グラミーアーティストが経済紙へ記事を寄稿、音楽の未来を語る
テイラー・スウィフトがWSJの寄稿記事で語った音楽の未来へのアドバイス
7日、ウォール・ストリート・ジャーナルにグラミー賞受賞アーティストのテイラー・スウィフトが寄稿した記事が、ネットで話題になっています。
For Taylor Swift, the Future of Music Is a Love Story – WSJ
「音楽業界は20年後、30年後、50年後はどうなっているのかしら?」という書き出しで始まるこの寄稿記事で、テイラー・スウィフトは現代の音楽のあり方、アートとしての音楽の価値、YouTubeジェネレーションのファンとのつながりなど、彼女が見て経験した音楽ビジネスの現状をさまざまな視点で的確に分析し、音楽の未来は明るくエキサイティングだと強く語っています。
テイラーはまず自分が音楽ビジネスには熱狂的なほど楽観主義であることを強調し、音楽業界が死にゆく業界ではなく、活気づいている業界であると主張します。
その中で減少している音楽売上に触れ、自分はそうは思わないと反論します。
「私は、アルバムの価値、そして世の中にリリースされる音楽の経済的価値は、今もこれからもアーティストが精魂を傾けて作った作品で決まると思います。」
さらににテイラーは、近年プロモーションや特典目的で音楽を無償で配布するメジャーアーティストに対して苦言を呈しています。
「音楽はアートで、アートは大切で貴重なものです。大切で貴重なものには価値があります。
価値があるものはお金を払うに値するべきものです。音楽は無料ではないと思います。個々のアーティストとレーベルはいつか、アルバムの価格帯を決定できるようになるでしょう。自分たちの作品やアートを過小評価しないでほしいと願っています。」
アルバムとファンとの関係
テイラーは減少するアルバム売上に触れて、
「人はまだアルバムを買っています。でも心臓を矢で射抜かれたような感覚を覚えたアルバムや、前向きな気持にしてくれるアルバム、一人じゃないんだという気持ちにしてくれるアルバムだけを買っているのです。20年前と違って今はマルチ・プラチナム級のアルバムを作ることは出来ません。しかし今の状況から、アーティストは挑戦し刺激を受けるべきです。」
とアルバムをむやみに買い漁るのではなく、本当に共感するアルバムにだけファンは耳を傾けると言います。
そして現代では音楽とアーティストのつながりは、いくつかの段階に分かれると言い、その中でも本当に好きなアーティストとの出会いが理想的であると説明します。
「『求めていた答え』のようなアーティストと出会うことがあります。私たちは彼らのアルバムを彼らが引退するまで大切に聴き、彼らの音楽を子供達や孫にも聴かせるでしょう。アーティストとして、これが自分たちのファンと築きたい理想的な関係です。将来もこのような関係が続く可能性があります。」
YouTube世代のファンとつながる
テイラーはファンとつながりを作るために、驚きの要素の必要性を説きます。
「私たちが暮らすYouTube世代では、ライブに来るのはすでにライブ映像をオンラインで見たことのある人ばかりだと認識して私は毎晩ステージに立っています。そんな彼らがまだ見たことのないものを見せるために、私は大勢のスペシャルゲストを呼んで一緒にヒット曲を歌います。私たちの世代は、つまらなくなったらテレビのチャンネルを変えたり、我慢できなくなったら本を最後のページから読んだりする環境で育ちました。
私たちは予想していなかった楽しいことに、驚かされ続けたいのです。次世代のアーティストもお客さんをあっと言わせ続ける創造的な方法を考え続けて欲しいと思います。」
またテイラーは、現代の音楽業界で衰退していっているトレンドを面白く説明します。
「iPhoneにフロントカメラがついてから、サインを求められることが全くありません。今の少年少女にとっての記念は、セルフィー(自画撮り)なんです。これが新しい通貨で、Instagramで何人のフォロワーがいるかと同じです」
ファンのチカラ
テイラーは15歳の時にレコード契約を結んだ時の話を持ち出し、ファンとのコミュニケーションが現代の音楽ビジネスでいかに重要かを主張します。
「2005年に初めてレコードレーベルと契約の話をした時、私がファンとMyspaceで直接コミュニケーションしていることをLabelに説明したした。将来的には、すでにファンを持っているアーティストがレコード契約を結べると思う」
また現代の音楽ではジャンル分けがどんどん曖昧になり、ラジオでオンエアされるヒット曲はいくつかのジャンルを組み合わせた曲であると言います。
「今、音楽はものすごくエキサイティングで、アーティストが追求できるクリエイティブな道に制限はありません。現代の音楽の世界では、冒険することに価値が生まれます。進化することは受け入れられるだけでなく、歓迎されます。本当のリスクは、リスクを恐れて何も挑戦しないことです。」
アーティスト自らがソーシャルメディアやYouTubeなどテクノロジーが音楽に大きく影響を与えていることを理解した上で、アーティスト視点で音楽ビジネスを議論する、エッセイを書き、「音楽の未来は明るい」と発言したことで、ウォール・ストリート・ジャーナルでは多くのコメントが寄せられ、海外メディアでも取り上げられています。
アルバムやサイン/セルフィーなど、音楽の楽しみ方は変化しても、音楽はアートであり、アートにはお金を支払うべきという主張は、YouTubeやストリーミングで聴ける時代になり、ライブへ大きく集客できるようになった今の音楽ビジネスにおいて、長い目で見ると絶対に必要な考えで共感を受けます。
テイラー・スウィフトのエッセイは、断固として今の音楽ビジネスを守ることでもなく、急進的に変化させようと言っているのではなく、ファンが存在して成り立っている音楽ビジネスであることを認識し、ファンの望むカタチに適応する必要性を、全てのアーティストやレーベルに問いかけています。減少するアルバム売上や、動画を見るファンの増加。アーティストやレーベルが柔軟なスタンスでいられるなら、これから20年も30年もファンに聴いてもらえるアーティストになれるのかもしれません。
■記事元:http://jaykogami.com/2014/07/8247.html
記事提供:All Digital Music
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