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ソニー/ATVと米アップルが楽曲使用料交渉で衝突

コラム 高橋裕二の洋楽天国

先週金曜日(9月28日)、新聞ニューヨーク・ポストが書いた記事が波紋を読んでいる。曰く「印税騒ぎがiPhone 5のミュージック・ストリーミング(サービス)を沈没させた」。

ソニー傘下の音楽出版社「ソニー/ATV」とアップルが、楽曲使用料の料率でドタンバになっても合意出来なかったという。アップルが提示した使用料は、従来のインターネット・ラジオ・サービス会社が音楽出版社に支払っていた、1曲のストリーミングにつき約1円程度だった。「ソニー/ATV」はそれよりも高い金額を提示したという。

「ソニー/ATV」はEMI音楽出版を買収したばかり。200万曲を管理する世界で最大の音楽出版社だ。ビートルズの主要作品からマイケル・ジャクソン、ビーチ・ボーイズやモータウン・レコードのヒット曲他数多くの楽曲があり、最近ではテイラー・スウィフトやワン・ダイレクションのカタログも含む。

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ソニーとアップルが揉めたのには背景がある。従来であればアップルはインターネット・ラジオのiRadioをスタートさせる場合二つの方法があった。一つは音楽出版社(今回のケースはソニー/ATV)と直接使用料の料率を決める。例えば最近人気のSpotifyがそうだ。もう一つのやり方は直接音楽出版社と交渉せず、音楽著作権使用料を集めてくれるBMIやASCAPという実演権団体と包括契約を締結する。アメリカのラジオ局やTV局はこれらの実演権団体と契約し年間の売り上げの数パーセントを支払う。いちいち個別の音楽出版社との契約は煩雑だ。BMIやASCAPは集めたお金を音楽出版社に振り分ける。

「ソニー/ATV」は既存のラジオ局が何をかけたか正確には分からないが、BMIやASCAPからはまとまったお金(包括契約による)が入ってきていた。しかしインターネット・ラジオではどの曲がどうストリーミングされたか全てわかるはず。BMIもASCAPも非営利団体なので利益は取らないが、音楽出版社には自分達の経費を差し引いて支払う。そこで「ソニー/ATV」はストリーミング・サービスのインターネット・ラジオ等とは今後BMIやASCAPを通さない事にした。来年(2013年)1月から実行される。

アップルが「iPhone」でインターネット・ラジオ・サービスをやりたいのなら、相変わらず「ソニー/ATV」と直接交渉し、他の音楽出版社分はBMIやASCAPに任せるかもしれない。しかしソニーのとったやり方に、ユニバーサルミュージックの音楽出版部門とワーナーミュージックの音楽出版部門「ワーナー/チャペル」は同調するかもしれない。勿論それら3大メジャーのレコード会社とも原盤権の使用にかんする契約は別途結ばなければならない。

今回の交渉劇、9月6日のウォール・ストリート・ジャーナル紙によるアップル版インターネット・ラジオ・サービスのリーク記事はどちらから出た情報だろうが、ニューヨーク・ポストのクレアー・アトキンソン記者は、「ソニー/ATVの使用拒否はシリコン・バレーの極めて稀な敗北」と書いた。

デジタル・ダウンロードではアマゾンを寄せ付けず(グーグル・ミュージックは失速中)、インターネット・ラジオで覇権を競うパンドラとiHeartRadioに挑む。総じて今回のアメリカのメディアは、親会社のソニーのスマートフォン政策やウォークマンについては全く触れていない。

記事提供元:Musicman オススメBlog【高橋裕二の洋楽天国】

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