Pandora、チケット販売スタートアップ Ticketfly 買収
PandoraのTicketfly買収は音楽配信とチケット販売の理想形か?
世界最大のネットラジオ「Pandora」は、コンサートのチケット情報をチケット販売プラットフォームのスタートアップ「Ticketfly」の買収を発表しました。買収額は4億5000万ドル。
Pandoraはモバイル・デバイスやPCで、リスナーの好きなアーティストやアルバムのデータを分析してパーソナル化したネットラジオとして音楽を配信するストリーミングサービスで、登録ユーザー数2億5000万人以上、アクティブユーザー8000万人を誇る巨大な音楽サービスです。楽曲ライセンスの問題で、米国(とオーストラリア、ニュジーランド)のみでしか利用できない限定的なサービスとなっているため、日本やその他の国からはアクセスができません。しかしアメリカでは(広告が入るが)無料で聴けるPandoraをスマートフォンや車内で使うユーザーが多いため、Apple MusicやSpotify、Google Play Musicといった定額制音楽配信とは違う音楽ストリーミングサービスとして定着しています。
Ticketflyは2014年、9万以上のイベントでチケット1600万枚を売り上げて、年間の売上高は5億ドル以上を記録しました。Ticketflyのチケット販売システムは600以上のサイトに導入され、毎月「ticketfly.com」やパートナーのサイトを訪れる人は1400万人を超えるほど、参入が難しいチケット販売の分野において成長を続けている企業です。
PandoraはTicketflyの買収でアーティストやプロモーター向けにPandoraのプラットフォームを活用したチケット販売のためのマーケティングとイベント・ディスカバリー機能を提供していくと言います。Pandoraには月間約8000万人のアクティブなユーザーが集まってくるほど、巨大な音楽ストリーミングサービスとして認知されているため、Ticketfly買収によってチケットというストリーミングからライブ音楽/イベントの導線をつくることが可能になります。
PandoraのCEO、ブライアン・マクアンドリュース(Brian McAndrews)は、今回の買収について次のように答えています。
Pandoraにとってこの買収はゲームチェンジャーです。そしてさらに重要なことは、音楽にとってゲームチェンジャーです。過去10年以上、私達は音楽ストリーミングの歴史上、大規模かつ最もアクティブなオーディエンスを獲得してきました。Ticketflyが加わることで、私達は音楽の作り手とファンを繋ぐ最も効果的なマーケットプレイスとして、熱心な音楽ファンにはさらなる興奮を、アーティストにはチケットからの収益を実現します。
Ticketfly買収が示す最大のポイントは、Pandoraとアーティストの関係向上の可能性が広がったことと言えます。アーティストはPandoraを使って熱心に音楽を聴いてくれるファンとつながるツールやデータの利用以外に、ターゲットに適したチケット販売が実現できるようになるはずです。
Pandoraが公表したデータによれば、2014年の北米コンサート・チケット販売市場は前年から22%成長して、62億ドル規模の市場になるまでに成長しています。しかし音楽好きは、好きなアーティストがライブを開催することやツアー情報を発表したことに気付かないことが多く、北米ではライブ情報の訴求不足が主な原因で40%のチケットが未購入のままになっているようです。
最近になりPandoraはチケット販売に進出してきました。過去にはローリング・ストーンズのチケット55,000枚をわずか24時間で完売させ、インディーズアーティストOdeszaのチケットは25,000枚が購入され、その高い需要のためツアーには追加公演が発表されたほどでした。
そのためTicketflyの買収はPandoraにチケット販売からの売り上げをもたらすと同時に、Ticketflyにピンポイントでチケット情報を見せるためのユーザーデータや広告ツールにPandoraやNext Big Soundを通じてアクセスできるため、チケット販売最大手Ticketmasterとは更なる差別化が可能になってきます。Ticketmasterは販売するチケット数は市場最大ですが、モバイルやユーザーデータと連動したチケット販売など技術的な面を差別化としたチケット販売のスタートアップが多く存在しています。
昨年Pandoraはアーティストがファンとのインタラクションを促進するためのツール「Artist Marketing Platform」(AMP)を発表し、今年にはアーティストからファンに向けてオーディオメッセージを送れる「Artist Audio Messages」の提供も始めました。さらには、オンライン/ソーシャル上でアーティストの楽曲やファンの行動に関する情報解析を専門とするソリューション企業「Next Big Sound」も買収し、アーティストがファンとつながるためのプロモーション用ツールを拡充する戦略を続けており、Ticketflyの買収もその一環となります。
Pandoraは2015年Q2(4-6月期)の売上は、前年比30%増加した2億8560万ドル、広告売上も30%増の2億3090万ドルと、好調な広告事業が同社を支えています。しかし2015年1-6月期では売上高5億1630万ドルに対し、巨額のロイヤリティ料の支払いさらにはマーケティング・コストによって純損失6410万ドルを計上し赤字経営が続いています。
■記事元:http://jaykogami.com/2015/10/12156.html
記事提供:All Digital Music
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