・ウィリアムスやレニー・クラヴィッツ等の作品がある。
因縁めいた話だが、現Sony/ATVの会長兼最高経営責任者はマーティン・バンディアー。友人と作った音楽出版社SBKをEMI音楽出版に売却。その後17年間EMI音楽出版の最高経営責任者だった。2007年、Sony/ATVの最高経営責任者に就任。今回のEMI音楽出版買収となる。EMI音楽出版は自分が育て上げたという自負がある。当然EMI音楽出版の隅から隅まで知っている。
昨年11月の買収発表当時、既存のEMI音楽出版の制作(A&R)スタッフは削減しないと言っていた。しかし先週、買収の為の資金を提供した投資家に向けて、今後1年間で152人を削減、2年目は174人を削減、トータルで326人(全スタッフの60%)の削減案を提示したという。そのうち制作スタッフが何人かというのは発表になっていない。
アメリカでの買収承認は間もなく発表になるものと思われる。これに続き、ユニバーサルミュージックによるEMIミュージックのレコード部門の欧州での買収も条件付きで認められる事になるのだろう。
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