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米ワーナーのリオ・コーエン会長兼CEOが退任

コラム 高橋裕二の洋楽天国

月曜日(9月24日)、ワーナーミュージックは同社のレコード部門の会長兼最高経営責任者であるリオ・コーエン氏(52歳)が9月30日で退任すると発表した。先週EMIミュージックのロジャー・ファクソン会長兼最高経営責任者が辞任を発表したばかり。音楽業界人は誰も驚いていない。業界誌が報じている。

ウクライナ人の大富豪レン・ブラヴァトニクがエドガー・ブロンフマンを含む投資会社からワーナーミュージックを昨年(2011年)5月に買収して約1年半。買収直後からリオ・コーエンとはギクシャクしていた。ポイントは役員報酬のバカ高さ。それらも含めブラヴァトニクはコスト・カットの為に、その業界では有名な「リストラ屋」のステファン・クーパーを最高財務責任者に引っぱってきた。

リオ・コーエンは業界の超大物制作マン。エアロスミスの「ウォーク・ディス・ウェイ」をサンプリングして大ヒットとなったRun-D.M.C.を擁するラッシュ音楽事務所から音楽業界に入った。1988年、デフ・ジャム・レコードに参加。2004年、ワーナーミュージックのエドガー・ブロンフマン会長に誘われてワーナーに入り、シーロー・グリーン、フロー・ライダー、ブラック・キーズ、マイケル・ブーブレ、ジェイムス・ブラント、ニッケルバック、パラモア、ジョシュ・グローバン他数多くのアーティストを育てた。

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最近「ウィー・アー・ヤング」がヒットしたfun.が所属するレコード会社「フュエルド・バイ・ラーメン」はジョン・ジャニックが1996年に設立したインディーズ。このレーベルからフォール・アウト・ボーイ、パニック・アット・ディスコ、そしてパラモアが育つ。2005年、リオ・コーエンはジョン・ジャニックの音楽センスを見込み「フュエルド・バイ・ラーメン」の株式を取得してワーナーの子会社にした。オルタナティブ系のロック・アーティストを多く契約し育て上げたジョン・ジャニックだが、レン・ブラヴァトニクやステファン・クーパーのやり方に反発、この6月フュエルド・バイ・ラーメン社長を辞任、ユニバーサルミュージックのインタースコープ・レコード社長に就任した。

今回のリオ・コーエンの退任でワーナーミュージックの幹部制作マンの動向を業界人は見守っている。リオ・コーエンがユニバーサルミュージックやソニーミュージックの幹部に移る事は考えられない。しかしユニバーサルやソニーがリオ・コーエンに出資し、新しいレコード会社を作らせる可能性は大きい。リオ・コーエンも自分の懐を痛めずに「お山の大将」でいたい。現ソニーミュージックのダグ・モリス会長兼最高経営責任者はユニバーサルミュージック時代、デフ・ジャム・レコードのトップだったリオ・コーエンの上司。ダグ・モリスにしてみれば、EMIミュージック買収でシェアが拡大するユニバーサルに対抗したい。尚かつ昨年ユニバーサルミュージックを追い出されたダグ・モリスは、後釜の現ユニバーサルミュージックの会長であるルシアン・グレンジには勝ちたい。

EMIミュージックのロジャー・ファクソン会長兼最高経営責任者は9月28日で辞任すると先週の金曜日に明らかにした。今回のリオ・コーエンの退任で、ワーナーミュージック社内では、リオ・コーエンにリポートしていた幹部はステファン・クーパー最高財務責任者にリポートする事となっているようだが、間もなくリポートはワーナーミュージック会長兼最高経営責任者に就任するであろうロジャー・ファクソンになるのだろう。リオ・コーエンとロジャー・ファクソン、レン・ブラヴァトニクの賭は吉と出るか凶と出るか。吉と出るきはあまりしないが。アメリカの音楽業界。好きなやつとしか仕事はしない。

記事提供元:Musicman オススメBlog【高橋裕二の洋楽天国】

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