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米インターネット・ラジオ公平法案が廃案に

コラム 高橋裕二の洋楽天国

インターネット・ラジオでレコードを使う際の使用料低減を盛り込んだ「インターネット・ラジオ公平法(Internet Radio Fairness Act)」案がひっそりと廃案になった。全米レコード芸術科学アカデミーが1月3日、会員に宛てた覚え書きで明らかになった。

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全米レコード芸術科学アカデミーの会員はミュージシャンやプロデューサーやレコード・エンジニアーで構成されている。一般的にはグラミー賞を決定する団体として有名だ。その会長であるニール・ポートナウの覚え書きは以下だ。

「11月に開かれた公聴会で当方から参加した名誉顧問のジミー・ジャムが情熱的に説得力のある意見を述べた。演奏家や作家やレコーディングに関わる人達に正しい報酬が必要だと。その上今現在は支払われていないAMとFMラジオからの使用料支払いにも言及した。あなた方会員はワシントンへ声も届けた。議員達は話を聞いてくれて、そして私達は勝った。委員会は終了し、『インターネット・ラジオ公平法(Internet Radio Fairness Act)』案はなくなった。しかしこれで終わったわけではない。また新しい法案が提出される。その時も私達の権利を主張する。あなた方が今回キャンペーンに参加してくれた事に感謝し、おめでとうと言いたい。2013年が良い年でありますように」

ジェイソン・チャヘッツ議員(共和党)とジャレド・ポリス議員(民主党)が提案した法案は合衆国112議会の期間内(2011年1月から2013年1月3日)で時間切れとなり評決もされなかった為、自動的に廃案になった。音楽業界誌ビルボードは「法案は冬眠に入った」と書いた。今回の法案のポイントはインターネット・ラジオ最大手のパンドラ他の意見だ。今払っている使用料を85%減額にしろと。

アメリカでは音楽(レコード)を使ってビジネスをしても、既存のラジオ局はレコード会社やアーティストに一銭も使用料を支払わない。作詞作曲家と音楽出版社には著作権使用料は払っている。衛星ラジオ局とケーブル・ラジオ局は売り上げに対して使用料をレコード会社に払っている。パンドラの主張は、パンドラや他のインターネット・ラジオが使用料について、レコード会社への支払いがあまりにも高いから下げてくれというもの。

衛星ラジオ局のシリウスは売り上げの8%をレコード会社に支払っているが、パンドラは売り上げの50%を支払っている。パンドラはビジネスを立ち上げる際にレコード会社に有利な条件を提示し、インターネット・ラジオでの成功を夢みた。レコード会社がどうして50%以上もの使用料を提案し、パンドラが応じたかは分からない。85%減額してもらったらシリウスの8%に並ぶ。

パンドラによる音楽使用料の公平性を問う裏には色々ある。特にアップルだ。アップルにとってみれば先行するパンドラが議会に働きかけ「公平法」が成立したら大ラッキーだ。アップルもインターネット・ラジオ・サービスを始める予定だからだ。大手のレコード会社と音楽使用料の件で交渉している。アップルとしてはパンドラの様な驚く程気前のいい使用料を払う気は無い。大手レコード会社には、「パンドラから当社のiTunesに来て買ってもらうよりは、当社のインターネット・ラジオからiTunesに来てもらうほうが消費者にとってはとても便利。iTunesでレコードが売れるのだから安い使用料でお願いします」という事だ。法案が廃案になったのでアップルのサービスは遅れるかもしれない。

注:ジミー・ジャムはプロデューサー・チーム、ジャム&ルイスのジャム。

記事提供元:Musicman オススメBlog【高橋裕二の洋楽天国】

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