『ラ・ラ・ランド』サントラがアナログレコード売上トップに、最新作がチャート1位にならない特殊な市場
アメリカの音楽消費データを集計するシステム「ニールセン・ミュージック」(Nielsen Music)が明らかにした2017年1月から3月の3カ月、Q1で最も人気を集めたアナログレコードは、映画『ラ・ラ・ランド』のサウンドトラックでした。第89回アカデミー賞では『ムーンライト』に作品賞を譲った同作ですが、話題の波がアナログレコード市場に着実に広がっていった模様です。
Nielsen MusicのQ1音楽売上レポートでは、アメリカ国内で購入された『ラ・ラ・ランド』サウンドトラックLPは25,000枚。2位のボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『レジェンド』の16,000枚を9000枚以上も上回る人気ぶりがわかります。
We’re starting a bit of a vinyl collection & our eyes turned to hearts when we saw this BLUE #LaLaLand record ➡️ https://t.co/9bGUXNANhR pic.twitter.com/LBjnLF7E3G
— Universal Music CA (@umusic) January 30, 2017
米アマゾンのストアで『ラ・ラ・ランド』サウンドトラックLPの販売価格は32.50ドル。アナログ専門ストア「Amoeba Music」や、大手スーパーチェーン「ベスト・バイ」では24.98ドル、22.99ドルに価格が付いていますが、現在どこも品切れ状態。単純計算で最低価格22.99ドルの25,000枚で574,750ドルの売上。日本円で約6300万円という計算になり、映画の楽しみ方がスクリーンだけにとどまらないファンの巻き込み方を実現させています。
*1ドル=109円換算
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米国アナログレコード売上枚数トップ10 1-3月はこちら。
1. 『ラ・ラ・ランド』サウンドトラック:25,000枚(インタースコープ・レコード)
2. ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ 『レジェンド』 :16,000枚(アイランド・レコード)
3. エイミー・ワインハウス『Back to Black』:16,000枚(アイランド・レコード)
4. エド・シーラン『÷(ディバイド)』:15,000枚(アサイラム・レコード)
5. Run the Jewels『Run the Jewels 3』:14,000枚(Run the Jewels)
6. ザ・キラーズ『ホット・ファス』:14,000枚(アイランド・レコード)
7. ザ・ビートルズ『アビイ・ロード』:13,000枚(アップル・レコード)
8. ライアン・アダムス『プリズナー』:13,000枚(PAX AM)
9. トゥエンティ・ワン・パイロッツ『Blurryface』:13,000(Fueled by Ramen)
10. The XX『I See You』:13,000枚(Young Turks)
『ラ・ラ・ランド』の作曲家ジャスティン・ハーウィッツ(Justin Hurwitz)はアカデミー作曲賞を受賞し、収録曲の「City of Stars」はアカデミー歌曲賞を受賞、さらに「Audition(The Fools Who Dream)」も同時ノミネートされるほどで、その他の映画業界のアワードも数多く受賞するほど、同作は高い評価を受けています。
音楽チャートに目を向けると、『ラ・ラ・ランド』のサウンドトラックはアメリカでアルバム・チャート最高2位、イギリスではなんと1位を獲得するほどの勢い。日本でも3月20日付のオリコンのアルバムチャートでは3位に入っていることから、映画と音楽の世界をまたいで、業界と一般リスナーの双方から支持された作品であることが見えてきます。
『ラ・ラ・ランド』を製作したサミット・エンターテインメントの親会社、ライオンズゲート・スタジオはすでにサウンドトラックを用いたライブビジネスの展開を計画しています。まずアメリカ国内で、ハーウィッツが指揮するオーケストラ、コーラス、ジャズを織り交ぜたライブ・コンサート「ラ・ラ・ランド・イン・コンサート」を開催すると発表。すでにメモリアルデーの週末である5月26、27日の日程が決定し、その後は、アメリカ主要都市のツアーや、イギリス、カナダ、メキシコ、イタリア、トルコ、スイスなどを回る世界ツアーの展開が予定されています。
『ムーンライト』のサウンドトラックもアナログレコードでのリリースが先日発表されています。Invada Recordsが手がけるニコラス・ブリテル(Nicholas Britell)作曲のサウンドトラックは6月23日に発売されます。
Nielsen Musicのレポートに目を戻すと、2017年リリースの新作では、エド・シーラン『÷(ディバイド)』とThe XX『I See You』の二作にとどまり、その他の作品では、ザ・キラーズの『ホット・ファス』は2017年にアナログレコードで再発された結果が顕著に出たQ1となっています。これまでであれば、最新作のアナログリリースをどのフォーマットでも伸ばしたい思いが音楽業界にはあったはずですが、もはやアナログレコードでのヒットも、音楽業界にとっては大きなプラスの影響であることは見逃せません。映画のサウンドトラックの爆発的な人気が長期的な支持につながるかどうかを考えると、悩ましいかもしれませんが、音楽業界は今回の結果をどう受け止めているのでしょうか?
■記事元:http://jaykogami.com/2017/04/13943.html
記事提供:All Digital Music