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2015年に注目された、テクノロジーを使った音楽マーケティング6選

コラム All Digital Music

360度動画、VR、GoPro。広告業界メディアが選ぶ、2015年に注目されたテクノロジーを使った音楽マーケティング2015年に注目されたテクノロジーを使った音楽マーケティング

広告・マーケティング・メディア業界で定番のメディア「Ad Age」が、2015年に話題を集めた音楽マーケティングの事例を紹介しています。

AdAgeでは、特にクリエイティブで効果の高かった施策でアーティストや作品のプロモーションを成功させた事例を選び、企業のマーケティング担当者や代理店の担当者にも参考となる施策として紹介されています。

1.アデル:「25」プロモーション

2011年にリリースしたアルバム「21」が世界的な成功を収め現代のスターとなったイギリス人アーティストのアデルは、その後音楽業界から姿を消します。そして2015年秋、最新アルバム「25」のリリースと共に再びファンやメディアの前に帰ってきました。

アルバムのプロモーション戦略では、まずテレビや雑誌などマスメディアをフルに使い、英BBCの1時間特集番組をはじめ、米NBCで最も影響力のあるコメディ番組「Saturday Night Live」やトークショー「ジミー・ファロン」そして朝のトークショー「TODAY」へ立て続けに出演して、カムバックをファンに印象付けることに成功します。
 

またNBCはクリスマス直前にニューヨークのRadio City Music Hallでのコンサートを1時間のコンサートスペシャルとして放送、ファンやメディアの注目を高め、直後のクリスマスシーズンに向けた話題作りを行います。

アルバムの先行シングル「Hello」の動画は、24時間の再生回数がYouTubeで史上2番目に早く100万再生に到達した動画となると同時に、Vevoで24時間の再生回数が2770万再生を超えて、過去最高記録を打ち立てます。
 

AdAgeでは、2つの戦術に注目しています。一つ目はアルバムリリース2日前にニューヨークで開催した無料のコンサート。運営側はこのコンサートに応募したファンのメールアドレス数百万件を集めて、プロモーション関連の情報配信に活用しています。二つ目は、BBCが主催したアデルのそっくりさんコンテストにアデル本人が参加した動画でネットの話題を集めました。

2. ドレイク:「Hotline」

ラッパーのドレイクがリリースした「Hotline Bling」に大きなインパクトを残せませんでしたが、の直後に公開された動画がネット上で話題となり、チャート2位に押し上げました。

Hotline Blingの成功には、PVの中でドレイクが踊る印象的なダンスがインターネットミームとして広がったことが挙げられます。さまざまなパロディやGIF、マッシュアップが作られてTwitterやFacebook、Vineで共有される結果となり、動画が爆発的に伝播する現象が起きたことが楽曲の成功へとつながり(再生回数は累計3億回以上)、ネットで共有されるコンテンツの要素(色、デザイン、動き、ファッションなど)の重要性を示しています。

3. Action Bronson:Boiler Room GoPro ライブセット

世界中からエレクトロニック・ミュージックアーティストを招きライブやDJセットを配信する音楽サイト「Boiler Room」と、アメリカ人MCのAction Bronsonは、GoProと協力し、MC本人の頭とマイクにGoProを取り付けたままの形で撮影されたライブ動画を配信、アーティストとファンの視点に変化を与える臨場感溢れるコンテンツを作っています。

4. The Weeknd:「The Hills」バーチャルリアリティ体験

テクノロジー業界でこの数年開発が進んでいるAR,VR技術が音楽の世界にもやって来ました。

カナダ人シンガーThe Weekndは、VR映像専門スタジオUnited Realitiesの映像監督Nabil、そしてGoProとApple Musicと連携して、「The Hills」のリミックスのための4K VR動画を制作、公式動画としてYouTubeで公開しました。

United Realitiesでは、GoProと協力してThe Weendの他にもFOALSの「Mountain At My Gates」のVR動画を作成しています。

5. テイラー・スウィフト:#Squadgoals

テイラー・スウィフトがファッションモデルや女優、ミュージシャン、Instagramerの友人と結成した「Squad」(チーム「テイラー・スウィフト」的な友人グループ)で、「Bad Blood」のPVや「1989」世界ツアー、さらにはMTVビデオミュージックアワードにグループで出演したことが話題を集めました。グループ中心で行動することで女性同士のつながりとサポートを示すことを目指すテイラー・スウィフトの考えは、多くの女性友達のインスピレーションと云われる反面、彼女たちのやり方に対する反対意見も多数沸き起こり、SNSで大きな論争を生みだしています。

6. AJR:「Living Room」インタラクティブ動画

AJR:「Living Room」インタラクティブ動画

音楽の動画も見るだけの世界から、参加する世界にインタラクティブ動画制作スタジオ「Interlude」とワーナーミュージックは、インディーズトリオ「AJR」がリリースしたアルバム「Living Room」に合わせて、6本のインタラクティブ動画を公開、ファンが動画やインタビュー、ゲームなどを画面内で選択できる、全く新しい音楽動画体験を提供しています。

http://ajrbrothers.com/interactive

Interludeは、カーリー・レイ・ジェプセンの「Run Away With Me」、シーロー・グリーンの「Robin Williams」、レッド・ツェッペリンのPhysical Graffitiリリース40周年記念の「Trampled Under Foot」のインタラクティブ動画も2015年に制作しており、2014年にはボブ・ディランの「Like A Rolling Stone」のインタラクティブ動画で、カンヌライオンズのゴールドライオンを受賞しています。

AdAgeが紹介している音楽マーケティングで特徴的なポイントは、どうすればネットで伝播するかだけでなく、どうすればファンに新しい音楽体験を楽しんでもらえるかまで考えられている点です。

これらのプロモーションに欠かせないのは、音楽やエンターテイメントの分野を得意とする、テクノロジー集団やスタジオ、クリエイターたちです。動画制作の観点から見ると、ドレイクの「Hotline Bling」PVを制作したDirector X率いる「Creative Soul」やUnited Realities、Interludeなど、ここで名前の出たスタジオは、YouTubeでこれまで公開されてきた動画とは全く違う、没入感とアッと云わせる驚きがある良質なコンテンツを、音楽とテクノロジーを合わせて作ります。

音楽プロモーションの取り組みも、ウェブベースからスマートフォンやSNS中心のモバイルベースに移行しているのも流れの一つになりつつあります。例えば動画では、YouTubeやFacebook、Snapchatが360度動画再生をサポートし始めるなど、プラットフォーム側も進化してきました。2016年はここにOculus RiftやGalaxy GearなどVRデバイスが何かしらの形で参入するはずですし、さらにはマイクロソフトのHololensやLeap Motionなども入ってくるかもしれません。このようなプラットフォームの上で、コンテンツ制作側も今年はこれまで以上に実験的なコンテンツを作り始めるはずです。

もちろんこれらの動画を日本で楽しむには言語の違いや文化の違いがあるので、このままのアプローチで成功を必ず実現できるわけではありません。

ただ世界のトレンドを見ると、コンテンツ作りと波及させる配信戦略作りが今まで以上に多様化し、より多くの人に届けることが難しくなっていくでしょう。アーティストたちもその複雑な流れを最適化するために、テクノロジーやソーシャルを掛け合わせて配信していることが見受けられます。配信方法の選択肢は確実に今後も増えつづけるでしょう。これから音楽でコンテンツを作られる方々も、2016年に向けてどんなテクノロジーが音楽ファンのために使えるのか、どうすれば効果的に配信できるのか、実験的なアプローチを検討してみてはいかがでしょうか?

■記事元http://jaykogami.com/2016/01/12536.html


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Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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