アップル「Shazam」を買収へ。買収額は「破格の値段」、Apple Music強化の布石か
アップルは音楽情報検索アプリ「Shazam」の買収を正式に認めました。早ければ来週にも公式発表を行うと云われています。
買収金額は発表されていません。情報ソースによれば、アップルはShazam買収の交渉を5カ月に渡り進めており、Shazam買収にはSnapchatやSpotifyなど他社も交渉を進めていたとのことです。
Recodeなどメディアは、買収金額は約4億ドルだったと伝えています。Shazamの企業価値は10億ドルだったことを考えれば、今回アップルはかなりの安値で買収に成功できたことは同社にとってメリットの大きい買収劇だったと云えそうです。
Shazamの買収金額がここまで下がったのは、単に収益性が低く2016年は売上がわずか5400万ドルであったため、テレビ広告を強化する戦略を含めて経営面では苦戦していました。
しかし、Shazam買収は、Apple Musicをさらに音楽中心のサービスとして強化する技術的価値を与えてくれそうです。収益性に欠けてたとは言え、Shazamはこれまでも「音楽情報検索」において業界リーダーであり続け、レコード会社やアーティストたちなど音楽業界もShazamを使ったプロモーションを行うなど、業界との繋がりは強く保ち続けてきました。
特に、Shazamが抱える膨大なアクティブユーザー数と、Shazamが蓄積してきた音楽に関するビッグデータは注目に値します。Apple Musicの強化に注力していきたいアップルは、Siriと連携するスマートスピーカー「HomePod」や「AirPods」なども製造して、これまでのデスクトップ、スマートフォンに加えてオルタナティブな手法による音楽とのインタラクションを常に模索してきたため、今後の「AI」や「音声認識」といった音楽検索の領域にとっても大きな資産になるはずです。
その他にShazamは「Visual Shazam」という写真やポスターなどを「Shazam」できる機能や、ブランド向けのAR機能なども提供してきたことから、アップルのAR戦略に応用される可能性もあります。
記事提供:All Digital Music
Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
音楽ビジネスとデジタルテクノロジー専門メディア「All Digital Music」を立ち上げ編集長を務める。「世界のデジタル音楽」をテーマに、音楽とデジタル・エンターテイメントを取り巻くテクノロジー、ビジネストレンド、音楽スタートアップなどに特化した執筆・取材・リサーチ活動を行う。音楽ビジネスジャーナリストとして、「Sonar+D」(バルセロナ)や「MUTEK」(モントリオール)など、海外の音楽カンファレンスや業界イベントを現地で取材するなど、グローバルな視点から、クリエイティブとビジネスを横断した取材を国内外で数多く行っている。これまで「WIRED.jp」「オリコン」「Real Sound」「BLOGOS」「ワールドビジネスサテライト」など、オンラインメディアや経済メディアでクリエイターから経営者、起業家までの幅広いインタビューや、音楽ビジネスやテクノロジーに関する寄稿記事を手がける他、業界向けの講演や、企業コンサルティングを幅広く行う。
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