米ネットラジオ「iHeartRadio」登録ユーザー3000万人突破
全米で拡がるパーソナライズドラジオの世界。米国のネットラジオアプリ「iHeartRadio」が登録ユーザー数3000万人を突破 – 米国ラジオリスナーの現状をまとめてみた
iHeartRadio
米国のネットラジオ「iHeartRadio」は、登録ユーザー数が3000万人を突破したと発表しました。iHeartRadioはネットラジオの分野では、最大規模のPandora Radioに次ぐ第二勢力。 運営するのは、全米最大のラジオ・ネットワーク「Clear Channel Communicarions (クリア・チャンネル・コミュニケーションズ)」です。
iHeartRadioとは?
iHeartRadioは無料で1500局以上のラジオ局が聴けたり、カスタマイズ可能なアーティストラジオが生成できる、パーソナル聴き放題音楽サービスです。iOS、Androidアプリの他にウェブ、Kindle、Xbox、Roku、車載システムなどでも配信しています。iHeartRadioモバイルアプリはこれまでに1億7500万回以上ダウンロードされ、サービスの月間ユニークユーザー数は6000万人にのぼります。
http://facebook.com/iHeartRadio
iHeartRadioのはデジタルサービスとしてInstagramの次に最も早く成長しているサービスです。2012年5月に登録者数1000万人に達した後わずか6ヶ月後の2012年11月には2000万人を突破、登録者数3000万人の獲得はわずか2年未満で達成するという、急成長を見せています。
iHeartRadio
またiHeartRadioでラジオをストリーミング再生するためには、サービスに登録する必要もないため、実際のユーザー数は3000万人をいうに超えていると言われています。
米国最大のネットラジオ「Pandora Radio」は登録者数が2億人を突破、4月のアクティブユーザー数が7000万人以上存在する巨大なサービスです。iHeartRadioのユーザー規模はPandoraには全く及ばないものの、成長速度とアクティブユーザー度合いを見ると、パーソナライズド・オンラインラジオは音楽業界の中でも大きく成長しているビジネスで、PandoraとiHeartRadioが市場を拡大していると言えます。
クリア・チャンネルはMTV設立者の一人、ボブ・ピットマンがCEOを務めるラジオネットワークで、全米150都市以上で850局以上のラジオを運営しています。
米国ラジオのリスナー実態
「アメリカはラジオ文化」という話はよく聞きますが、それがどの程度を占めているのかといった規模感は日本ではあまり知られていないと思います。
クリア・チャンネルはアメリカのラジオ視聴者を対象に現在のラジオに関する調査「State of Listening in America」の結果を発表しています。13歳から54歳からのリスナー1000人を対象にした調査では、米国でどのくらいラジオが魅力ある日常的な音楽メディアであることが分かります。調査対象となった13歳から17歳の94%、18歳から24歳の89%がラジオを週に1度は聴くと回答しており、このことからもラジオが音楽と接する機会を提供するプラットフォームとして機能する可能性を示しています。クリア・チャンネル独自の調査なので、ラジオ業界がよく見えるような回答になっていますが、これを見るとなぜパーソナライズドラジオがアメリカで成長しているか、ラジオとどのくらい接触しているかが、よく見えるのではないでしょうか。
State of Listening in America
92%:最低週1回はラジオを聴く
69%:音楽ストリーミングサービスはラジオを代替しない
80%:ラジオは新しいアーティストや楽曲を見つけるキッカケになる
82%:車に乗って一番先にすることはラジオをオンにすること
66%:好きなラジオ局は自分のパーソナリティを反映していると思う
78%:ラジオはコミュニティに影響するパワーを持っている
72%:ラジオはテレビよりもコミュニティ性が強い
85%:現在のラジオは過去に比べアクセスしやすくなっている
78%:どの場所にいてもラジオを聴いている
72%:ラジオはインターネットよりも「人間性」があると感じる
65%:ラジオはテレビよりもパーソナルな体験
この調査を見ると、リスナーにとってラジオは音楽を知るキッカケを提供するメディアとして機能を保っています。また、リスナーは「人間性」や「パーソナル性」など、ネットサービスにはない魅力をラジオに感じていることも注目です。PandoraやiHeartRadioのように好きなアーティストを軸にしたパーソナルなラジオを生成するフィーチャーや、オンラインで好きなラジオを聴けるフィーチャーが一般に普及したことによって、パーソナライズドラジオは従来のラジオにはない「セレンディピティ」による音楽との出会いや、DJやリスナー同士とSNSを使ったつながりをリスナーへ理想的な形で提供できていると考えられます。パーソナライズドラジオは音楽発見の楽しみを提案してることが大きな成長につながっています。その結果が、大きなリスナー人口やラジオ視聴の日常化と継続性、更なるイノベーションの追求へと結びついています。日常AppleやSpotifyなどの音楽サービスもラジオの分野に本格参入しようとしていることからも、今後もリスナーと音楽をつなぐサービスとして重要な役割を担うと予想されます。
日本の音楽シーンで音楽への関心を高めるためには、Pandoraのレコメンデーション・エンジンなど技術的な側面の追求も必要でしょう。しかしそれよりも大事なことは、人と音楽のつながりを作り継続的に関与するユーザーフレンドリーな環境を作る議論をするほうが重要だと思います。
■記事元:http://jaykogami.com/2013/06/2168.html
記事提供:All Digital Music(by Jay Kogami)
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ジェイ・コウガミ Profile:
海外のデジタル音楽情報をテーマに、音楽ストリーミングサービスやその他の音楽サービス、デジタル音楽トレンドの動向、クリエイティブなデジタルPR事例、企業の音楽マーケティングなどをいち早く日本で紹介。
高校から米国オレゴン州ポートランドで生活。高校でネットラジオ、大学で初期のナップスター(Napster)やP2Pファイル共有サービスを体験、以降音楽コンテンツと人のコミュニケーションに関心を持つ。
オレゴン大学在籍中は、地元のコミュニティラジオ局「KWVA」でDJとプログラム・ディレクターを3年弱担当。
これまで「ベストギア」(徳間書店)での取材、音響雑誌「Gaudio」(共同通信社)での連載、オンライン音楽ニュースサイト「コラム・スピン」などで執筆。
またインディーズ・アーティストのオンラインプロモーションを手伝っている。
音楽好きとテクノロジー好きに最新のデジタル音楽情報と、新しい音楽体験を届けるべく日々奮闘中。音楽業界に、新しい音楽体験情報を届ける。現在プロジェクトチーム「soundtribe」で活動中。
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