広告・取材掲載

アメリカで人気のラジオ局フォーマット、コンテンポラリーヒットやカントリーが上位

コラム 高橋裕二の洋楽天国

アメリカでレコードを売るのに最も適しているメディアは今でもラジオだ。アメリカのラジオ業界では、ラジオ局の番組構成や放送形態をフォーマットと呼ぶ。簡単に言うと、どんな事を専門に放送しているかだ。以下がアメリカの人達が好むラジオ局のフォーマット。TVの視聴率調査でお馴染みのニールセンの2015年調べ。6歳以上の聴取率。

1位) ニュース/トーク
2位) コンテンポラリー・ヒット・ラジオ
3位) カントリー・ミュージック
4位) アダルト・コンテンポラリー
5位) ホット・アダルト・コンテンポラリー
6位) クラシック・ヒッツ
7位) クラシック・ロック
8位) アーバン・アダルト・コンテンポラリー
9位) スポーツ
10位)アーバン・コンテンポラリー

1位と9位以外は全て音楽専門局。首都ワシントンDCはニュースとトークのWAMU-FMがトップでニュース専門局のWTOP-FMが2位だ。トークは普通おしゃべりだが、「電話相談室」という怖いトークもある。2位以下はレコード会社の宣伝部が攻める放送局。2位は今流行のヒット曲をかける。別名TOP40とも呼ぶ。ヒットしそうならどんなジャンルでもかける。3位はカントリー・ミュージック。大都市以外ではこのフォーマット局が聴取率でトップになる。勿論選曲が最も重要だが、リスナーの人種、男女構成比や年齢、所得等で聴かれるラジオ局が決まる。

4位は家庭の主婦がターゲット。大人向けの穏やかな曲が流れる。5位はラップやヘヴィメタはかからないが、今風のヒット曲、特にオルタナ系ロックの曲が多くかかる。マルーン5を売るにはこのフォーマットのラジオ局を攻める。6位は20〜40年前のヒット曲を流す。7位のクラシック・ロックはロックの古典、レッド・ツェッペリンやキング・クリムゾンだ。8位は大都市で大人向けのソウル・ミュージックをかける。9位はスポーツ専門局。10位は同じソウル・ミュージックでも様々な曲が多い。

このランキングを見ると、ハード・ロックやラップを流すラジオ局が入ってこない。レコード会社の宣伝部は聴取率の低いロック局やラップをかけるリズムと呼ぶラジオ局を攻める。そこで大ヒットすると2位のコンテンポラリー・ヒット局や5位のホット・アダルト・コンテンポラリー局を攻める。これを業界用語で、「クロスオーバー」と呼ぶ。日本では間違って使われるが、音楽のジャンルではない。他のフォーマット・ラジオ局に「超えて渡る」という意味だ。多くのフォーマット局にクロスオーバーすれば大ヒットになる。アデルは2位でも4位でも5位でも全てでかかる。レディー・ガガの新作はクロスオーバーどころか、ラジオでかからない。結果売れない。

アメリカのラジオ業界が考える市場規模のベスト10は以下だ。どのくらいナショナル・スポンサーから広告を集められるかがポイント。

1位) ニューヨーク
2位) ロサンゼルス
3位) シカゴ
4位) サンフランシスコ
5位) ダラス
6位) ヒューストン
7位) ワシントンDC
8位) アトランタ
9位) フィラデルフィア
10位)ボストン 

この上位2都市(ニューヨークとロサンゼルス)での11月の聴取率トップ5は以下だ。

ニューヨーク
1位) WLTW-FM(アダルト・コンテンポラリー)
2位) WCBS-FM(クラシック・ヒッツ)
3位) WBLS-FM(アーバン・アダルト・コンテンポラリー)
4位) WHTZ-FM(コンテンポラリー・ヒット・ラジオ)
5位) WAXQ-FM(クラシック・ロック)

ロサンゼルス
1位) KOST-FM(アダルト・コンテンポラリー)
2位) KRTH-FM(クラシック・ヒッツ)
3位) KTWV-FM(リズミック・アダルト・コンテンポラリー)
4位) KBIG-FM(ホット・アダルト・コンテンポラリー)
5位) KIIS-FM(コンテンポラリー・ヒット・ラジオ)

2都市で「クラシック・ヒッツ」と呼ばれるフォーマット局が2位に入っている。昔は「オールディーズ」と呼ばれていた。ニューヨークのWCBSはオールディーズをかけて常にベスト3入りを果たしていた。かける曲は50年代から60年代のヒット曲。しかし50年代に10代だった若者も、もう80歳に突入する。亡くなった人も多いだろう。ラジオを聴かなくなったかもしれない。それでWCBSは、リアル・タイムでヒット曲を聴いていたリスナーにターゲットを絞った。40年前のヒット曲を10歳で聴いていたらもうすぐ70歳。20年前のヒット曲を10歳で聴いていたら50歳だ。金は持っている。定額制音楽ストリーミング・サービスで会費を払ってオンデマンドで聴くよりも、自分が好きだった曲がラジオから思い出と共に流れてくる。

ではWCBS-FMが、車で通勤時の時間帯にどんな曲をかけているのか。アメリカの人達は基本、車でラジオを聴く。以下が今週月曜日のプレイリストだ。

朝6時台
ジェネシス「インヴィジブル・タッチ」
ブロンディ「ハート・オブ・グラス」
ロッド・スチュアート「サム・ガイズ」
ビージーズ「ステイン・アライヴ」
プリンス「レッツ・ゴー・クレイジー」
ボブ・シーガー「忘れじのロックンロール」
リック・スプリングフィールド「ジェシーズ・ガール」

朝7時台
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース「いつも夢みて」
マイケル・ジャクソン「ロック・ウィズ・ユー」
ジョージア・サテライツ「キープ・ユア・ハンズ」
ポール・マッカートニー「恋することのもどかしさ」
ソフト・セル「汚れなき愛」
イーグルス「テイク・イット・イージー」

24時間というのは無理でも、日本で1〜2時間の歌謡曲やグループサウンズのヒット曲が毎日流れてもいいだろう。スポンサーは付くはずだ。

記事提供元:洋楽天国


高橋裕二氏インタビュー

関連タグ

関連タグはありません