米音楽界で加速する「フリーミアム」への不満
アップルで決着がつくか、定額制音楽ストリーミング・サービスと米レコード業界
アップルが毎年6月に開催している開発者向けイベントのWWDC(ワールドワイド・ デベロッパーズ・カンファレンス)で詳細が発表されるかもしれない、アップルの定額制音楽ストリーミング・サービス。発表迄にあと2ヶ月しかない。成功させたいプロジェクトの関係者や、それを潰したい関係者や、それを利用して自分達に都合がいいようにしたい関係者がメディアへ情報をリークする。
2015年が米音楽業界にとっての記念すべき年になるのは間違いないだろう。ここに来て、高級紙ニューヨーク・タイムズから、株価を左右するウォール・ストリートの投資家情報誌から、音楽業界を代表する過激な業界誌ヒッツやイギリスの経済新聞フィナンシャル・タイムズ迄がストリーミング・サービスの記事を書き、レコード業界や音楽出版社や、ミュージシャンやアーティスト、弁護士やアーティスト・マネージャーが固唾をのんでいる。
アメリカ・レコード協会が3月20日に発表したデータ。2014年の米レコード業界の売り上げ内訳は、デジタル・ダウンロード(Digital Downloads)売り上げが37%、実物のCD等(Physical)が32%、ストリーミング売り上げが27%だった。ストリーミング売り上げは、パンドラ他のインターネット・ラジオやシリウスがやっている衛星ラジオからの音源使用料が大きく寄与している。
音楽業界はパンドラ他インターネット・ラジオへの不満よりは、スポティファイの定額制音楽ストリーミング・サービスに不満が爆発している。スポティファイが提示したビジネス・モデルの「フリーミアム」は良くないとの不満だ。ある条件では無料で音楽が聴けるファンを、アーティストにとってお金が入ってくる「有料会員」に誘導していないとスポティファイのやりかたを非難している。アメリカで最もレコードが売れるというテイラー・スウィフトはスポティファイに音源を提供していない。そのテイラー・スウィフトが今週、ラッパーのジェイ・Zが買収したスウェーデンの定額制音楽ストリーミング・サービスの「タイダル」には「1989」以外の音源を提供した。タイダルのやり方が「広告収入による無料」ではなく、「有料会員からの会費」だからという理由だ。
ニューヨーク・タイムズ紙が注目しているのは、ビーツ・ミュージックのジミー・アイオヴィンの動向だが、実際はナイン・インチ・ネイルズのフロントマンであるトレント・レズナーに注目している。理論派ミュージシャンであり、映画「ソーシャル・ネットワーク」の音楽を担当し、アカデミー作曲賞を受賞した。音楽も映像もデジタルも全てに精通している。2013年にはフジ・ロックで演奏した。今はジミー・アイオヴィンの片腕だ。アップルの新しいストリーミング・サービスを仕切る。
業界誌ヒッツによる3人の「ばっさり評」
ジミー・アイオヴィン(アップル/ビーツ・ミュージック)-音楽業界期待の星 無料の弁当はやらない
ダニエル・エク(スポティファイ)-ストックホルム症候群 時は彼に味方しない
ジェイ・Z(スーパー投資家)-テーブルに何も残さない事で有名
あと2ヶ月で、今後の世界の音楽業界を左右するビジネス・モデルが決まるといっても過言ではない。無料で「無制限」に音楽が聴ける時代の終焉が来るかもしれない。ちなみにスポティファイの主要株主に「ナップスター」のショーン・パーカーがいる。タダで金を稼ぐ天才。
洋楽天国
Major labels pressure Spotify to restrict free users (NME.COM)
Universal takes on Spotify freemium model (Financial Times)
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