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「音楽のマネタイズ」の現実を日本の音楽サービスはいかに考えているのか?

コラム All Digital Music

 

ミレニアル世代の日本人インディーズアーティストや海外のレーベル向けにアーティストサービスを提供する「lute」と、デジタル音楽配信の大手アグリゲーションサービス「TuneCore Japan」が、日本人アーティストやレーベルを対象にしたイベントを開催します。テーマは、日本人アーティストはいかに音楽ストリーミングやサブスクリプションサービスの中で音楽ビジネスを成功させ、マネタイズできるか、です。

ポスト・デジタル時代のミュージシャンのためのワークショップ 形式イベント「Workshop for Musicians #01」

イベントは、luteの事例紹介などを含めて、音楽ストリーミングを取り巻くアーティストのマネタイズやレーベル運営に関するトークセッションと、実践法を紹介するワークショップ形式です。内容としては、音楽サービスを普段から活用するインディーズアーティストやレーベル、マネジメントが今後さらにビジネスとして活用するための考え方やノウハウを学べるものになっています。SpotifyやApple Musicなど音楽ストリーミングが世界の主流になった現代において、音楽サービスが日本人アーティストに今後もたらす成功を、いち早く分析評価し、それらを今どう活用するべきか、そして、この先に向けてアーティストやレーベルは何を意識すべきかを、日本の音楽シーンの当事者が考えるイベントなのです。
 

lute、TuneCore Japanに賛同する形で、「All Digital Music」もこのイベントに参加させて頂いています。事業形態や活動は異なりますが、この3組が考える日本の音楽ビジネスの現状の課題や、音楽ストリーミング時代におけるアーティストやクリエイターのこれからに対する視点、さらに日本とグローバル両方から見た音楽ビジネスの視点と共通点が多く、こうした考え方や新しい取り組みを直接アーティストやレーベルに共有したいという考えが、このイベントの背景にはあります。

 

音楽ビジネスのマネタイズを進化させる

 

 

TuneCore、lute

グローバル規模の音楽市場では、あらゆる音楽サービスによってアーティストの作品発表とマネタイズの固定概念が覆され、最先端なビジネスモデルやマーケティング戦略、マネタイズ戦略の活用と新しい価値観の導入が日夜進んだ結果、こうした新たな潮流の恩恵を受けた音楽業界の成長やアーティストビジネスの価値創造へつながっています。これを象徴するような出来事は、2017年にメジャーレコード会社のワーナーミュージックがインディーズダンス・ミュージックレーベル「Spinnin’ Records」を1億ドル以上で買収したことにつながり、先進的なアプローチやビジネスモデルを実践させてきたレーベルやパブリッシャー、コミュニティ、アーティストたちを、音楽業界がビジネス観点で評価しているのです。

アーティストとメディアのあたらしい在り方。日本初となる「サブミッションメディア」を、TuneCore Japan × lute がローンチ。

luteは2018年2月に、TuneCore Japanと組み、日本初の音楽サブミッションメディア「lute music」の展開を始め、アーティストやレーベルから提供された楽曲のプロモーションとマネタイズを支援するサービスに取り組んでいます。YouTubeチャンネルやSpotifyなどへの配信から得た広告収益やロイヤリティをアーティストに還元することで、プロモーションとマネタイズが直結する一元的なアプローチを提供しつつ、ファンやリスナーにはlute musicのキュレーションによる最新コンテンツを常に提供する。このlute musicのように、日本の音楽シーンではこれまで存在しなかった、もしくはあまり前例の無い新しい音楽ビジネスのアプローチも生まれています。

luteやTuneCore Japanは、音楽ストリーミングサービスの中で強いキュレーションパワーを持つサブミッションメディアの世界的な先進例として「Majestic Casual」や「Chillhop Music」を挙げています。しかし、「Majestic Casual」は2011年にスタートした老舗の音楽チャンネルであって、数年かけてコミュニティを拡大させたりアプローチを変えたりしてきたことなど、すでにグローバル規模ではある意味定着してきたコミュニティであり、それ以上に、こうしたキュレーションチャンネルや、キュレーターたちの多くがYouTubeやSoundCloud、Spotify上で2010年代前半から活動していることは、日本の音楽業界や音楽メディア関係者などでもあまり知られていない。YouTubeチャンネルを束ねる「マルチチャンネルネットワーク」(MCN)や、「SoundCloud Rapper」の台頭、Spotifyプレイリストの波及効果が2010年代前半から起きたことも偶然ではないはずです。
 

さらに、これらの中からYouTubeチャンネルやSoundCloudでの「エクスクルーシブ」いわゆる「先行配信」「独占配信」といった配信手法が大きく注目を浴びたこともその後に大きな影響を与え、SpotifyやApple Music、Tidalといった定額制音楽ストリーミングも「先行配信」に着手していった経緯へと繋がり、チャンス・ザ・ラッパーの『Coloring Book』やフランク・オーシャンの『Endless』『Blonde』などがこうした手法を象徴する作品として世に出てきました。こうしたアプローチで配信されたアーティストやアルバムをチャートインさせヒットさせる仕組みへと市場の構造自体を変えた音楽業界の動きも見逃せません。

今後、luteやTuneCore Japanのようなサービスが、アーティストやレーベルが利用する数多くのツールの一つとなるよう、日本の音楽シーンも変化していくでしょう。しかし、こうしたサービスは時代に併せて常に進化し続けることは確実で、メジャーかインディーズや、メインストリームかアンダーグラウンドカルチャーかの議論では正解を求めることが難しくなっているのが現状ではないでしょうか。

日本国内での音楽シーンでは、デジタル音楽サービス=インディーズ、アンダーグラウンドのイメージが未だに強い感があり、これらのサービスそのものの実態についてあまり知られていないことが多い。しかし、今後メジャーレーベルやアーティストたちがこれらのサービスを積極的に活用し出す時が来たとすれば、日本のプロモーション運営やマネタイズ手法へのアプローチや考え方も確実に変化していくはずです。そうなった時、日本のインディーズアーティストやレーベルは、メジャーと同じサービスやプラットフォーム内で競い成功することはできるだろうか。新しい市場、例えばアジアや世界に展開する準備は出来ているだろうか。音楽市場を攻略できるかどうかの可能性を現実問題として分析することは、いま多いに必要とされているでしょう。

イベント名:「Workshop for Musicians〜ポスト・デジタル時代におけるミュージシャンのためのワークショップ〜」
開催日時:6月20日(水)19:30〜21:00(19:00開場)
登壇者:五十嵐 弘彦(lute代表取締役)、野田威一郎(チューンコアジャパン株式会社 代表取締役社長)、ジェイ・コウガミ(All Digital Music編集長)他
会場:TOT STUDIO(THINK OF THINGS 2F/東京都渋谷区千駄ヶ谷3-62-1
参加費:1,000円
定員:50人 ※好評につき、定員数を追加いたしました
主催:lute
協力:TuneCore Japan, All Digital Music, Think of Things
 


 

jaykogami
記事提供All Digital Music

Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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