Google Homeと音楽フェス「コーチェラ・フェスティバル」が音声連携を実現。スマートスピーカーと「リアルイベント」の融合は進むのか
現地時間4月13日から始まったアメリカの大型音楽フェスティバル「コーチェラ・フェスティバル」に、グーグルのスマートスピーカー「Google Home」の連携が初めて導入されました。
Google HomeやGoogle Home mini、日本未発売の高音質なスマートスピーカーGoogle Home Max、スマートフォンに「Hey Google, talk to Coachella」と話しかけるだけで、Google Assistantがユーザーに対して出演する新人アーティストのバイオグラフィーや2018年出演アーティストのプレイリスト、バックステージ・インタビューを提供し、好きなライブに合わせてユーザーのスケジュールを制作するカレンダー機能を提供します。
これまでスマートスピーカーは、音声で音楽を再生したり、天気を調べたり、ニュースを呼び出したりすることで、ネット上にある情報を最適化してユーザーに提案するツールというのが第一印象のはずです。
音楽フェスのようなリアルイベントと連携して、イベントに関する情報やアーティストのコンテンツを提案するアプローチは、オフラインのユーザーをネットの世界と繋げるためのフォーマットの一つとして、今後のスマートスピーカー利用の可能性を広げた取り組みです。
YouTubeが開いた音楽フェスのライブ配信の扉
コーチェラ・フェスティバルのテクノロジー連携はYouTubeが先行してきました。
2010年から始まったYouTubeのコーチェラからのリアルタイム動画配信は、ヘッドライナーを含めて複数ステージの同時配信と、SNS連携を同時に実現する革新的なアプローチで、2010年代における世界各地の音楽フェスのライブ配信増加の先駆的な事例を作りました。
2016年からYouTubeとコーチェラ・フェスティバルは、VR動画のリアルタイム配信にも取り組み始めます。
2018年は通常の配信と並行したVR配信をThe WeekndやMigosなどへッドライナークラスのアーティストで行うなど、VRとライブ配信の可能性を広げようとしています。
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スマートスピーカーがイベント情報源となる時代
群雄割拠なスマートスピーカーの分野では、出荷台数はアマゾンとAlexaが他者を大きく引き離しています。
しかし、特定のユーザー層や市場へのアプローチでは、グーグルとコーチェラ・フェスティバルのGoogle Home連携は、「フェス好き」「ポップカルチャー好き」「イベント好き」というユーザーへのブランド訴求では可能性を感じます。
音楽との親和性で言えば、Google Homeの最上位版Google Home Maxは、音質重視の設計で、プロモーション映像にはエレクトロニックミュージックユニット「Major Lazer」の一人で、レーベルMad Decent主宰者として圧倒的な知名度とクリエイティビティを持つ Diploをプロモーション動画に起用しています。
コーチェラ・フェスティバルのような音楽フェスへのビジネス的価値が高まる中、フェスのリアルタイム動画配信が世界的に普及したことによって、自宅やスマホを介して会場へ行けなくても楽しむ人が飛躍的に増えた結果、グーグルとコーチェラ・フェスティバルの連携は、いかにしてフェスやイベントとファンとの接点を増やせるかの可能性をイベントマーケティングする側に示しています。
すでに映画会社のマーベル・スタジオが映画『スパイダーマン:ホームカミング』のプロモーションにAlexaで公開前にスキルを公開するなど、作品前の観客やファンのモチベーションを上げるための音声コンテンツをスマートスピーカーや音声AIで実現してきました。
フェスやイベント前にスマートスピーカーで最新情報やタイムテーブル、音楽、プレイリストをチェックすることは、まだまだ小さな行動です。しかし、新しい習慣の1つとして定着できれば、音楽フェスが会場に来れないファンともつながろうとするアプローチにもなり、Google Homeはそのブランドイメージをより音楽好きなユーザーへ訴求できるはずです。
「ライブ動画配信」に着手できない日本の音楽フェスプロモーターも、スマートスピーカーとリアルなイベントとの連携により、新人アーティストやプレイリスト、見所を紹介することなどは、検討してもよいはず。イベントとの親和性の高いラジオ局も同様に、リアルなイベントと連携した音声コンテンツを通じてフェスやイベントのファンにアピールができるようになれば、次のイベントやアーティスト、番組、サイトへと誘導する動線になることに期待が高まります。
記事提供:All Digital Music